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「ゴミ人間」として生きる

今年最後のBandcamp Fridayが17時で終わりました。

https://sevenashroom.bandcamp.com/track/lamento-binaural

新曲「Lamento」をご購入くださったのはお一方、久保二朗さんでした。evalaさんや渋谷慶一郎さん、細井美裕さん、蓮沼執太さん、ROTH BART BARONといった方々の立体音響作品やインスタレーションに携わっている方ですね。私も愛用しているバイノーラル変換技術「HPL」の開発者でもあります。当然ながら、田舎暮らしの無名の作曲家が面識を持てるような相手ではありません。

そもそもバイノーラルに興味を持ったのは、久保さんの「思い出のバイノーラル化」という言葉に胸を打たれたから。HPLなら、地方や離島、病床でも先鋭的な音楽を体験できるのではないか。そのように考えるきっかけとなった張本人が、こうしてご購入くださり、Xでご紹介までしてくださった。

勘違いしてはならないのは、「いい音楽」とは一言も仰っていないということ。それでも、この上ない励みとなりました。バイノーラルに取り組んで初めて、「この曲はヘッドフォンやイヤフォンで、高音質のものをお聴きください」と積極的にお願いできる音楽を作れたんですから。大きな空振りとならずに済みました。

目黒区の小劇場「こまばアゴラ劇場」が2024年5月末で閉館するそうです。今朝のXでも、文化芸術全般が抱える問題として、「舞台に上がる人が、別の機会では客席に回る。多くがこの循環でのみ成り立っており、純粋な観客は高齢化し、減り続けている」という話題がありました。そして、この輪から外れた作品や活動は、認識すらしてもらえない。村民になることと、異邦人であり続けることのバランスをどう取るか。

私は今、この輪の外に居ます。自分から抜けたとはいえ、それはもう苦しい。自分が歩もうとしている道の、その先を行く者が世界には確かに居るという事実だけが、生きる拠り所です。

私を嫌う人や無視する人のために、残りの人生を浪費する気は1ミリもありません。ただ、これまでご一緒してきた方々の99%以上に無視され、あるいはご購入にまで至らない現状は分析しておきたい。現在のレートで、私の音楽に186円の価値もない理由についてです。

作曲や音源制作が下手だとか、単に嫌いだとか、こんなものは音楽に聞こえないとか、漠然と済ませるのではありません。改善すべきこと、より削ぎ落して尖らせるべきこと、個人の枠を超えた大きな問題、さまざまです。ここを見誤ると、せっかく「頑張ってね」と応援してくださる方々の語尾を、すべて「私は買わんけど」に替えてしまいそうなので。

オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」で先月から勉強を始めた理由の一つが、ここにあります。分析の解像度を上げて、やるべきことをやって、新しい夢を叶える。そのためには、エンタメの最前線で最も面白い活動を仕掛けていて、文化や子どもたちの未来だったり平和だったりに真正面から取り組んでいて、ちゃんと実績を残し続けている人の最新の考えにいち早く触れておきたい。

趣味じゃないとか、相手は芸能人だとか、銭ゲバだとか嫌っている場合じゃない。何より、大きな夢を語る人なんて、もう10年以上会えていないじゃないか。おこがましい話ですが、西野さんの生き様を知って、私も「ゴミ人間」として生き続けることに自信を持てました。今年10月のことです。それまで、ほんと辛かった。

(ゴミ人間とは、大人になる過程で普通は折り合いをつけて捨ててしまうモノ、つまり「夢」をいまだに持ち続け、丁寧に磨き、輝かせようとする者のこと)

まあ、エンタメ系のオンラインサロンに入って最初に作った曲が、ヘテロフォニーの概念化がうんぬんかんぬんと説明するような「Lamento」なので、「いったい何を学んだんだ!?」というツッコミには「ごもっともです」と答えるより他ありません。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。Xに連投した「今年亡くなった偉大な音楽家たちの追悼作品として『Lamento』を作ったのは、戦争などの現実に抗う芸術が一気に失われたという事実と向き合うため」といった話については、また改めてまとめたいと思います。

新曲「Lamento」は、左下の「▶」から再生できます。

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