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[ITIL入門⑥]ITIL=システム運用保守ではない

ITIL入門シリーズ第6回は、「ITIL=システム運用保守ではない」です。

ITILはなぜシステム運用保守だけのベストプラクティスと誤解されているのでしょうか?これは、ITILが浸透した背景が大きく関連しています。(と、私は思っています)

ITILがシステム運用者が誰でも理解すべきフレームワークとして浸透したのがITIL v2時代。全部で7冊ある中の、サービスデリバリ(赤本)、サービスサポート(青本)という2冊のみが浸透しました。

ここまで浸透したのは、ITIL Foundationという資格(及び研修期間)の貢献が大きいと思いますが、それが良くも悪くもITIL=システム運用というイメージを作ってしまいました。

ITILは辞書みたいなものなので、使える部分だけ使えばOKです。なのでシステム運用で必要な部分のみ参照され使われるのは全く問題ありません。ただ、それでは他部門との関係性や組織全体に跨った全体最適等には適用できず(運用担当以外はITILもあまり知らず)、宝の持ち腐れ状態になっていたのが実態ではないでしょうか。

そこで、ITIL v3(2011)ではライフサイクル全体にフォーカスする形で、書籍が再編成され、その5つの書籍がすべてITIL Foundation試験の範囲に組み込まれました。論理的に考えれば、これで運用以外にもフォーカスされ、ITIL自体も様々な組織で活用されるようになるはず…でしたが、実際はそうなりませんでした。

理由は色々あるとは思いますが、個人的にはライフサイクル全体の関係性を理解すべき対象である、各組織(運用以外)のリーダーやマネージャレベルにアプローチできなかった点が大きいと思っています。結局、担当者レベルでファンデーションの理解が進んだとしても、実際に組織の変革を推進していくリーダーやマネージャがその必要性を理解していなければ意味がありません。

かつリーダーやマネージャが組織で変革を推進していくためには、Foundationレベルではなく、もう一段深く実践レベルでの理解が必要となってくるのですが、ITIL v3(2011)ではPractitioner資格として提供していたものの、リーダーとして理解しておきたいという観点では資格が整理されていなかった印象で、かつ資格取得までにかかるコスト・時間もハードルになっていました。そこを改善するために、ITIL4では「ITIL Strategic Leader (SL)」という資格が設定されたのかなと個人的には思っています。

#資格体系はこちらを参照ください
https://www.itpreneurs.co.jp/how-and-why-to-deal-with-changing-to-itil-4/itil-4-higher-levels/

資格ってその知識・スキルを浸透させるのにとても効果があって、特に日本では顕著なのでこのあたりの戦略がうまく市場にはまれば(はまるようにプロモーションできれば)少しは本質に近づけるのかなと感じている次第です。

上記で紹介した資格の話以外に、現場で浸透させるもう一つのアプローチとして、ITIL4のコアスキームであるSVS(サービスバリューシステム)にフォーカスし、バリューストリームマップを関係者で作るようなワークショップがあると良いなと個人的には考えております。

バリューストリームマップはIT4ITDevOpsLean,でも使われる手法でITIL4でも重要な考えとして定義されており、自組織の業務をバリューストリームマップで作成し、それら一連の作業を通してITIL4の概念を合わせて理解するような研修があれば非常に有益化と思います。

本日は以上です。ありがとうございました。

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