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SFラブストーリー【海色の未来】2章(前編・下)−3

過去にある

わたしの未来がはじまる──

穏やかに癒されるSFラブストーリー

☆テキストは動画シナリオの書き起こしです。

ぜひ動画再生していただき、BGMつきでお読みください♪


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ルミ子さんの古道具屋で働くようになって、1週間がたった。

店のパソコンに向かっていると、ルミ子さんに声をかけられる。


「比呂ちゃん。そろそろお茶にしましょう」

「え、お茶ですか?」


それは、今日何度目かのティータイムのお誘いで……。


──ちょっと休憩が多いような……。


お昼ご飯のあとにお茶を淹れてもらってから、2時間もたっていない。


「えっと……わたし結構ですから、ルミ子さんだけ休んでください」

「そんなにがんばらなくていいのよ?」


言いながら、ルミ子さんはお茶の用意をはじめている。


「ルミ子さん、ホントにわたしは……」

「あらっ!?」


ルミ子さんが急に声をあげる。


「わたしうっかりして、茶葉、2人分入れちゃった!」

「はあ……」

──絶対わざとだ……。


どうやら自分だけ休むつもりは、さらさらないらしい。

ルミ子さんはとにかく誰かとお茶をするのが好きで、

訪れるお客さんにもすぐにハーブティーをすすめておしゃべりを楽しむ。


「もったいないから、一緒にお茶しましょう」

「でもですね──」

「ねえねえ、比呂ちゃーん」

──これじゃ仕事にならない……。

「……じゃあ、せめて、このメールに返信するまで待ってください」


ルミ子さんの猫なで声に、結局ギブアップする。


「わかったわ! それならわたしも、あと少しだけ仕事するわね!」

「お願いします」


パソコンに向きなおり、続きの作業を進める。

比呂ちゃん比呂ちゃん、とかわいがってもらい、1日に何度もお菓子付きの休憩タイムもある。

そんな、今までしてきたバイトとは比べようがないほど、気楽な職場ではあるけれど……。


──メール、溜まりすぎ。


ネット店舗の分は自動で決済できるシステムがちゃんと整っている。

それでもあつかっているものが骨董品ということもあり、

買う前に物の状態を問い合わせる人が多い。

その膨大なメールが返信されずに放っておかれていた。


ルミ子さんひとりで店を切り盛りしていたことを考えると、仕方のないことかもしれない。

だけど本当の原因は、ルミ子さんが1通1通の返信に、

あまりに心を込め時間をかけるせいかなとも思う。


──それと、休憩しすぎ……。


とにかく、バイトに入ってなにより先にしなければならなかったのは、

どんどん溜まる新着メールへの返信作業だった。

わたしとルミ子さんでなんとかなりそうな問い合わせにはできる限り答え、

息子さんじゃないとムリなものは、対応の遅れをお詫びするメールを送った。


そんな作業をしている最中──

店の電話が鳴った。


「あっ、出ますね」

「いいわよ、座ってて。わたしが出るから」


ルミ子さんはよいしょと立ちあがり、電話台へ向かった。


そのときのわたしは……

店の中に響き渡る電話の音が

わたしたちの出会いのはじまりだとは

まったく思いもしなかった。





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