【やれたかも委員会】作品1000本ノック0034-0035

少し前にタイトルを見た瞬間から「絶対面白い」と思っていた。

『やれたかも委員会』吉田貴司著

面接会場のような小部屋に、三人の「やれたかも委員会」
そして扉を開けて入ってくる一人の人。

彼(時には女性もいる)がおもむろに語り出す在りし日の思い出。

付き合う付き合わない、好きだ嫌いだよりもほんの少し大人な、微妙な人間関係の機微を描いた「やれたかもしれない思い出」

ゲスい!

と思われるかもしれないが、淡々と語られる思い出、妙にリアルなディテール。

実に文学的であり、そんじょそこらの少女漫画よりもはるかにほの甘くほろ苦い、付かず離れずの人間関係が描かていく。

まるで上品な香水のようにふんわりと香る性的な初夏の涼風は、おそらく女性も楽しめるものだと思う。

それを「やれた」「やれたとは言わない」と判定するのが、三人の評議委員。

男性二人に女性一人の構成がまた実に絶妙で、だいたい女性の判定が厳しい。

男性と女性にある考え方、というよりは感性の違いをよく表してると思う。
男が思わせ振りだと感じてしまう女性の仕草はだいたいそうでもないってことだ。

男が安易に「もう一押しでやれたろう」と思えてしまう案件も、そうではないと(男からすれば)無情な現実をつきつけてくれる。

ここの違いが世の中の多くの悲劇を生むと同時に、
「やれたかもしれない」思い出にとどめたことが、実に味のある選択肢であったことを際立たせてくれる。

あるいは、やれたかもしれない。
でも、それは越えてはいけない一線だったに違いない。

ほんの少しの後悔を、色褪せない思い出に変えて生きていくのが人間。

本能と理性、そして相手との関係性。
ギリギリの葛藤を乗り越えて、選びとった選択肢にYesもNoもないのである。

なんて熱く語ってみたけど、所詮男はしょーもない生き物だって話でしかないのかもしれない。

人間関係って難しいよね。

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