悲劇のスパイラルと生の歓びを歌い上げる奇跡のミュージカル…★劇評★【ミュージカル=パレード(2021)】
社会派のミュージカルが珍しくない現代。しかしミュージカル「パレード」ほどの衝撃を与える作品は他にはない。それは「冤罪」という深刻なテーマを扱っているからという理由だけではない。人々の不信はさらなる不信を生み、どんどんと増幅することで、冤罪を疑う心さえ覆いつくしてしまう。その悲劇のスパイラルを人間のドラマとして「パレード」は鋭く刻み、生と死のざまでもがき、さまよう人間の尊厳の貴さをあらん限りの切実さで歌い上げる。一方で生きることの歓びと愛することの深遠さ、誇りを失わないことの大切さを観客の心に染みわたらせていくような壮大なシンフォニーがこの作品の隅々に鳴り響いているからこそ、奇跡のミュージカルと言われるゆえんだろう。終戦から50年も経っているのに南北戦争の後遺症が癒えない100年前の米国という物語の舞台のある種の特殊性はあるにしても、群集心理や偏見といった「流されやすい」社会への警鐘と、施政者や権力者に課せられた「決断」という義務の重さなど、21世紀の半ばに向かおうとする現代社会への激烈なメッセージが込められた本作は、今後ますますその重要度を増していくように思われる。2017年の日本初演の熱が冷めやらない2021年の初頭にオールスターとも言えるほとんどのキャストが戻ってきた再演が実現できたことも、この作品の大きさを初演に関わった人々が忘れていなかった何よりもの証である。(写真はミュージカル「パレード」とは関係ありません。イメージです)
ミュージカル「パレード」は1月17~31日に東京・池袋駅西口の東京芸術劇場プレイハウスで、2月4~8日に大阪市の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、2月13~14日に名古屋市の愛知芸術劇場大ホールで、2月20~21日に富山市のオーバードホールで上演される。
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★「SEVEN HEARTS」のミュージカル「パレード」劇評ページ
★ブログは序文のみ無料で読めます。劇評の続きを含む劇評の全体像はこのサイト「note」で有料公開しています。作品の魅力や前提となる設定の説明。石丸幹二さん、堀内敬子さん、石川禅さんら俳優陣の演技に対する批評、森新太郎さんの演出や舞台表現に対する評価などが満載されています。
なお、ミュージカル「パレード」は新型コロナウイルスへの対応などを理由に初日を遅らせて1月17日から開幕しましたが、武田真治さんはインフルエンザ感染のため23日からの出演となりました。観劇取材を行ったのはまだ武田さんが出演していなかった公演ですので、演技の評価は武田さんではなく、代役に立った田川景一さんに対してのものになります。武田さんのファンの方には大変申し訳ないのですが、人気公演ですので取材機会も限られます。何とぞご了承ください。
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★ミュージカル「パレード」公演情報
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