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我慢するから我慢しない

『我慢しながら生きる』

私はこれを自分の人生に課せられた

油断したらいつでも流れ続ける涙を堪え
引きちぎれそうな心の痛みを抱え
もたげそうな頭の重さに必死に耐えて
それでも生きていかないといけないことを
私は神様に課せられた

一生を一緒に生きようと決めたパートナーが
前触れもなく死んだことは
これ以上ない苦しみだった

鬱と死はいつでも隣にあり
今も呼んでもいないのに
友達かのようにいつでも隣にいる

じっとこちらを見ていて
いつそちらに足を踏み入れてもいいように
手ぐすねを引いて、ずっと待ち構えている



愛した旦那が突然死んだ時
私はそれまで生きてきた世界とは
全くの別世界へ飛ばされた

そこは暗くて冷たくて
とても静かで
全てが色褪せている場所だった


生きることに
なんの希望も喜びも無くなったのに

それでも
生きていかなければいけなかった



ここは
生きてなんていたくないのに
死ぬことを良しとしてはしてくれない世界

自分ですら自ら死ぬことを良しとは出来なかった

生きるべき理由が全くわからないのに




あの日から
私はひたすらに我慢をし続けている

彼のいない世界を生きていくことは
ひどく辛い


会いたいのに会えない
触れたいのに触れられない
話したいのに話せない
声を聞くことすら
姿を見ることすら叶わない

一緒に歳をとりたかった
一緒に子供達の成長を喜びたかった

たとえ
一緒にいられなくても
この世界のどこかで生きていてほしかった

幸せに笑っていて欲しかった


どれもこれも叶わない




子供達にお父さんがいないことも
思い描いた未来が無くなったことも
当たり前にあった幸せな日々が消えたことも
絶対的に信頼し安心できる場所がなくなったことも
なんでもないくだらない話ができなくなったことも

全てのことに我慢するしかなかった


環境を変えることは出来ない
環境を変えたところで事実はいつもつきまとう

私にできることはただ一つ
この暗く冷たい現実に『我慢し耐える』ことでしかなかった


鬱と死を隣に据えて
我慢して生きなければならなかった


私は放っておいたら、いつか鬱と死の世界に行くだろうから
『我慢して生きなければいけない人生』と引き換えに
『我慢しないで生きる人生』を選んだ


どうしても変えることのできない『我慢すべきもの』は仕方がない

その代わり
自分でどうとでもなる『我慢しなくたっていいもの』には
一切我慢しないことを決めた



自分の気持ちだけを最優先に考える


お昼ご飯は食べたけど
夕飯の支度はしないといけないけど
夕方に美味しそうな定食屋さんを見つけたら
何も考えず飛び込む
はたしてこれは何ご飯だ?と思いながらも
たとえ一日4食になろうとも
食べたいと思ったら美味しくいただく

エステや美容品にきっと数十万円は注ぎ込んだ
少ない保険金をごっそりつぎ込んで
住みもしない家を建てた

子供達のことを考えても、自分の収入を考えても
使っている場合じゃない
でも、鬱屈が溜まって結果死ぬくらいなら
使ったってなんの問題もない

調子が出なくてきつい時は
会社を休んで一日中、映画やドラマや漫画を見た

夕飯を作るのがしんどい時は
子供達にコーンフレークを食べさせて済ませた

子供の前だろうとどこだろうと
泣きたい時は泣いた
当たり散らしたこともある

子供達を施設に預けたこともある

何よりも
誰よりも
子供よりも
自分の気持ちを優先した

好きなことを好きなだけ
好きなようにした


え?おいおいちょっとちょっと!
どうかと思う
人として親として大人として???

と思う人もいただろうし
実際色々言われた

人の目、常識、一般論
金の使い方、子どもへの接し方

でも私にとってそれらは全て
『我慢すべきもの』ではなかった

比べ物にならないくらいの『我慢すべきもの』があったから



食べたいものを食べたい時に食べて
欲しいものを手に入れ
やりたいことをやって
やりたくないことはやらない

人にどう思われても
誰に嫌われても
何を言われても

自分の気持ちが一番
何よりも誰よりも子供よりも大事


自分の人生の中で
自分より大切にすべきものなんて一つもない

それは子であろうとパートナーであろうと
そう思う

仕事よりも義務よりも
何よりも絶対的に大事


『自分』があってこその
他者との関わりだと思う


死を見つめ続けてきたからこそ本当に思う


おかげで
自分の声を聞くのが上手になった

今、何を求めて
何が欲しくて、どうしたくて、したくなくて

今日はどんな気持ちでいて
何をしてあげたらいいのか

どうしたら楽でいられるのか
心地よさを感じられるのか

『幸せ』だと思えるのか



自分のご機嫌を取れるのは自分しかいない
鬱に引かれる手を払うのは自分しかいない


私のすること、したことに
「あーだこーだ」言う人は
私が『鬱』と『死』に手を引かれ
死のうものなら一体なんて言うのでしょう

「もっと楽に生きられなかったのか」
「我慢なんてしなくて良かったのに」
「自分を大事にして欲しかった」

…なんて無責任な世界


だから
我慢を強いられる人生の代わりに
我慢しない人生を選んだ


いつも健やかでいられるわけではない
今でも苦しみに溺れる時がある

それでも我慢せずに生きると決めたことで
言いたいことを言って、やりたいことをやれるようになって
縁が広がり
チャンスが生まれ
私の周りの世界は確実に広がった

大きな我慢を強いられるのであれば
それを超える自由を手に入れる

それが
我慢すべきことから逃げず目を背けず
「我慢はもう致し方ない。するしかない!」と
泣きながら真っ向から受け入れた私が見つけた答え


たくさん自由に自分勝手をして
思う存分、自分を大事にしてきたことで

世の中の大概のものは
我慢しなくていい

そう思えるようになった


『我慢する』そう決めたから我慢するのであって
『我慢しない』そう決めたら我慢なんてしなくたっていいんだ

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