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Online PRIDE 2023実施レポート

こんにちは。セプテーニグループnote編集部です。

セプテーニグループでは、日本で初めてとなるLGBTQ+に関する企業等の取り組みの評価指標「PRIDE指標」で6年連続最高位のゴールドを受賞するなど、LGBTQ+に関する活動に積極的に取り組んでいます。

6月は「プライド月間(Pride Month)」と呼ばれ、世界各地でLGBTQ+の権利を啓発する活動やイベントが実施されています。そこでLGBTQ+についての取り組みを積極的に推進するdentsu Japan内のグループ企業 電通デジタル・電通PRコンサルティング・電通北海道との4社合同で、2023年6月にオンラインでイベントを実施しました。

コミュニケーションを軸に企業の課題を解決し、社会に貢献することを目指す私たち。「企業は、LGBTQ+に対する課題に、どう向き合い対応していくのか」 をテーマに、参加者と一緒に考える機会をつくるべく、2日間にわたってオンラインイベントを実施しました。本日のnoteではその模様をレポートします。

1日目 知る・共有する「アライになろう」

初日は合田 文さん(株式会社TIEWA代表取締役、パレットーク編集長)のファシリテートのもと、dentsu Japanで働くレズビアンの当事者であるダイアナさん(電通デジタル)、ゲイの当事者である石渡さん(電通 第3CRP局)のお二人に企業で働く上での課題についてお話しいただきました。
※性的指向について、ご本人に確認の上で記載しております。

課題の一つとしてダイアナさんがお話しされたのがカミングアウトについて。プライベートではオープンにされている一方で、仕事上の付き合いの場合、どのタイミングでどこまでセクシュアリティを周囲に伝えるべきなのかは今も悩むポイントとのこと。

たとえば、あえて伝える必要がないと考えカミングアウトしていない状況で、飲み会などで「彼氏」について話題を振られた時。「実は・・」とカミングアウトするとそれまで嘘をついていたような後ろめたい気持ちになってしまう。

またカミングアウトすることで、セクシュアリティだけが自身のラベルになってしまうことも課題に感じているとのこと。性格や価値観など自分を構成するさまざまな要素があっても「あ、あのレズビアンの子ね!」というラベルになってしまうことを懸念されているそうです。

▲パレットークではジェンダーやセクシュアリティについての実体験がマンガで紹介されています

石渡さんからはコミュニケーションについてお話しいただきました。石渡さんは職場でも周囲にオープンにカミングアウトし、何でも聞いてくださいと伝えているそうです。一方で石渡さんを傷つけたくないという周囲の気遣いから「触れてはいけないのでは?」と恋愛などの話題が避けられコミュニケーションが深まらないことがあるとのこと。セクシュアリティだけがラベルになるのは困るが、それも自分の大切な一部なんですとお話しされる姿が印象的でした。

また一人ひとりが安心して働ける環境をつくるためには、カミングアウトをしていないクローズドな当事者の方々の声を吸い上げることが重要だが、それがとても難しいとのお話もいただきました。

▲合田さん(株式会社TIEWA代表取締役、パレットーク編集長)

ファシリテーターの合田さんからは、「彼氏・彼女」など性別やセクシュアリティを限定した言動によってコミュニケーションに悩む方が一定数いるという事実。またコミュニケーションは一人ひとり距離感も内容も違い、諦めずにお互いにとって心地よい対話を目指すことやクローズドなLGBTQ+の方が安心して自分の意見を伝えることができる仕組みづくりが大事。などのコメントをいただきました。

その後、電通ダイバーシティ・ラボが運営するダイバーシティをテーマにしたWEBマガジン「cococolor」からピックアップされた企業が抱える課題について当事者お二人と合田さんから経験談やコメントをいただき、最後にオンライン聴講者からの質問に回答、1日目は終了しました。


2日目 学ぶ・考える「行動につなげていこう」

2日目の登壇者は井口 理さん(電通PRコンサルティング 執行役員)と安藤 勉さん(電通コーポレートワン 法務オフィス人権啓発部長)です。谷本 有香さん(Forbes JAPAN 執行役員 Web編集長)をファシリテーターにお招きし、LGBTQ+に関するカンヌライオンズの受賞海外作品や国内の注目事例を紐解きながら学び、企業は具体的にどのようなアクションが取れるのかを考えるプログラム構成でした。

