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うちの猫について①りぼん


りぼんとの出会い


白黒のハチ割れ猫、りぼん。
本当の年齢はわかりません。
私がまだ鹿児島で義理の父母とともに、家業の温泉を営む母屋で普通に暮らしていたころ、
フラッと入ってきた入り猫です。
家業の温泉はお掃除と金銭授受以外は特に特段のお仕事もないので、私は宿泊施設に働きにでており、仕事を終えて帰宅したところ、‘あのね、この猫を飼うことにしたから’と縁側で義母に申告されました。
温泉施設は自噴の天然温泉で、床の部分もあたたかく、冬は多くの野良猫のみなさんがやってきます。しかし、いつも基本的には義父母にすててらっしゃいといわれました(TT)
このりぼんちゃんだけは、義父母にしっかりと媚を売り、私が帰ってきた時にはすでに看板猫よろしく縁側にいて入居権をちゃっかりゲットしていました。
身体はちいさく、人懐こく、かといってなめ続けるとかはないけれどアイコンタクトが最初からできる猫だったので、どこかで飼われていたのかもしれません。
しかしながら、可愛い風貌であるにもかかわらず牙は片方折れており、しっぽは短く、おなかのあたりにこぶもありました。
きっと過酷な幼少期だったにちがいありません。
りぼんちゃんは、飼ってから15年弱経ちますが、サイズはかわっておらず、どちらかというと加齢でさらに小さくなったかもしれません。

りぼんの性質

難しい義父母に気に入られたりぼんちゃんは、温泉の看板猫として、とにかくお客様の心を射止めてました。りぼんちゃん目当てに煮干し持参で温泉に来るお客様、すぐ人の横によるので、お客様に目やにもしょっちゅうとってもらってました。観光客には何を感じてか、特に才能を発揮し、フォトジェニックになってました。

私たちが義父母と200メートル程度離れた別居すると、後追いしてついてきて家が二つある状況になってました。

他の野良猫を別居先で受け入れると、彼女は女王様なのでかわいがることはせず、まあ、許してやるかという雰囲気で接していました。彼女は人間ファーストで、人間にかわいがってもらう時と猫同士のときでは全く態度が異なります。
縄張り外からやってくる猫にたいしては、かわいい風貌がいっぺんして化け猫ヴァージョンの鬼の形相。低い声でうなり、小さい体で立ち向かいます。他の猫の方が大きくても彼女はまったくひるみません。

りぼんとの一時的なお別れ

とにかく人が好き。上に乗る。踏む。一緒に寝る。そばに来る。そんなりぼんちゃんと私たちはお別れする日がきました。離婚です。
義父母がなくなって、家業をついでいました。娘も私も温泉から自由になることはうれしかったけれどリボンと別れるのはとてもつらかったです。でも仕方ありません。
しばらくすると、われわれには猫が不足しているということで猫カフェにいったりしましたが、やっぱりリボンのように人懐こくはありません。
エアーリボンを思い描いてすごしたりもしました。 
たまに事情があって温泉に行く用事があると、りぼんをみつけて泣きそうになりました。

そうこうするうちに娘の高校進学を機に関東の実家に帰ることにしました。
実家はペット不可とかではないし、父もよろこんでくれました。
あとは元夫に許可を得るだけでしたが、私と娘が頼むと、いいよ。とあっさりOKしてくれました。

