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スポーツ指導の右や左について

右往左往

2020年11月にスタートした(と書いてもうすぐ1年たつことに気がついた)、フットボールファミリー・ユナイテッド(以下ファミユニ)の活動を通じて、これまで様々な立場でご活躍されている方にお話を聞く機会に恵まれ、指導者、競技者、ジャーナリスト、それぞれの見方や考え方を知ることで、保護者の視点で見ていた景色が少しずつ変わってきました。

僕がファミユニを立ち上げた動機は、ヘディングのリスクに限らず、オーバーユースや熱中症など深刻な事故や怪我は、指導者と保護者の知識によってある程度防げること、選手の人権を軽視した指導は異常(指導ではない)だということを知って欲しい、それに尽きます。

初めて小学生のサッカー大会の現場で、大人の怒声罵声が響き渡るグラウンドを目にしたとき、親として、本当にこの環境は大丈夫なのか?とショックを受けました。

日本のジュニアスポーツには、練習時間の長さをはじめとし、オーバーユースなど成長期の子どもに対する長期的な視点が欠けているのではないか、根性と礼儀ばかりを重んじる旧態依然とした考え方が依然として根強いのではないか、と。

先日、JFAから出されたヘディングに関するガイドラインは、日本でもようやく子どもの未来を守る姿勢を示したという意味で、記念すべき第一歩だと思います。

しかし、そのガイドラインが出されたとき、その理由を説明するJFA技術委員長のメッセージの最後を結ぶ言葉に強い違和感を感じました。

「危ない」といってなんでもかんでも子どもから取り上げたら、結局、その子は自分で何もできない子になってしまい、困るのはその子自身ということになる。」

本当にそうだろうか?あなたのような影響力の強い立場にいる方が、こんな大雑把な言葉でこの話をまとめていいのですか?

科学的、医学的にに分析可能なリスクと、あまりにもざっくりとした指導論?育成論?は一緒に論じるべきじゃないと僕は思う。

僕自身、真剣にスポーツや勝負に打ち込んできた。なぜ負けたのか、なぜ勝ったのか、次に同じミスをしないために何をすれば良いのか、自分に足りないものは何なのか、を延々と考える日々があった。

スポーツを始めれば必ず目標ができる。勝負とそのステージは頂点まで続いている。そこに到達したいと願い、人に勝ちたいのであれば、コーチや仲間のサポートを得ながら、自分ひとりでは到達できない負荷のかけ方も必要になる。

競技の科学的な分析も重要だ。そして、時代によって様々な技法・練習スタイルも現れては消えていく。だから学び続ける姿勢も大切だ。

ただし。

身体の強度や技術向上を求めるとき、どんなに本人が厳しいトレーニングを望んだとしても、肉体的限界の見極めや故障の把握、疲労回復や怪我からの復帰プログラムが重要なことは明白だ。そう思わない指導者は、競技者ではなく自分のことをセンターに置いていると言えるだろう。

特に、身長が急激に伸びる成長期のピークにある子どもの場合、将来を潰さないようにコーチや保護者がオーバーユースに十分に注意を払う必要がある。

それとは別に、心のストレス強度も個人差が非常に大きい。強い言葉をスルーできる子、強い言葉で動けなくなる子、さまざまだ。

でも、それらは専門家でなくとも、大人が少し勉強すれば身につけられる知識だ。

そういったことを省みず、虐待まがいの指導や、体育会系と言われる上下関係による、逃げ場のないハラスメントで起きる事件事故自殺などのニュース記事を目にする度にハラワタが煮えくり返る思いをしている。

そこには、前述のような論理の飛躍が必ず出てくる。

子どもの自主性に任せるとか、自由にやらせると聞けば、そんなんじゃ競争力が失われるという声が出るし、圧迫や矯正的な厳しい指導は時として必要だと言えば、時代遅れだ虐待だと批判の声が出る(当然)。

教育現場でも、受験戦争や管理教育と言われた時代からゆとり教育へ、ゆとりがダメだと言われれば授業時間を増やす方向に戻ったり、社会での即戦力を重視すべきと言い始めたり、時代によって価値観もスタイルも文字通り右往左往している。でも、それは試行錯誤の結果だから仕方ない。

コミュニケーション

日本場合、子どものスポーツがほぼボランティアや部活で運営されていることにより、経済的格差が出にくいという良い面もありつつ(昔に比べたら格差は大きいようだが)、同時に様々な問題が起きていて、それは世界から見てもかなり異質であることが、勉強を続けるうちにわかってきた。

先日、チームのママさんと話しているとき、こんな言葉を聞きました。

「コーチはボランティアだからしょうがない、自分の時間を使ってやってくださっているありがたいお方のような感じで、なんでも許されてしまう。保護者は何も言えない。コーチは何があっても責任逃れできてしまう。そこが怖い。でも結局は保護者含め、みんなでこの悪循環を作り上げてしまった。」

他のチームのママさんはこう言いました。

「以前、選手の保護者である医師が、熱中症のリスクがある中で練習を強いられることに疑問を感じチームに改善を訴えたが聞き入れられず、チームとの関係もこじれ移籍に至った」
「チームに何か物申すと空気を乱す保護者とみなされて敬遠されるのは明白なので、ヘディングについても心配しているけれどなかなか言い出せない」

でも、大人はそこで黙ってはいけない。空気を読んだり、同調すべきでない。僕らが黙ることで、どこかで必ず犠牲になる子どもが生まれるから。

大人の皆さんにはぜひ勇気を持って欲しい。スポーツはプレイヤーのものだ。指導者のものではない。

ただ、子どものスポーツだからこそ、まわりの保護者や指導者との軋轢に尻込みしてしまうことがあるのは痛いほど理解できる。僕もそのひとりだった。

そんなときは、自分がおかしいとは思わずに、ここに集めたような組織や個人に相談してみて欲しい。必ず力になってくれる人が見つかると思う。

安全対策

本来、コンタクトスポーツや、落下、衝突事故のリスクが高いスポーツに参加するときは、万全の安全対策と、スポーツ科学、医学のサポートを得て、注意深く関わらなければならない。

ちなみに、スキーのヘルメット装着率も、欧州に比べて日本はかなり低い。

世界を見回すと柔道でも死亡事故が起きているのは日本だけ。それは指導者への安全教育が正しく行われていないからです。それだけとってみても改善の余地だらけなのが日本の現状です。

でも、それが浸透していないのはなぜ?

それはやっぱり、指導者や保護者が総合的にスポーツを学べる機会が少ないからなのではないか?スポーツが何か間違った目的に使われてるのではないか?大人が勝負に熱くなりすぎてるのではないか?

そんな自分への問いや興味に対して、学ぶ意味もあり、いまもファミユニの運営を続けています。

そして、子どものスポーツ環境から、暴言や暴力、ハラスメントをなくすことは我々大人の責務だと思います。

アンケート暴言暴力

(ファミユニアンケートより)




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