◇コラム【新・食べ物通信】カブ
多くの品種が生まれ各地で愛されています
皆さんは、カブがお好きでしょうか。サラダ、漬物、煮物、みそ汁の具材など、日々様々な料理で活用されています。
原産地はアフガニスタン付近の中央アジア、地中海沿岸など諸説あります。
歴史は古く、日本には弥生時代に大陸から伝わりました。『古事記』には「吉備の菘菜(きびのあおな)」と記載され、『日本書紀』では主食を補う作物として、持統(じとう)天皇がカブの栽培を勧めたとする記録が残されています。平安時代には、春の七草の一つとして親しまれるようになりました。
日本では、岐阜県の関が原を境に、東日本と西日本で系統の違う品種が栽培されています。中国から伝わった東洋型は西日本に、朝鮮半島から伝わった西洋型は東日本に定着しています。
各地に伝わる中で地域の気候や風土に合わせた品種改良が行なわれ、色々な品種が生まれました。現在は80種以上あると言われています。
東日本には耐寒性のある西洋型の小さめのものが多く、西日本では東洋型の大きめのものが多く栽培されています。
夏の疲れをくり越さないように
丸い実の大部分は水分ですが、ビタミンCやカリウム、消化酵素のアミラーゼ、辛味成分のイソチオシアネートが多く含まれています。葉は実よりも栄養価が高く、カロテンやビタミンB1、B2、ビタミンC、カルシウムが豊富です。
ビタミンB1はご飯やパン、砂糖などの糖質を分解し、エネルギーに変える働きをしています。不足すると、いくら糖質を摂取したところでエネルギーに変えることができず、乳酸などの疲労物質がたまり、疲れやすくなります。
ビタミンB2は動脈硬化や老化の原因となる有害物質が体内で生成されるのを防ぎ、生活習慣病を予防しています。不足すると皮膚や粘膜が敏感になり、目の充血、肌荒れ、口内炎などをおこします。
疲れやすい、ストレスが溜まっていると感じる際、ぬか漬けや豚肉、うなぎなどの組み合わせを工夫してみてください。
ぬか漬けにすることで、ビタミンB1が10倍に増加することが分かっています。手軽に購入できるのでおすすめです。
ビタミンCは、水溶性ビタミンの一種です。体内のコラーゲンを作るのに欠かせない栄養素です。強い抗酸化力が注目されており、がんや動脈硬化の予防、老化防止効果が期待されています。
カブの葉には豊富なビタミンCが含まれています。普段、葉を捨ててしまう方もいると思います。細かく刻み、しょうゆや鰹節、チリメンジャコと一緒に炒めてふりかけにする方法や、みそ汁の具材として食べれば美味しく活用することができます。葉は傷みやすいため、購入後はなるべく早く使うようにしてください。
アミラーゼは、炭水化物を分解して糖類に変化させる働きをしています。消化を助け、腸内の環境改善や、胃酸を中和する働きもあるため、胸焼け・胃痛に効果を示します。熱に弱い性質があるので、これらの効果を期待する場合、生で食べるようにしてください。
購入の際の選び方
イソチオシアネートは、だいこん、キャベツなどのアブラナ科の野菜に多く含まれる辛味成分です。強い解毒作用を持ち、特に発がん物質を無毒化する働きが注目されている栄養素です。加えて、白血球を活性化させるため免疫力が向上し、ガンや動脈硬化を予防する働きをしています。
購入の際は、葉が鮮やかでピンとしているもの、実にハリがあって傷が無く、ひげ根の少ないものを選びましょう。
保存する際、葉が実の水分とうま味を吸ってしまい、中に「鬆」が入ることがあります。葉を付け根で切りとってから水でぬらした新聞紙などで包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に立てて保存をしましょう。
どのような料理に入れても、良質な栄養を摂ることができます。身体の状態に合わせて調理方法を工夫してください。残暑の疲れを残さないようにしましょう。
*カブにそっくり‼ コールラビとは?
ドイツ語のキャベツとカブを合わせたkohl rabiを直訳した名前で、キャベツの変種から発生した野菜です。
明治時代から日本に入っていましたが、見た目の不思議さから栽培する農家が少なく、あまり普及していませんでした。
食物繊維、ビタミンCが豊富で、加熱しても栄養価が変わらない特徴があります。癖のない味わいをしており、シャキシャキとしてほのかな甘みを持ちます。加熱するとコリコリとした食感になります。サラダやスープなど様々な料理で活用してみてください。
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