みんなでお引越し



さて、我々が東京へ向かう日、リボンを迎えにいきました。
ゲージにみたてたバスケットの中にいれて車にのせましたが、もともと自由な猫です。もちろん不安です。にゃあにゃあ鳴いてそのたびに娘がチュールをあげたり高級な銀のスプーンを食べさせたりしてなんとか空港につきました。
空港では私たちの数少ない友達がいて、お食事でもといってくれましたが、リボンを見るとレストランの人は外においてくださいと言います。そりゃあそうですよね。我々には家族ですが他の方には動物ですもの。
しかたなく、待合でテイクアウトの食品を買ってお別れの時間をすごしました。
さて、前もって申告しておいたので、手荷物としてりぼんを預けました。もうすっかり疲れたのか静かにしています。あありぼん。ごめんね。暗くて狭いかもしれないけど90分がんばっておくれ。
羽田でリボンを迎えにいくと‘いい子にしてましたよ’と係員の人が待っていてくれました。ああお前は偉いねえ。ペットシーツも汚れず待ってます。緊張できっと何も出ないのでしょう。
東京に夕刻について電車はラッシュです。我々は自分たちの荷物もそれなりに大きいけどとにかくリボンを無事につれてかえらなければ。世知辛いといわれながらも山手線では、‘こちらの奥の方へどうぞ’といってくれる女性がいました。みな猫にやさしい。その後席も譲ってもらったと思います。すごくうれしかったです。身じろぎせずじっと耐えて実家につきました。あありぼん、よくがんばった。そして荷物も大きいのにかわるがわるリボンをもってくれた娘もよくがんばった。
もちろん彼女にとっては知らない場所です。最初の日はバスケットから出ないかもと思っていましたが、後追いがすごいです。父に途中でであうと、うううとうなります。お客さんとはちがうと思ってたんだね。父になれるまでおそらく1か月ぐらいかかったと思います。

関東でのりぼん

この家にもなれて、幸せに暮らせるようになりましたが、彼女は野良猫出身で鹿児島でも放し飼いにされていたため、隙をみては外へでました。幸いなことにうちは車が通れる大きさの道路には面しておらず、他の猫たちも走り回っています。ということは、縄張りがもう決まっていたはずです。
案の定、大きなトラ猫にはしょっちゅう追い詰められました。私たちはだから言ったじゃんと思い、家の中になるべくいるようにさせましたが、しばらくすると老齢だったのかその猫がいなくなりました。
りぼんちゃん、わが天下がやってきました。もう他の大きな猫がきても‘ここは私のしまなんだからぁ!’と言わんばかりにあの恐ろしい形相で立ち向かい追い払います。
怖いものなしですので、どうしても外にいます。うちは南向きに縁側がないのですが、斜めお向かいのおうちにはあります。晴れた日はまるでそこの猫のように時間をすごします。
いろいろ尋ねられるといいます。うちの猫じゃないんですよと何度も言っているといわれます。いつもすみません。そしてありがとうございます。通りかかる人は恐る恐る近づきます。りぼんはチャンスといわんばかりに撫でなさいよと腹をみせたり頭をすりつけたりサービスし、たまに抱っこもされているのを目撃します。。。。一回は別のお宅でほしている布団にのってお部屋に入ろうとしていましたので、謝りに菓子折りを持っていきました(TT)首輪がおちていたと連絡してくれた方には、いつもリボンがいたら撫でています。寒い時期はでてこないので、りぼんがでてくると春が来たんだと思いますが、いないと心配です。といわれました。また、一緒に外でりぼんと遊んでいたとき、犬を散歩しているご婦人から、’この猫、けっこう遠くまでいってずぶぬれになってたのをうちで助けたことがるのよ’と言われたこともあります。外に放つことは良くないのです。すみません。でもアパートや賃貸がおおいこの路地裏でいかつい風貌のお兄さんが優しい顔でリボンを撫でているのを見ると、リボンがいてもいいのかもしれないと思います。

そんなりぼんちゃんのこの世の春というか、秋というか穏やかな日々に我々は過酷な試練を課してしまいました。新しい保護猫を受け入れたのです。
りぼんねえさんは当然かわいがることはしません。なかなかなれませんでしたが、やっと同じ部屋にいれるようになり、たまに鼻を突き合わせれるようになりました。
すくなくとも齢14歳ですが、とにかく長生きしてくださるよう、最後の最後まで面倒みさせてほしいと思います。

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