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腸内の善玉菌を増やして、腸内環境を改善してくれます【新食べ物通信 No.5 ごぼう】

大陸より伝来 日本で食品化

 皆さんはごぼうをどのように食べていますか。食感や香りが独特ではありますが、滋味豊かな根菜として知られています。スーパーマーケットなどで年中目にできますが、4月から6月ごろには柔らかく香りの優しい「新ごぼう」が出廻り始めます。旬のものは香りが良く、旨味も強くなります。

 ごぼうは薬草として中国から渡りました。原産国の中国やヨーロッパではごぼうは薬として使用されており、日本以外で食用として食べるのは台湾と韓国くらいだと言います。

 平安時代には宮廷の料理に使われていたという歴史も残っています。ごぼうの香りを気に入ったことから独自に食用として栽培を始め、江戸時代より野菜として食べられるようになりました。

 一般的に滝野川ごぼうという直径2~3センチ程度の品種が出廻っています。東京都北区滝野川が原産とされていますが、現在は全国で栽培されています。地域によって様々な品種があり、調理法も様々。日本ではきんぴらや煮物、天ぷらなどの揚げ物、汁物、お茶などに活用されています。

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毒素を排出 健康的な身体に

 ごぼうは8割が水分で、ビタミン類はあまり含まれていません。ただそれを補えるだけの食物繊維が水溶性、不溶性共に豊富であることが知られています。まず不溶性食物繊維の「リグニン」はコレステロールを減らす働きがあります。近年、発がん物質などの有害物質を体外に排出する機能があることが判っているため、大腸ガンの予防効果が期待されています。

 次に水溶性食物繊維の「イヌリン」は、特にごぼうには多く含まれています。ヒトはこれを分解する酵素を持っておらず、大腸で初めて分解された後、水分を吸収するとゲル状になり、糖質の吸収を抑えます。そして大腸の中をゆっくりと移動することで蠕動運動を活発にし、腸内の善玉菌を増やすことで腸内環境を改善する働きがあります。また、血中脂肪の低減効果、食後の血糖値の上昇抑制効果もあるため、糖尿病の予防に効果があります。

 そして、ごぼうに含まれるポリフェノールの一種である「サポニン」は野菜の中でもトップレベル。身体の酸化を防止する効果や傷を治す効果があり、修復力を高めてくれるそう。悪玉コレステロールを体の外に排出し、血液をサラサラにするといったデトックス効果もこの栄養の働きです。

 他にもカリウムなどのミネラル類が多く含まれているため、体内の毒素を排泄してくれますので、血液が浄化され肌も美しく保たれます。

 ごぼうは調理の際に皮をむくのが一般的に思われていますが、皮にはポリフェノール(サポニン)が含まれているので、たわしでこすり洗いをする程度に留めます。アク抜きのために水につける場合も、せっかくの栄養を逃さないために手短かに行いましょう。

 選ぶ際には全体的なシルエットを見てください。凸凹がなく真っすぐで、先端から根元にかけての太さに差がないものを。太いものは中に「す」と呼ばれる空洞が入っている場合があるので程よい太さのものがおすすめ。ひげ根が細く少ないもののほうが、風味が強くなります。しおれていたり、ひび割れているものは鮮度が落ちている証拠です。実際に触ってハリのあるものが良く、先端の細いほうまでピンとしているものを選びましょう。

 保存方法として泥を付けた状態のまま新聞紙を巻き、冷蔵庫の野菜室や冷暗所に保存すると1ヵ月程度は長持ちします。一方、乾燥と湿気には弱いため十分に気を付けて下さい。

 現代では、多くの日本人は食物繊維が不足気味になっており、1日少しずつでも積極的に取りたい栄養素です。ごぼうが一つあるだけで、様々なおかずが出来ます。旬のゴボウを美味しく味わい、生活習慣病の予防に努めて健康的な身体を目指しましょう。(本誌 五島沙也可)

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食生活の歴史

 日本の各地におけるごぼうは、正月などの儀礼食として関東以北ではきんぴらごぼう、近畿ではたたきごぼうが伝承されてきました。祭りではごぼうがお供え(神饌)になっていたことが近畿地方にごぼう料理の発達を促したのではないだろうかと言われています。煮しめ、きんぴら、たたきなどのごぼう料理は基本的にはハレの日に出されるものだったようです。

 江戸時代になると、庶民の日常食としても食べられるようになりました。1853年(嘉永6年)に完成した喜田川守貞の風俗考証書『守貞漫稿』には、「菜屋」と呼ばれる惣菜屋の記述があり、生アワビやするめ、豆腐などのほか、くわいやレンコン、ごぼうが醤油の煮しめとして売られていました。こうした店は江戸のあちこちにあったそうです。

 ごぼうの歴史をたどることで、古くから親しまれ、食されてきた食材であったことが分かります。地域による歴史や食べ方の違いなど、非常に奥深い野菜だと感じます。

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