カドカワ君

真面目(マジメ)
虐め(イジメ)
惨め(ミジメ)

『マジメな君の眼差しに
ボクはそっと優しいキスをする』

『始業開始30分前の教室に
イジメっ子たちの姿はまだない』

『結局のところ、最終的に
ミジメになるのはお互い様』

扉を閉めずに
クビを締めたのは
ボクなの?
ホントに

じめじめ
むしむし
じめじめ
むしむし

ボク
夏ってキライ
梅雨はホンマ最悪

あっ、関西弁
ほら、地がでた
イントネーション?

湿度と室℃
温度と音頭

韻を踏んだ
またまた踏んだ
たまたま踏んだ
足の裏が熱くなる
一番汗ばんだのは
ソックスの踵

舐めるとザラザラ
触るとツルツル
醒めるとテクテク
君への想いは
ひとりで勝手に歩き出す

先っぽの尖った
鋭利なデザインの
猫の舌を
キーホルダーにして
通学用の鞄に
希良梨と
ブラ提げている

そんな君の横顔は
やっぱり美人で
学校のモラルとは
同級生のセンスとは
不釣り合いに
教科書の答え合わせには
反比例して
放物線の形のまんま
ボクの瞳にまあるく映る

『まあまあまあまあ』
と誰かさんが
ボクの頭ん中で言う
割り込みの会話は
校則で禁止のはずなのに
※生徒手帳にもちゃんと書いてある

ニンゲンが
本気で
人をスキになる時
倫理観は
歯止めにはならないから
というのは
金曜ドラマの中にある台詞
毎週、22時 ON AIR

昨夜は
開始から40分間を
少しまわったところで
その主題歌は掛かった

『シンジ君、
キミは
もう立派な大人だよ』
とヒサシ君が
みんなの前で
ボクの悪口を言った

『学級会には
まだ時間的に
ちょっと早いから
そういうのは
今日の終わりの会で
言ったらいいんじゃない?』

ヒサシ君に
そう言ったのは
副委員長の鈴木さんだ

担任の田村センセは
クラスの過半数が
賛成したのを黒板で確認した

結局、後の学級会の
学級委員選挙で
二学期の委員長は
ヒサシ君に決定した

果たして
彼の
その後の運命は如何に?

だいたいは
この辺りで話は終わり
来週につづく

またまた
この話題で
僕らのクラスは
持ち切りになる

一週間のあいだ
やっぱり
戦争になった

トマホークの形をした
ステンレス製の鉛筆が
あちらこちらに
素面の空間を飛び交う
空中を漂っていたのは
ボクの席を通り過ぎたのは
中性ではなく
ステルス性の君の沈黙
誰一人として
哀しみはなかった
もちろん、罪の意識も

委員長が
決まってから
きょうで
ちょうど7日間

テレビの番組表どおりに
戦争は終わった

『角川君、その小説って
もう文庫になってたんだ?』
『コレ、前から読みたかったのよね
図書室にはまだ置いてないし』

ちょっとだけでいいから
『私にも貸して?』

新しいラブストーリーが
始まるような余韻を残したまま
湿度と温度はさらに上がり
この教室にも真夏がやってくる

次回、『三日月たちの憂鬱』
乞うご期待

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?