見出し画像

フィリピンの「ファイナンシャルインクルージョン」をATMから実現する【Hello, New World】

セブン銀行グループでは、日本以外の国でもATMサービスを提供していることをご存じでしょうか?
国内で培ったATMサービスのノウハウを活かしつつ、各国に適したアプローチでビジネスを展開していくことで、地域の方々に安心して使っていただける金融サービスをお届けしています。

今回は、フィリピン国内のセブン-イレブンの店舗を中心にATMサービスを展開する、Pito AxM Platform, Inc.(以下、PAPI)の取締役社長である坂口正憲さんと、フィリピンでATMサービスを展開する狙いや、PAPIのチームについてお話ししました。

坂口 正憲 Masanori Sakaguchi
2012年にセブン銀行へ入社。現バンキング統括部や、ATMプラットフォーム事業の提携担当を経て、アメリカの子会社である「FCTI, Inc.」に従事。
2022年からフィリピンに駐在し、PAPIの取締役社長として勤務。


「ファイナンシャルインクルージョン」な世界をATMサービスから実現する


―まずは、PAPIのサービスについて教えてください。

坂口:PAPIは2019年に設立したセブン銀行の子会社です。2021年からフィリピン国内のセブン-イレブンの店舗へATMの設置を進めており、2021年末時点で1,000台を超えるATMの設置を完了し、店舗へ訪れる多くのお客さまにご利用いただいています。

PAPIのATM

―フィリピンにおけるATMサービスの需要は、どのくらいあるものなのでしょうか?

坂口:まず、フィリピンの決済事情でいうと、いまだに現金が圧倒的に強い状況にあります。理由としては決済端末の通信が不安定で、支払いの完了までに時間を要するので、現金の方が確実で速いということが大きいです。実際、私も日本ではクレジットカードや電子マネーで支払うことがほとんどでしたが、フィリピンに駐在して以降は、スーパーマーケットなどでも現金で支払うことが増えました…。
それから、成人の半分くらいが銀行口座を持っていない、いわゆる「unbanked層」にあたるため、現金で給料をもらっているために、そのまま現金で支払うことが多いという事情もあると思います。銀行口座を持っていないとクレジットカードを所有するのも難しいということになります。
近年は、「GCash」というスマホで利用できるプリペイドのe-walletが普及し始めていて、知り合い同士でお金を送り合うようなときはよく使われていますが、「GCash」では代金の支払いができないお店もまだまだ多いという状態です。

―現金で支払う頻度が高いということは、ATMの需要も高そうですね。

坂口:そうですね。ATMの設置台数を見ても、フィリピン国内全台合わせても、25,000台程度しかありません。日本とそう変わらない人口が暮らしていることを考えると、地域によってはATMサービスの需要が満たされていない状況だと思います。
恐らく、ATMの台数が少ないので、現金を下ろすのに時間がかかる⇒現金を銀行に預けるメリットが乏しい⇒銀行口座を持たず現金支払いをする人が多い、というサイクルなのではないかと推察しています。
東南アジアでは「ファイナンシャルインクルージョン(※)」という言葉をよく耳にしますが、まさにATMのサービスがそういった社会全体に対してのインパクトを持った事業になると確信しています。

※ファイナンシャルインクルージョン:金融包括。貧困や難民などに関わらず、誰もが取り残されることなく金融サービスへのアクセスでき、金融サービスの恩恵を受けられるようにすることを意味する。

https://ideasforgood.jp/glossary/financial-inclusion/


―日本ではあまり意識することがないかもしれませんが、金融サービスへのアクセスが閉ざされている方も多い、ということですね。

坂口:はい。先日もフィリピンの中央銀行の方とディスカッションする機会をいただけたのですが、日本では想像もしない課題やニーズに気付かされます。フィリピンならではの課題とソリューションを、中央銀行の方と一緒に話せるということ自体がとても意義深いと感じますし、フィリピンで働けて良かったなと思える瞬間でした。

―セブン銀行がATMのサービスを日本で長年提供してきたことも、そういった機会を生む要素になっているのでしょうか?

坂口:はい。セブン銀行が持つ日本での実績は、確実にフィリピンでの評価に影響しています。特に99%を超えるATMの稼働率を長年保持していることは、現地での信頼に繋がっていると思います。


新たなビジネスモデルで、使う人がうれしいサービスを


―実際にPAPIのATMを利用した方からの声や感想は届いていますか?

