デジタル広告業界の健全な発展にむけてセプテーニグループが取り組んでいること【後編】
こんにちは。セプテーニグループnote編集部の宮崎です。CSR委員会の事務局を担当しています。
セプテーニグループでは、CSR活動の重点テーマの一つに「デジタル広告業界の健全な発展」を掲げ、活動を推進しています。
デジタル広告業界の健全な発展にむけてセプテーニグループが取り組んでいること【前編】では、デジタルマーケティングに関わりのあるみなさんにお集まりいただき、Septeni Japanの経営理念刷新や、電通さんとの協業によって、デジタル広告業界の健全な発展のためのポリシー「セプテーニグループ 3つの約束」のひとつ、「可能性への挑戦」に対する意欲の高まりについてお話をお伺いしました。
▼前編はこちら
後編では、コミックスマートが公開した「3分でわかるステマ防止マニュアルsupported byWOMJ」に込めた思い、それぞれが語るデジタル広告業界の健全な発展にむけての展望などをお伺いします。どうぞご覧ください!
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岡田さん:
2003年にセプテーニに新卒入社。入社3年目にジョイントベンチャーの立ち上げに参画。セプテーニ帰任後、営業・メディア・クリエイティブ部門などを経て、2018年にコミックスマートの取締役、2019年1月よりグループ執行役員に就任。
大久保さん:
2011年セプテーニに新卒入社。入社以来営業として様々なクライアントを担当し、近年は営業組織であるビジネスプロデュース本部の責任者を務める。社内アワードであるセブンスター賞にて、新人賞・プレイヤー賞、担当するプロジェクトでグループ年間MVPを受賞。
本間さん:
2007年セプテーニに新卒入社。長年運用型広告に携わり、現在はメディア本部でメディア対応・メディアソリューション関連の責任者を務める。社内アワードであるセブンスター賞にてマネージャー賞を受賞。CSR委員会/デジタル広告業界の健全な発展分科会の責任者。
甲斐さん:
2011年にセプテーニに新卒入社。様々な業種のクライアントを営業として担当。社内アワードであるセブンスター賞にてプレイヤー賞、プロジェクト賞を受賞。CSR委員会/デジタル広告業界の健全な発展分科会メンバー。
「3分でわかるステマ防止マニュアル」公開の理由
─ コミックスマートでは先日、「ステルスマーケティング(※1)防止啓発マンガ『3分でわかるステマ防止マニュアルsupported byWOMJ』」をGANMA!で公開していましたね。こちらはどのような経緯で制作したんでしょうか?
※1 広告主がいるにもかかわらず、広告主が明示されない広告や、広告という形態をとらずに行われるマーケティング活動で、主体が明らかにされないもの、本来の広告主とは異なる名称の主体によって行われる広告・マーケティング活動のこと。ステマとも呼ばれる。
岡田さん:
きっかけは、マンガ×SNSの広告ソリューションを商品として拡販していこうと考えたことなんです。どういうソリューションなのかというと、GANMA!に所属するマンガ家さんに企業のPRマンガを制作してもらい、それをSNSで拡散していく、というものです。
マンガとSNS、特にTwitterってすごく相性がいいんですよね。実際そのソリューションをテスト的に販売してみたところ、とても評判が良かったんですよ。じゃあ本格的に取り組んでいこうと決まったんですけど。
このソリューションを販売していく上で、絶対にステマのようなトラブルを起こしてはいけないと考えました。過去にもステマについてはさまざまな事案が世の中で起こっていますが、ステマは、広告主企業、広告代理店、マンガ家など、いろいろな人を巻き込んで、多くの問題を引き起こします。
広告主企業は企業ブランドに傷が付き、代理店は信頼を失い、マンガ家はファンからの信頼を失い、消費者は騙された、という負の体験を負うことになる。誰も何も得をしないんです。
▲3分でわかるステマ防止マニュアルの中でも、ステマがどのようなことを引き起こすのか紹介されています。
岡田さん:
中でも僕たちがいちばん守りたいと思ったのはマンガ家さんです。コミックスマートは、ミッションとして「マンガ家の職業価値を向上させ、子供たちの憧れの職業にする」を掲げています。クリエイター支援にすごく強いこだわりを持っています。
だからこそ、僕たちがお願いした広告案件でステマのようなトラブルが起こり、マンガ家さんが傷つくのは絶対に避けたい。マンガ家のみなさんに対しては、特にそんな思いが強くありました。
─ コミックスマートではRoute M制度を設けるなど、以前からクリエイター支援に積極的でした。
▲Route Mは、マンガ家が安心して創作活動に集中し、その才能をより幅広い領域で発揮できるような機会をつくるための、マンガ家支援プログラムです。
岡田さん:
そうなんです。だからこそこのソリューションの販売にあたっては、社内は当然ですが、マンガ家さんたちへもしっかり啓蒙する必要があると考えたんです。
ただ、マンガ家の方々は、マンガのプロではありますが、マーケティングのプロではありません。しっかりガイドラインに向き合ってもらって、なぜこれを守らなければならないのか、具体的にどのように対応すればいいのかを理解してもらうためには、彼ら彼女らが慣れ親しんだ形でアウトプットしたほうが良いのではないか。それってやっぱりマンガだよねと。そんな経緯でガイドラインのマンガ化プロジェクトがスタートしました。
他人事ではない。誰も当事者になり得る。だからこそ広くいろいろな人に見てほしい。
─ なるほど。制作にあたって、特に注力した点や、苦労した点などありますか?
