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芹沢忍
2021年7月16日 23:12
真夏の暑さを超えた熱の籠もる職場。目の前では煮え立つ鍋が湯気を上げる。中には幾つもの白い繭が、糸を引かれ揺れていた。私は額に浮かぶ汗を拭いながら糸取りに励んでいるところだ。 湯に浮き沈みする繭玉。 糸を引かれて徐々に現われる主。 純白な器からのぞく、 歪で気味の悪い姿形。 お蚕さまの一番醜悪な姿だと思う。 糸を取った後に大量に出る蚕の蛹は、時に工女の間食として供される。口に含む