【読書感想文】心のレンズの屈折率
モノとの出会いは、ヒトとの出会いに勝るとも劣らないと思う。
じっとたたずむその絵本からは、別段何か訴えや眩い言葉があるわけではない。ただただ、選ばれた平易な言葉を読み手が創造的に捉える。
それなのに、そんなシンプルなことなのに、ヒトの心を捉えて離さないのはどうしてだろう。
年齢や性別や思想や想いをこえて示された問い。
いや、問いだと思ったのは僕だけかもしれない。
自由だけれど確かにある言葉の彩度を、僕らはきっと感じるだろう。
『大切なことは、なに?』
空は、風は、リンゴは、スプーンは‥‥
私たちは世の中のモノやコト、あるいはヒトや、ヒトタチまで、絶えず意味を与え続ける。
そして、時折自分と切り離された宙に浮いた意味や価値を眺めながらため息をつく。
ホントは不安なのに、そんなものに多大な意味付けをした自分に疲れることもある。
虚栄にも似た社会に意味付けされてしまった何かにすがるように、つじつまをあわせるように、今日もまた一日が流れていく。
でも、そらにとって たいせつなのは
いつも そこに あるということ
『たいせつなこと』は何だろう?
周りから与えられた意味や、期待に僕らは振り回されてないだろうか。相対的に与えられる意味にとらわれすぎていないだろうか。
心の虫メガネを取り出して、いろんなモノやヒトを見てみよう。
屈折率は違っていいから。
標準、平均、中央値、正論と呼ばれる何か
それはそれでたいせつな指標だけれど、ひとつひとつのモノやヒトにもきっと大切なストーリーがあるから。
みんな大人になって、家族をもったり、自分の社会的な役割を担ったり、ヒトを育てたり、ヒトに育てられたして、嬉しいことや悲しいことをいろいろ経験してきた。
もちろん、それに重いも軽いもない。
全部大切な、自分を造る要素だ。
でも、あなたにとって たいせつなのは
あなたが あなたで あること
日曜日の午後は、陽の光がやさしいと思う。
おしまい
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『たいせつなこと』 【2001年 フレーベル館】
マーガレット ワイズ ブラウン さく
レナード ワイスガード え
うちだ ややこ やく
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