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【散文】ありがとうさよならオフィーリア

4日前に買ったばかりのガーベラの一本、首のところからがっくりというか、ぐったりというか、ぐんにゃりというか、晴れやかなお顔を真下の水面に向けるようにして曲がってしまった。
その子を取り除けて少し触る。生後1か月の赤ん坊かと思うようなぐらぐらの首をまっすぐに向けても無駄なことを悟る。軸を半分くらい短く切って、水を張った平皿に寝かせると、下を向いて振り乱したようになっていた花びらは、こんもりと恥丘のように盛り上がった中心部から、雄しべやらなにやらまでゆるりと脱力させて浮かび、先程よりも美しかった姿を取り戻した。
ラズベリーから作り物の苺ミルクの色に変化していく花びらの、水の上に放射状に広がった愛らしさといったら、ああ五月の薔薇よ、可愛い乙女、美しいオフィーリア! そうね、まだ四月だしガーベラだしオフィーリアじゃないけどね。ふんわり広がるスカートが水を吸って重くなって透き通って沈んでいくのはもうすぐでしょう、そうでしょう。

にぎやかしのために入れてもらったグリーンの小花も一枝、取り除ける。さすがにオフィーリアの隣に並べるにはあまりにもしなしなと干からびていたので、ありがとう、さよなら、と心で念じながら生ごみの袋に入れる。
あれ、このお花って私の友達だったんだっけとふと思う。
友達か、先生か。
そうね、寂しい私の側に少しの時間でも一緒にいてくれたものね。
私に、前を向いて生きるよう教えてくれたものね。
ありがとう、さよなら。

生ごみの日は火曜日。

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