信託SO(ストックオプション)問題に思うこと。日本とアメリカのSO比較

信託ストックオプションの税金面で大きなニュースというか
いや事件と言ってもいい出来事が今週起きました。
信託SO採用済みのスタートアップCEOや
特にSO行使済の皆さんにとっては寝耳に水の出来事で
心中察すると大変心苦しいですが、今回の事件によって
日本のスタートアップや関係者の皆さんにSOへの
関心が高まることで、より一層改善されることを心より祈っています。

日本のSOの問題点?

僕が経営していたChatworkでは2015年に初めての
VCからの資金調達のタイミングでストック
オプションを付与することになりました。

その時にいろんな関係者や専門家から言われて、
え???おかしくない???と思ったことを
今後の日本のSO環境改善のために書いておきます。
※8年前の話なので今は変わっているかもしれませんし、
専門家ではないので誤っている部分があったら指摘いただけますと幸いです。

2015年当時はシリコンバレーにいたので
Googleが当時の清掃員の女性にもSOを付与して
上場後に億万長者になった話を聞いていたのが
素敵だなーと思ったのと、他社も一般社員が
SOをもらえるのが当たり前の環境の中で戦っていたので
当然全社員にSOを付与しようとしたら
外部の関係者、専門家から猛反対。

SOは幹部採用に使うもの?

「日本ではSOへの認識が低いから全員に配ると
逆に不満になるから辞めた方がいい」
「SOは幹部の採用に使うものですよ」

相談した人ほぼ全員から言われたように記憶してますが
どうしても付与したいと思い、アルバイト含め
全員付与で押し切りました。そもそも上場を
目指していない会社の頃に入社した社員がほとんどで
急遽方針転換して上場目指してSO付与となったので
何度も何度もSO勉強会を実施したのが懐かしい。

SOは10%まで(最近は15%の会社も)?

VCから資金調達する時に当時はSO10%までですと
これはもう決まっています、変えられませんという
日本のルール的な感じでした。アメリカでは
20〜25%なのになんでだろう?でも資金調達の
ためには仕方ないかと受け入れました。

その後調べてみると、日本のSOは10%付与したら
10%分が全株主の持ち分が希薄化するところが
アメリカは20%でも25%でも付与した分は
創業株主は希薄するものの、VCは希薄化しない。

つまり優秀な幹部を採用したい経営陣は
自分の株を減らしてでも採用したいというニーズと
VCは持ち分を希薄化したくないという利害関係が
対立しないような構造になっています。

日本は対立構造になっているため10%までですよと
なっているというのは納得ですが、このあたりも
改善されるといいなと思います。

貢献した社員は辞めた時点でSO取り上げ?

創業期や成長期にどれだけ貢献しても、
上場前に辞めたら持っていたSO全没収。
アメリカでは2年目から付与されたSOが25%ずつ
4年かけて確定され、退職してもSOを持ち続けることができるのが一般的です。

日本では未上場株のセカンダリー市場がようやく
出来始めているところですが、アメリカではSOの
セカンダリー市場が発展しているのはそのためですね。

SOは付与時の価格で確定される?

日本本社とアメリカ子会社のSOの設計を試みましたが
SO事情が違い過ぎて、結局日本のみ付与、アメリカは
給与を高くすることでしか対応できなかったので
実際の付与した経験からではないですが
アメリカで付与する場合は、付与時に割り当てるべく
プールしておいたSO枠を後に入社した社員にも枠が
残ってればその当時の株価で付与できるはずです。

この部分が日本は付与時の価格が確定されるため
今回のように信託SOというスキームでグレーゾーンを
ギリギリで攻めながら乗り越えるというガラパゴス
進化につながった原因の一つだと思います。
※上場時に本当に貢献してくれた社員に多く
割り当てることができるという経営者の心理もあります。

結論:ベストプラクティスをまずはパクろう

投資先が外国人の幹部採用する際には
SO付与は日本と海外では前提が全然違うから
ちゃんと説明しておかないと後々問題になるよと
アドバイスしています。

これを機に日本のグローバル化において世界標準な
SO環境を整備していくいいタイミングだと思います。

もちろんすべてがアメリカの真似をすればいいという
ビバアメリカな考え方は好きではないですが、
税制はアメリカをかなり参考にしているようなので、
SOにおいてもスタートアップ先進国のベスト
プラクティスをパクった上で、日本独自の環境に
照らし合わせて、いわゆる守破離で発展させて
いくのがいいのではないでしょうか。

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