最初に谷本さんから、2022年から2023年にかけての国内外でのLGBTQ+に関する動きを網羅的にご紹介いただきました。

その後、2日前にカンヌから帰国したばかりの井口さんからカンヌ受賞作の紹介がスタート。同性愛非犯罪化50年を記念し制作されたノルウェーの郵便サービス「Posten」のクリスマス広告動画や、同性愛行為が違法とされ性的少数者が迫害されているカタールで開催されたFIFAワールドカップ2022においてLGBTQ+の象徴であるレインボーフラッグを掲出できないことを受けて、レインボーの6色をパントンコードに置き換え「色のないレインボーフラッグ」を制作したキャンペーン「#Colors Of Love」など、大きな反響を呼んだ作品を紹介いただきました。

安藤さんからは「日本では『スポーツを見る時くらい人権問題を忘れて楽しもう。いま考えることではない』という声があがりがちだが、こういった広告やキャンペーンにふれると、海外ではネガティブとポジティブの反応がせめぎ合っていることを肌で感じられる」とのコメントがありました。

井口さんからは「こういった広告・キャンペーンの実施には覚悟が必要。企業がどれだけ本気なのか、企業がどんなスタンスをもって発信しているのかを厳しく見られている。他方でこうした発信は、外部だけでなく従業員に対しての強い包括性のメッセージになり、インターナル活動としての価値も高い」とのコメントがありました。

▲井口さん(電通PRコンサルティング 執行役員)

企業スタンスの話の流れから、直近で話題になった、企業の姿勢が現れた海外事例が井口さんから複数紹介されました。それらの事例は、決してポジティブな反応が多数派ではありませんでした。不買運動が起こってしまった事例もあります。

井口さんからは「企業が先進的なメッセージを発信し、それに対してある層からネガティブな反応がある。以前からこのパターンが繰り返されているが、それでも取り組み続けている企業がいる。企業としての長期的な方針・メッセージがあり、それを発信していく覚悟が固まっているからこそ継続するのだろう」「メッセージを発信することで社会に対して議論の場を提供しているという考え方もあるだろう。みんなで議論をしていこうという投げかけだけでもとても価値がある。この先どのように議論が変化していくのか見ていきたい」とコメントがありました。

また安藤さんからは「広告やメッセージの作り手として、この問題を十分に理解していると思い込んでしまうのは非常に危険。ユーモアで演出するにしても、その落とし所を誤ることにつながる。広告やキャンペーンのCMで商品やサービスの訴求をしていくことと、LGBTQ+に関する企業としての考え方を丁寧に説明していくこと、この2つはセットで出していくことが望ましい。その上で、トータルなコミュニケーションで問題に向き合うことが重要」とのコメントがありました。

▲安藤さん(電通コーポレートワン 法務オフィス人権啓発部長)

最後に「広告やPRにできること」として日本国内の事例が井口さんから紹介され、質疑応答を経て2日間のイベントは終了しました。

2日間で約400名の方に参加いただいた本イベント。終了後のアンケートでは、参加者から下記のような声が届きました。

当事者の気持ち、ジャーナリストから見えている視点、それぞれのお話を聞くことができて勉強になった。当事者がカミングアウトするかしないかの100か0ではない、生活しやすい世の中にしないといけないなと思いました

日々社会の動きや声を聞いて感度をあげていかなければならないと感じさせる内容でした。

海外の事例も印象に残ったが、日本でのヘイト関連のニュースも印象に残った。どのようにヘイトに対して対峙していけばいいんだろう、と思っていたが「方針をしっかり議論し、長い目で自分たちが望む未来を作っていくための一歩」と捉えるのが良い、とお話しされていたのも印象に残った。

まずは知るところから、ができるいい機会でした。今まではLGBTQ+が関わる話題が思いがけず議論されること、荒れているように見えること、当事者が傷つくであろうことをマイナスに捉えていました。今回で、議論も含めて前進なのだという見方を得ましたし、大局を見て活動されている方々がいることに希望が持てました。このような機会を定期的に設けてくださるとありがたいです。

2022年からスタートし、2回目の開催となったOnline PRIDE。私自身も多くの学びと気づきを得ることができました。特に印象に残っているのが初日に登壇されたダイアナさんの「社会でLGBTQ+に関する差別的なニュースなどがあり傷つくことがあっても『私が所属しているこの会社は、私がどんなアイデンティティでもウェルカムだ』と思えれば安心できる。当事者がそう思える社内文化をつくることが大切」というお話でした。

組織の文化は一朝一夕にアップデートできるものではありません。だからこそ、従業員全員が自分らしく活躍するためにはインクルーシブな文化が必要で、それは一人ひとりが行動し意識を変えていくことから生まれるということ、そして従業員全員がインクルーシブな文化をつくる当事者であるということを、あらゆるタッチポイントから粘り強く伝えていくことが重要だと感じました。

セプテーニグループは今後も、グループ企業との連携を強め、なめらかな社会へ向けたアクションを継続してまいります。

※登壇者の所属・役職は、イベント実施時点のものです