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世論が移ろいやすくなった脆弱な現代と怖いほどリンクする恐るべき作品であることが初演から34年の今ますます鮮明に…★劇評★【舞台=イヌの仇討(2022)】


 吉良上野介の視点から赤穂浪士らの吉良邸討ち入りを描く―。よくある「外伝」や「スピンオフ」ではなく、物語の本家本元の本質の部分を全く逆から見通した1988年初演の井上ひさしらしい快作「イヌの仇討」は2017年にこまつ座としては初めての再演として大谷亮介の主演で復活しているが、2020年に続いて今年2022年11月には東京で再演。そのままの流れで、九州各地を巡演中だ。吉良がこの舞台で描かれているような頭脳明晰で上品な平和主義者だったのか、それとも「忠臣蔵」など赤穂浪士の忠義の美談に登場する極悪ヒール(敵役)のような人物だったかは江戸時代・元禄当時の人々のみ知るところだが、この一連の赤穂事件が、お上(江戸幕府)と庶民の世論(侍以外の人々)の間でもみくちゃになった吉良家と赤穂藩の人々の苦闘の歴史であったことだけは痛烈に伝わってくる。ポピュリスト(大衆迎合主義)の政治家が世界中で誕生していることに加え、ネット社会の登場によって、さらに世論が移ろいやすくなっている脆弱な現代と怖いほどリンクする恐るべき作品であったことが初演から34年経った今、ますます鮮明になっている。(写真は舞台「イヌの仇討」とは関係ありません。単なるイメージです。ちなみに泉岳寺です)
 
 舞台「イヌの仇討」は、11月15日~12月23日に九州演劇鑑賞団体連絡会議[会員制公演](主催:公益社団法人 日本劇団協議会)の公演として九州各地で上演されている。これに先立って11月3~12日に東京・新宿の紀伊國屋ホールで上演された東京公演はすべて終了している。
 
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★舞台「イヌの仇討」公演情報=東京公演はすべて終了しています

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