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#07 わかりやすく釉薬を語ってみたい…自信はないけど(1)

 瀬戸焼は基本釉薬が施されています。先にも書きましたが、釉薬の種類が豊富なのが瀬戸焼の特徴です。
 陶器好きの方たちがよく「織部の釉はいいね」とか「志野が好き」とか「黄瀬戸だよ、やっぱり」とか言っているのは主に釉薬の話です。織部も志野も黄瀬戸も(他にもいっぱいありますが)瀬戸で使われることの多い釉(釉薬)です。
 釉の世界はとてつもなく広くて深いのですが、「釉薬に興味があるけどむずかしそうで」という方を入口までは案内するつもりです(自分が途中で道に迷うかもですが…)。一緒に深みにはまりましょう!

 そもそも釉って何?ということから考えましょう。

 器の表面に薄く施されたガラス質の層(さあ近くにある器、どれでもいいから見てくださいね)が釉です。透明で中に描かれた模様が見えるという釉もあるでしょう。緑や黄色や茶色や黒や……いろいろな色の釉もありますね。釉が施されていると(施釉〈せゆう〉と言います)器はきれいになります。つるつるぴかぴかです(もちろんつるつるぴかぴかじゃないのが魅力的な釉もありますが)。ぐっと丈夫になります。水も染み込みません。とても便利ですね。

 釉が(施釉陶器が)出来る前は釉がない「焼き締め」という焼き方でした。釉がないままでも窯で焼いていると(当然、昔の話なので燃料は薪です)自然に灰が器に降りかかって溶けてその部分はつるつるぴかぴかになったりします。昔の人は思います。「あれ、窯の中で灰がかかるとそこだけは丈夫できれいになってる。これはステキだね。」と(想像です)。自然釉と呼んだりします。現代でもこの焼き締めと自然釉による魅力的な焼き物を作る産地も多くあります。
 次に昔の人は考えます。「これさぁ、器全体に灰がくっついて溶けてたらもっとステキじゃない!」と(これも想像です)。たぶん最初は灰を直接手で器表面に擦り込んだり、あるいは水で溶いて器に塗ってみたりしてみたんじゃないかと(もちろん想像です)。試行錯誤です。トライアンドエラーです。実は灰だけだと溶け過ぎて器の下まで流れてしまうことがあります(今も溶けやすい釉とかは少しの調合ミスや焼成温度を間違えると「わー流れて窯の棚板にくっついちゃったー」がありますね)。
 昔の人は工夫します。「溶けすぎないように、ちょうどいい具合にするにはどうすればいいかなぁ」と(想像ですが、たぶんそうです)。ひらめきます。灰に石の成分(長石とか)を混ぜて溶け具合を整えよう!(いいアイデア!!)。どの石(原料)がいいか、混ぜるのにちょうどいい割合も探します。ここでもさらにいっぱい試行錯誤したんでしょうが、ついに釉薬の誕生です(きっとそんな流れです)。
 たくさんの陶工たちが時間をかけて工夫しての完成です。昔むかしのプロジェクトXです。

これは昔の登り窯で使われていたエンゴロ(サヤ)のかけら。
何度も窯の中で灰を被って、それが溶けて自然に美しい「灰釉」になっている。

 釉薬の調合は産地によって、作る人によって違いますが、瀬戸は伝統的に「灰」をベースにして釉薬を調合してきました。灰釉と言います(一般には「かいゆう」とも読むようですが瀬戸では「はいゆう」と呼びます)。灰と石、さらにここに色を着ける金属成分を加えると様々な色の釉薬になっていきます。乱暴過ぎますがざっとこんな感じです(石や土だけでも釉は調合できます。考えれば、灰の元になる草木は土から生えますからね)。

 長くなりました。続きます。

まとめ
 陶芸教室では釉調合までおしえているんでしょうか?陶芸でも一番難しく、興味深いのが釉と思います。
 瀬戸の釉薬は伝統的に草木の灰がベースです。ここが始まり。

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