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あたしの仕事は、命拾い

ギリギリのところで、命拾いした――。
スタンディングバーで、元カレとその彼女を見かけて逃げようとしたときに、酔った元カレが迫ってきた。
感動の再会か、悪ノリか。とにかくきもかった。
そんなところを出会って5分しかたっていない外国人が助けてくれた。
「センキュー」
それから出会って30分ほどでその恩人とは別れた。一期一会がアタシにもお似合いだ。

あまり人には言っていないけれど、アタシの仕事は命拾い。
浮かばれない(供養されていない)魂を集めては、霊園の隣にある公園に放つのだ。ふわふわふわってどこかへいく。

アタシには霊感があったらしい。
「こんなに食べられるなんて知らなくて……へへ」と笑う大食いチャンピオンを見て「うそつけや!」と思っていたけれど、霊感と食欲は同じようなもんだと、そのとき合点がいった。

「視えるなんて気づいてなかったから」
未だに信じてくれないけど、その人となら分かり合えると思う。
一緒にランチしてみたい。アタシはあんまり食べられないからバイキングがいいかもしれない。でもしゃべる時間、あるかな。

今日の命拾いは不作で、1玉だけだった。
命の単位はうどんと同じらしい。

たぶん、冬の始まりの日。
アタシは白い息を吐きながら命拾いをしていた。
冬は曇っているから命を探すのは厄介だ。

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