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日本版Katerra社をつくってみませんか?【さまよえる思考実験 その1】

はじめに

米国の新興建設会社Katerra(カテラ)をご存じでしょうか。IT技術を高度に駆使し建設プロセスの改革を試みたことで注目を集め、孫正義のソフトバンク・ビジョン・ファンド等から多額の資金調達にも成功しましたが、創業から6年で倒産しました。

この事例からボヤっと思い浮かんだのが、このツイートです。

今回は、この企業の倒産事例の教訓を活かし、今の日本で改めてKaterraのような建設プロセスを根本的に作り変えるような会社を作ったらどうなるか、という思考実験をしてみました。

※以下、小説を書くぐらいのフワフワした気持ちで書いていますのであしからず。

カテラ社とは?

Katerraの会社概要と倒産事例分析は、この記事に詳しいです。

要するに、電気機器メーカー出身の経営者が、そのメーカーで成功したサプライチェーンの垂直統合(上流から下流まで一社で担う)戦略を、そのまま建設業界にも適用すればそれまでの低い生産性を克服でき成功するだろう、と思ってやってみたという話です。

それだけ聞くと何だかうまくいきそうな感じもしますが、結果として以下の3つの要因から失敗しました。①顧客のニーズを読み切れないまま巨額投資を行った、②垂直統合と一品生産の相性不足を克服できなかった、③プロセス改革を業界慣習に馴染ませることのできる経営人材を十分に獲得できなかった。

難しいものですね…。それでは、この反省点を頭において、我々に身近な国内の環境でもう一度やり直してみるとどうなるか、考えてみたいと思います。

私の考える日本版カテラ

以下はあくまで一案であり、他にもいろいろな可能性が考えられると思います。私の経験や知見からある程度の精度で思考できる領域で、一つの解を考えてみています。

Target-デジタル技術を駆使し、どんな改修工事も適正価格で効率的に行う専門集団

  • 新築の縮小する中、拡大する改修需要を収益源に

  • 3Dスキャン既存調査/デジタルツイン意思決定/フルBIM設計施工による省力ワークフローを少数精鋭で回す

  • 自社の技術力の向上や専門人材の確保が進んだ頃に、特殊な改修工事(小規模都心オフィスのデータセンター化、都市型研究所、倉庫の冷凍冷蔵化など)に強みを広げる。軸足はあくまで改修工事に置き続け、利益率を維持する。それにより給与水準を高く保ち、人材確保のループを回す

Resource-資金・人材・組織の需給ギャップを活かす

  • 資金調達は、昨今建設業界への投資に興味を持つ商社や、社会動向に敏感なVC(ベンチャーキャピタル)などを探す

  • 初期の人材確保は、既存の建設業界の働き方に疑問を持ち始めた20~30代の施工管理優秀層から

  • 建設業の主要な参入障壁である施工実績は、後継者確保に悩む優良中小建設会社を母体とすることでクリア

Operation-無駄の少ない筋肉質なオペレーション

  • 創業時に最低限必要な機能は、意匠と設備の分かるプロマネ、施工管理、一般的なコーポレート機能。一般的なオフィスビルの改修程度であれば、構造設計などの人材が希少な分野も外注レベルで済む。その代わり、改修工事は想定外の事象が多い為、プロマネと施工管理には熟練人材が1人ずつ以上必要

  • 肝心のデジタル技術は、外部の専門会社と協業し、速やか且つ丁寧に自社のサービスに組み込んでいく。協業する上では受入側の高いデジタルリテラシーも必要だが、それは創業メンバー皆で必死に身に着け続ける

Strategy-カテラの反省を活かし、業界の特性に即した経営戦略

  • カテラの反省には以下の方針で対処「調達を含めた垂直統合はせず、需要変動とニーズの多様さへの柔軟性を確保」「デザインの自由度を損わない部分の標準化は徹底し、常に効率化を図る」「規模の拡大は慎重に行い、資金面のリスクを低く維持」

  • 案件の狙い目は、大手レベルの技術が求められるが大手が嫌厭するような小規模少額工事。社内のルールや標準プロセスの煩雑さに縛られた大手は、旨味のない工事の件数をいたずらに増やして限られた人手を取られることを避ける。そういう工事を、デジタル技術を核とした効率的なワークフローで捌きたい

一緒につくってみませんか?

正直言って、この会社、その気になれば今すぐにでも作れそう…。

でも私は作りません。「建設」自体にもっと興味が強ければ、自分が創業していたと思います。ですが、当面の私は「建築データビジネス」と「スマートシティ」が優先なのです。

それでも、この会社をつくることには一定の意義を感じます。既存ストックの活用による脱炭素推進および経済効率向上、建築設計施工の就労環境改善による人材不足改善、大手による不透明な改修工事の価格破壊など、事業が成功した暁には業界の既存課題の解決に繋がると思えるからです。

そこで…【どなたかこの会社を作ってみませんか?】

その際は、私は喜んでコンサルを務めさせて頂きます(笑)


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