綱渡りの人生よ

仲睦まじいカップルを見ると

とても居た堪れない気持ちになる

幸せそうで何よりだ
そう思う反面

とても羨ましくて
妬ましい気持ちが
湧き上がるのも事実

いいな

ただそう思う

私にはもう無いもの

確かにあったはずなのに…

もう

無いもの

安心して
信頼して
向ける温かな眼差しは
その笑顔は

関係を築いてきた二人だから生まれるもの

それは
私にも確かにあったんだ

そして

もう無いんだ

安心して帰る場所も
信頼して話す相手も

元から無かったわけじゃない
失くなったんだ

新しい相手を見つければ良い
新しい幸せを見つければ良い

そんか簡単な話じゃない

あの頃の時間が
あの時の気持ちが

いつまでも自分の心を引っ張ってくる

悲しくて
苦しくて
寂しくて

会いたくて
話したくて
抱きしめたくて

全て叶わなくて…

これが
失恋だったらいい

それは
苦しいだろうけど

相手あっての話
相手の意思があっての話

割り切るしか無い

でも

誰も望んでなかった
皆んなが満たされている中
皆んなが幸せに向いている中

突然に無くなった

諦めるしかなくて
諦めたくなくて

手に戻すことの出来ない
その温かな時間を目の当たりにする度に

もう…

そういう人生になってしまったのだから

仕方ない

そう思って目を伏せる

仕方ない
仕方ない
仕方ない

何度思っただろう

どれくらいのことを
諦めただろう

今
自分が歩いている道は
細く、すぐにでも揺らぐ道

いつでも
暗闇に落ちることができる

そういう道を歩いているのだと
自分で分かってる

だから
目を伏せる
見ないようにする

顔を上げて
前だけを見て
お尻を叩いて

自分が歩いている道は見ない
進む方向だけ見る

自分がいる場所（現状）を見てしまうと
足が震えて
踏み出せなくなって

きっと
どこまでも堕ちていく

堕ちないように
堕ちないように
堕ちないように

涙を溜めて
拳を握り
唇を噛みながら

背負うものの重さに
潰れないように

失ったものの大きさに
折れないように

一歩ずつ一歩ずつ
ゆっくりに
でも確実に

前へ足を出す

震えながら
抱えながら
必死に歩いてきた自分は

いつしか
どんな道も臆することなく歩いてる

あんな不安定な道を
あんな暗い場所の中
自分の力で歩いてきたんだ

倒れないように
止まらないように

それが出来た自分は
もう
どんな道だって歩ける

誰も歩きたくない道を
誰もしたくない思いを
私はしてきたんだ

鍛えられないわけがない

辛い思いは
人を鍛える　

キツければキツイほど
辛ければ辛いほど

後の人生は楽だ

温かく優しく
柔らかに生きていける

確かに言える
全てに満たされていたあの頃に比べ
確実に
温かく優しく柔らかくなった

もっとそうなれる

そうなるための修行なんだ

鍛錬を積めば
どんな道も
どんな歩き方も出来る様になる

そしてそれは
鍛えたものにしか出来ない
誰にでもできるようなものじゃないんだ

だから

飲み込もう

自分の境遇を
失った大切なものを
弱い自分を

飲み込んで
前だけ見よう