坂口:当社宛ではありませんが、提携している銀行宛に「家の近くにATMができてうれしい」「24時間使えて便利」という声が届いているとお聞きしています。
当社のATMが設置されているセブン-イレブンの店舗と、各銀行の支店はロケーションが異なることが多いので、利用者の利便性を相互に高める補完関係にあるんですね。だからこそフィリピンでも最大手といわれるBDOやLand Bankといった銀行と提携できたと思っています。

―お話を聞いていると、フィリピンにおいてはATMサービスについて、伸びしろが大いにあると感じるのですが、既存のプレイヤーがあまりいなかったのはどうしてなんでしょうか?

坂口:恐らく当社のようなビジネスモデルがなかった、あるいは、実現してこなかったということかと考えています。
従前のATMは、個人のお客さまが手数料を支払ってATMネットワークを利用することで、現金をATMで出金するという形式でした。
当社のように、ATM事業者が銀行と直接提携をし、個人のお客さまがATMを無料で使えるというビジネスモデルはこれまではありませんでした。提携銀行口座を持つ個人のお客さまからすると、「セブン-イレブンのATMが無料で使えるなら便利だし、他のATMへ行く必要がない」ということになるので、一気に利用件数も伸びています。 
また、当社のATMは入出金の両方が1台で可能なATMをフィリピンで初めて導入しています。セブン-イレブンの店舗に売上金を入金していただくことで、ATM内で現金切れを起こす頻度も減るので、運用コストも低くなる算段です。これはセブン銀行のATMでも以前より提供しているサービスですが、こちらの店舗の方にも大変好評をいただいています。

伸びていくフィリピン市場で、新たな一歩を開拓する


―PAPIのチームや、カルチャーについて教えてください。

坂口:現在52名の社員がいますが、日本から出向しているのは私を含めて2名のみです。あとはATM設置や金融系のバックグラウンドがある方を現地で採用しています。
フィリピンのスタッフはすごく明るいんですよね。陽気な国民性もあるのでしょうが、よく仕事中も歌が聞こえてきます(笑)。
日本人と比べると、やや時間や締切りをルーズに捉える感覚はあるかもしれませんが、きちんと理解してもらえば、プロフェッショナルな仕事をしてくれるので、業務を依頼するときに優先順位やその理由を伝えることを心がけています
あとは、「これをやって」とただ頼むのではなくて、現状の課題を共有して、解決策をスタッフ自ら考えて実践してもらうことを意識しています。

PAPIのオフィスの様子


―坂口さんはアメリカの子会社に駐在していた経験もお持ちですが、そういった経験も活かしてコミュニケーションしていますか?

坂口:そうですね。時間の捉え方や、家族の時間を大切にする文化は比較的アメリカもフィリピンも似ていると思いますし、そこは理解しながらコミュニケーションをとっていくことが大事ですね。
フィリピンは交通事情も日本より遅延することが多いので、リモート勤務も活用しながら、それぞれのスタッフが、スマートに仕事しやすい環境で働けることを優先してもらうようにしています。
スタッフの志気はすごく高くて、多くの人に影響を与えられる新しい事業として、プライドを持って取り組んでくれていると感じています。

―それは嬉しいですね。

坂口:はい。もしこれから会社を卒業していくメンバーがいたとしても、「この事業に携われてよかった」とか「日本の企業で働けてよかった」と少しでも思ってもらえるような組織でありたいです。
私自身も、フィリピンの前に在籍していたアメリカの子会社の時代を含め、できたてほやほやの組織のなかで、企画・運用・人事・財務・監査などあらゆるセクションを横断的に経験することができたことで、自分が成長した実感が大いにあり、そんな経験を積めたことを会社に感謝しています。

―そんなPAPIの今後について教えてください。

坂口:まず当面はATMを安定的に運用していくことや、台数を増やしていくことが最優先ですが、先ほどもお話ししたように、フィリピンは金融に関してはこれから伸びていく市場です。ATM事業の拡大と同時に次の事業を考えていくフェーズにも来ています。
自社だけでローンチする選択肢以外にも、現地のスタートアップや提携銀行と共創しながら新しいサービスを立ち上げていくこともあり得ますので、非常に面白い動きになると思います

今の段階から徐々に動き始めることで、フィリピンというポテンシャルの大きな世界でポジションを確立できる可能性も高まると思うので、期待していただけると嬉しいです。

編集部より:最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
フィリピンのATM事業を展開するPAPIを紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか😊お話を聞いていて「そうなんだ!」と思わされることばかりで、坂口さんのワクワク感が伝わってくるインタビュー時間でした!

▼セブン銀行は一緒に働いてくださる方を募集しています!

【新卒採用】

【中途採用】





最後までご覧いただきありがとうございました! セブン銀行公式X(Twitter)でも日々情報を発信しています。 ぜひフォローしてください!