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梅仕事から先達の顔が見えた

こんにちは。世田谷十八番・Communication Directorの陰山です。
「世田谷」「十八番」「先達」がテーマなら、紙面とは少し離れても良いとの言葉を鵜吞みにして、
今日は好きなことを書いちゃおうかな。


料理は化学だ!

こう見えて私は料理が好き。
だけど多分、人とは料理に対するモチベーションが違う。

「料理=実験、研究、己との闘い」

特に夕飯の準備時の脳内は戦争中。
1時間以内に何品作れるか、頭をこねくり回し、いかに効率良く進められるか作業工程を考え、
レシピは一切見ず、己の味覚のみを頼りに調合して作り上げる数々の品。
さらに大食い家系の性か、食卓にはいつも暴力的な量…。
「おいしくなあれ」とか「家族が喜んでくれたら嬉しいな」とか、ほんのちょこっとの心は忘れず、
ただその大半は、料理を作業ゲームとして楽しんでいるんだと思う。

毎日、毎食のことだからいつもいつも手をかけていられない。
だからこそ、わざわざ時間をかけて丁寧に作業をする
「季節の手仕事」が本当に好き。

何気ない一言が彼女に火をつけた

6月の手仕事、言ってしまえば手仕事の代表とも言える「梅仕事」。
実は手を出したことがなくて。

まだ3月の肌寒い頃、「丁寧な暮らし」を十八番に持つママ友に
「あったかくなったら梅干し作ろうよ~」と声をかけたことも忘れていたつい先日、
「梅の時期になったね~!梅干しやってみようか!」と連絡をもらった。
梅仕事は何回もやったことがあると話す彼女だが、梅干しを作った経験はないそう。

梅酒、梅シロップあたりなら手軽にできるかもしれないけど、梅干しって本当に作れるの…?と、
自ら誘っておきながら後ろ向きな気持ち。
とはいえこの彼女、丁寧な暮らしを何食わぬ顔で毎日当たり前に実践されている、
”丁寧な暮らしのエキスパート”である。
そんな彼女の十八番のひとつ「季節の手仕事」を学んできた。

梅干しって干すだけじゃないの?

まず謝りたいのは、私から誘ったにもかかわらず、梅や砂糖、容器の準備から場所の提供まで、全て彼女がやってくれたということ。
さすがはエキスパート。おもてなしがすごい。
言い出しっぺなのにごめんなさい!

この日作ったのは梅干しと梅シロップ。
まずは梅干しの下処理から。

①竹串で梅のへそをほじほじしてヘタを取る
②軽く洗って汚れを落とし
③塩をまぶして容器に入れ、重石を乗せて2週間。

???
なんか思ってたのと違う。下処理を終えたら干すんじゃないの…?

2週間が経ってからもまだ工程がある。
④シソを追加してさらに待つこと土用の日まで
⑤ここでようやく干せる状態になる
やってみないとわからないことってたくさんあるけど、梅干しが食べられるまでに2か月近くかかるんだなぁ…。

重石がなかったので水を入れたペットボトルを刺してみた
多分ダメなので、石を拾ってこようと思う

同じ梅仕事でも、使う梅は違うんだよ

ちなみに梅干しに使ったのは、青梅を追熟させて少し柔らかくなった梅
(これも数日前からご自宅でやってくれていた…!)。
梅シロップにはまだ実の硬い青梅を使うそうな。
梅干しと同様にヘタを取ってから洗い、容器に梅と砂糖を交互に詰めていく。
こちらはこれだけで完成。あとは砂糖が溶けるのを待つだけ。

梅シロップと(左)と、干す前の梅たち(右)。
君たち可愛いねぇ〜


実験失敗?の梅酒

そしてなんと、余った青梅は持ち帰らせてくれるという菩薩っぷり。
こちらは自宅で梅酒へと変身させてみた。
シロップと違うのは、当たり前だけどお酒が入るところ。
梅と砂糖を交互に詰めたあと、ホワイトリカーをだらだらと流し込んだら仕込み終了。
1か月ほどで飲めるようになるんだそう。

朝起きて「さてさて、昨日の梅酒さんはどうなったかな…」と見てみてびっくり。
砂糖はもう半分くらいは溶けていて底に沈殿し、梅たちがホワイトリカーの海に浮かんでいる。
容器の底に梅が沈んでいるイメージのある梅酒…。
梅が浮いてしまったのは、どうやら砂糖が多かった様子。
そりゃそうだ。エキスパートと違って、私は検索しない女。
一応お箸でまぜまぜしたけど、大丈夫かな…。
「梅より砂糖の方が重い」。勉強になります…。
(ちなみに公開前にまりえさんに読んでもらったら
「まさか梅酒の分量適当にやったの?ねぇ、さすがに嘘でしょ?」と引かれました)

漬けたては良かったんだけどね

先達の知恵は現代に受け継がれている

作業をする中で、エキスパートと何度も話題になったのは、
「手仕事をしている時間は贅沢だ」ということと、
「昔の人はよくやってたよね」ということ。
季節の手仕事は言ってしまえばとにかく地味。黙々と淡々と捌いていった梅を見ると
「これぞ作業ゲームの頂点だ!」と興奮した。
それに、梅干しに限らず干物や漬物、味噌などの発酵食品…。
そのすべてを顔も知らない先達たちは作っていたんだ!とも。

冬にはお味噌を仕込んでいました。もうすぐ食べごろ!


調べてみたら、冷蔵庫が普及し始めたのは昭和30年代のこと。
一家に一台の時代、というのは昭和50年になってからだそう。
そう遠くはない昔、多くの家庭で冷蔵庫のない暮らしが当たり前だったこの時代に、
常温で長期保存を可能にさせる、今では「季節の手仕事」と呼ばれる知恵は、
当時の誰もが持っている十八番だったに違いない。

スーパーに行けば、一年中なんでも簡単に手に入るいま、
いざその工程を経験すると、どの食材・どの食べ物にも、その先にいる人の顔が見える。
手をかけた、時間をかけた、愛情を込めた…。
今回は梅だったけれど、一粒一粒が愛おしく「無事においしくなってくれ!」と願わずにはいられなかった。
ずっと昔の先達たちとつながる瞬間。
だから季節の手仕事はやめられない!

全工程を終えた後、なんとご飯まで作ってくれた‥
このエキスパートを私は手放してはいけない‥




【この記事を書いた人】

世田谷十八番
世田谷に暮らす先達から十八番を見出し、次世代にお届けするインタビューマガジンです。もっと自分らしく生きるためのヒントを、先達の十八番から見出す活動をしています。
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