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#08 わかりやすく釉薬を語ってみたい…もうちょっと灰の話(2)

 釉薬の話を続けます。普段、器を楽しんだり、ちょっと陶器に興味があるような方がもう少しだけ踏み込む手助けをしたい。そんな文章です。

 前回は瀬戸の釉薬は伝統的に草木の灰をベースに作ると書きました。実際は水簸するなどの処理は必要ですが、草木の灰なら何でもひとまず釉薬の原料になります(たぶん大丈夫)。これから夏場にバーベキューやった後の炭の灰でも、キャンプファイアの残りの灰でも、(量はともかく、ひとまずですが)釉薬の元にはなります。

 どんな灰でも(たぶん)釉にはなりますが、ただどんな釉になるかは実は草木によって特色があります(クセがつよい)。そこが灰釉の面白いところでもあり、面倒なところにもなります。
 釉の原料としてメジャーな灰(植物)はあります。そして、それぞれに特徴があるんです。例えば、ツバキの灰は乳濁する特徴があり、織部釉のベースによいとされます(瀬戸市の花もツバキですが、そういう縁でしょうか)。染付磁器の釉は柞(いす)の木。これは磁祖・加藤民吉が九州から伝えた製法。松など鉄分を含んでいるものもあります。十人十色、十草木十灰釉…ややこしい言い方だけどそんな感じ。(と言っても、すべてを自分で実験したわけでなく聴いた話ですが)不思議でしょ。

  ※トップの画像は学生時代、釉薬の勉強を始めた頃のテストピース。
   いろいろな種類の灰と長石をいろいろな比率で混ぜて焼いたもの。
   雑なテストピースですが、灰によっての違いが伝わるでしょうか?

 灰釉はまずは作りたい釉に向いた草木の灰を見つけなきゃいけないわけです。それがわかったら、決まった草木の灰を集中的に集める必要が出てきます。釉薬としてきちんと使おうと思えば大量の灰が必要です(並大抵じゃない量ですよ)。昔むかしの飯炊きも風呂もみんな薪だった時代ならともかく、現代で「天然の灰」で陶器を焼き続けるのは想像以上にたいへんです(繰り返しますが、決まった木を選んで集めて大量に燃やさなきゃいけない!)。
 そこで、「灰」も最近は合成されたものを使うことの方が多いと思います(合成って、何かズルそうな…大丈夫なのか…?いえ、大丈夫です。問題はありませんよ。細かいことはのちのち)。
 もちろん、それでも天然の灰にこだわって作陶されている作家さんもいらっしゃいます(やはり灰の入手は苦労されていると聞きます)。天然の灰が出す雰囲気はやっぱり違います。

 ベースの(特徴があう)灰釉に金属成分を混ぜて焼く(酸化とか還元とか窯の焼き方はありますが)と様々な種類の釉薬になっていきますが、続きとします。


まとめ
 灰はその草木の種類によって特徴が違うので、出来上がる釉も様々。灰釉の作り手さんに「灰は何の灰ですか?」とか質問すると通っぽいです。こだわりのラーメン屋さんと「スープ」について会話をするのに近いかも。絶対こだわりにこだわってるポイントですから、そこ。

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