デッサンの本質とは


私は長年ロードバイクが趣味だが、
日本の自転車ロードレース界の草分け的な存在に
今中 大介さんが居る。


彼は広島県出身の自転車プロロードレースの選手で
ツールド・フランスに日本人として戦後初めて出場。

現役引退後は、自社オリジアナルブランドのフレームを販売するなど事業家としても成功している。
レース解説の他やまなし大使を務めるなど、
現在も多分野で活躍している。

ロードレースに疎い人には理解しがたいかもしれないが、
日本人が世界最大の自転車レースであるツールドフランスに出場できるのは並み大抵のことではない。

大リーグで日本人が初めて活躍した時のことを思い浮かべればニュアンスが伝わるかもしれない。


今中さんはインスタグラムをやっていらっしゃるので、
私は当然ながらフォローしている。

弟の隆介さんが東京芸術大学卒で美術大学の教授だということもそこで知った。

私は美大受験で二浪しているが、
もしお茶の水の予備校で浪人をしていたら
出会っていたのかもしれない。


インスタを始めてから2〜3年経った頃、
私は往年の名選手のデッサンを載せるようになった。

ある時、自転車業界では史上最強のロードレース選手と呼ばれている
ベルギー出身のエディ・メルクスの肖像画をアップした。
ちなみにメルクスは私の愛車であるデローザのフレームを好んで使用している。
彼は引退後、自らのフレーム工房を開いた際に、ウーゴ・デローザさん当人から
フレーム制作の教えを受けている。

彼の戦歴を簡単に記すと、

ツール・ド・フランス総合優勝5勝。
ジロ・デ・イタリア総合優勝5勝。
さらにブエルタ・ア・エスパーニャを制覇。
世界選手権優勝も言うに及ばず。
つまりとんでもない選手ということ。
数々の伝説的偉業により、
カンピオニッシモ(チャンピオンの中のチャンピオン)
と呼ばれている。


そのエディ・メルクスのデッサンの投稿にコメントが入っていた。


「息子のアクセル・メルクスとチームメイトでした。」


コメントの顔写真と名前を見て少々驚いた。

かの有名な今中 大介さんからコメントが入っているではないか。


そのコメントに気が付いたのは、
何を隠そう、関東一のパワースポットとの呼び名も高い、
秩父の三峯神社の"食堂"(椎茸丼がかなり旨い)。

前々から描きたいと思っていたこともあり、
「今中さんの肖像を描かせてください」と返信した。
返事いただけるのであろうか?と少々緊張しつつ
お待ちしていると…


「自分で良ければ」との返信。。。

その日は5月なのに季節外れ雪が降ってきた。
帰りのバスの中で、お守りを握り、
冷え切った体にほのかな温かさを感じていた。
神社でお土産をもらったかな・・・。そんな気がした。


本来デッサンは人に見せるためものではなく
本質を捉える練習だと言われている。
スポーツで言うならと筋トレみたいなもの。

だから私は名選手を描く時は、
その人のビデオを繰り返し見て、
どんな人生を送り、
どんな苦しみを味わい、
そして束の間であれ栄光をつかんだのか・・・
その喜びの瞬間を描きたいと思っている。

それを表現するのがデッサンの本質だと思っている。

昔の私にはわかっていなかった。

予備校の頃の私に教えてあげたい。。。


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