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宝石エッセイ 入賞しました

フェイバリットストーン様主催の「宝石エッセイ」で入賞しました。
最優秀賞が欲しかったけれど、自分の書いたものに講評がいただけて賞金も貰えるのはうれしい! (サイトでは最優秀賞と優秀賞の講評しかありませんが、受賞連絡時に店長さんからコメントをいただいて、出してよかった!と心から思いました。)

このコンテストは、年に何度も募集されているのでまた応募したいです。
全文掲載します。掲載可能かは確認済です。

アンティークに宿る祈り
 ひやかし半分に入ったアンティーク店で、こんなものに出会うとは。だから神戸という街は困る。
 店内の鏡を覗き込む。眉毛以外ほぼすっぴんの私が着けているネックレスは、分不相応に煌びやかだ。にも関わらず、鎖骨の上にひたりと張り付くネックレスは、デザインといい、サイズといい、間違いなく私によく似合っていた。恐ろしく細かいミル打ちが、透かしの土台の縁をびっちりと囲み、細かな石が4~50個ほどもついていた。
 値札には「1910年代 ドイツ シルバーマーカサイト」とある。世界史は得意科目だった。ドイツは1914年から続く世界大戦に敗北し、市民生活が劣悪を極めていた。さらにはスペイン風邪という感染症がヨーロッパのみならず世界中で大流行し、数千万人が亡くなった混乱の時代だ。
「鉄鉱石と言ってしまうと色気がありませんが、マーカサイトはダイヤの代替品でもありました。黒い石ですので、喪服に合わせることもあったんです」
 店員の言葉が、私の想像を掻き立てる。戦争か感染症かで夫を亡くし、晩年まで喪服で過ごした女性が身に着けていたネックレス。あるいは、生活費の為に手放されたのか。
 量産品とは違う、長さの調節できないこのネックレスが私の首にぴったりと合うのだから、持ち主と私はよく似た体格であるはずだ。彼女が、苦難に遭った人なのか、スペイン風邪という病に打ち勝ったのかは知りようもないけれど、私とよく似た体つきの女性が100年ほど前に愛する人を失い、どのような思いで余生を過ごしたのか、想像は膨らむばかりだった。
 がらがらの電車の窓に映る、目元以外すっぴんの私が着けているネックレスは、顔半分を覆う白いマスクと不釣り合いに煌びやかだ。インフラ系で働く私は、感染症の非常事態宣言下でも職場へ向かう。どうか、大切な人が無事であるように、100年前と同じ辛い思いをする人が少なく済むように。彼女と共に私は祈る。

この宝石エッセイは800文字制限。短いから難なく書けるだろうという気持ちで書き始めて、こんな短い中で状況説明からオチまでつけれるか!と頭を抱える絶妙な文字数だった。2000字くらいが程ほどに書きやすい。(もうひとつ受賞した第12回ヘルスツーリズム大賞は2000字)
しかし今、400字までの締切を2つ持っている。継続を頑張ろう。次の3月までにあと45,000円分賞金が欲しいのである。(金額は買わない理由にならない 参照)

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