岡田さん:
ステマについては、世の中で過去にさまざまなトラブルが発生しています。当然、そのトラブルには当事者であるプレイヤーがいるんですが、特定のプレイヤーを攻撃する、攻撃しているように受け取られるというのは絶対に避けたいと考えていました。
この問題は、誰もが起こし得るものだと思うんです。他人事じゃない。広くいろいろな人に見てもらい、関係者全員がちゃんと理解して進めていくべきものです。だからこそ、特定のプレイヤーに矛先が向かないよう、マンガの中の登場人物をすべて動物で描くなど、表現については細部まで配慮しました。
▲登場するのは動物たちです。
岡田さん:
それからガイドラインのマンガ化にあたって注意したポイントは、わかりやすさとオリジナルのバランスです。
マンガって、とっつきづらいものを楽しく伝える力があると思うんです。それってデフォルメしたり自然にストーリーを作ることができ、わかりやすく表現してるからでもあるんですよ。でもガイドラインの啓蒙が目的なので、正しく理解してもらわなくては意味がない。
そこで今回は、マンガで楽しく伝える部分と、絶対に文章として知っておいてほしいガイドラインの肝のところをそのままテキストで表現するという、いわゆるマンガとテキストのハイブリッド型で作っているんです。そのあたりの見せ方の部分はプロジェクトメンバーで議論を重ね、試行錯誤した結果、納得のいくものが出来たと思います。
▲特に重要な部分はテキストで表現されています。
専門団体WOMJの監修、社内プロジェクトなどの声を反映
岡田さん:
社内でプロジェクトを組成して、日々マンガ家さんと向き合う編集担当の意見、広告主さんや代理店さんに向き合う営業担当の意見、外部のPR専門家の意見など、さまざまな角度の意見を反映しました。
また当然、SNSコミュニケーションの専門家であり、ステマ防止ガイドラインを策定された団体さんに内容を確認いただく必要はあると思っていたので、プロジェクトの立ち上がりと共に、WOMマーケティング協議会さん(以下、WOMJ)に相談させてもらいました。WOMJさんとしても、より一層のガイドライン浸透を目指しているとのことで、コミックスマートが制作するマンガを監修いただくことが決まりました。
─ WOMJさんに監修いただいたことで、より広く世の中にこの取り組みを届けられたのではないかと思います。たくさんの反響をいただいていましたよね?
岡田さん:
はい、大手広告主で、Twitterのフォロワーが82万人を超えるSHARPさんや、WOMJの立ち上げにも参加された徳力基彦さんにも紹介いただき、著名な方々の前向きな反応に大きな手応えを感じました。
岡田さん:
コミックスマート社内でも、取り組みに対して前向きな声が多かったのでよかったです。何よりこういったものが出来たことで、意識がより高くなったと感じています。編集担当はマンガ家と、営業担当は顧客や代理店と、お互いにステマについてしっかり理解して進めましょうねというコミュニケーションを取りやすくなっているように思います。
─ ありがとうございます。このマンガをもっといろいろな方に読んでいただくことで、ステマ撲滅に貢献できると良いですね。
デジタル広告業界の健全な発展にむけて、これから取り組みたいこと
─ 最後にデジタル広告業界の健全な発展にむけて、みなさんが今後取り組みたいことを教えて下さい。
大久保さん:
直近で、この業界ではプラットフォームのテクニカルなルール変更が予定されています。例えばiOS14におけるIDFA使用制限(※2)やGoogle ChromeのCookie廃止(※3)などがそれに該当すると思います。
※2 IDFAはiOS端末の個体を識別するもの。企業による広告のターゲティングやその効果測定に利用されている。Apple社はGDPR(一般データ保護規則:General Data Protection Regulation)などの個人データ保護関連法への適用のため、IDFAを使用するにはユーザの明示的な許可が必要になるとアナウンスしている。
※3 cookie(クッキー)とは、ユーザが見ているWebサイトからユーザのスマホやPCの中に保存される情報のこと。サイトを訪れた日時や、訪問回数などが記録されている。Cookieで取得されたデータの使用方法の透明性を求める動きの高まりを受け、2022年までにChromeにおいて広告配信や効果測定に使用されてきたサードパーティCookie(ユーザが訪れたドメイン以外が発行するCookie)を段階的に廃止するとGoogle社がアナウンスしている。
大久保さん:
まずは事実を正しく捉えることが重要な一歩目です。そこから仮説を出し検証をし続ける。更に業界、お客様、サービス単位にチューニングしていく。それを僕たちだけではなく、お客様含め、いろんなパートナーさんと一緒に行っていきたいと考えています。
▲Septeni Japanでは広告計測の大きな変化に向けて、お客様むけのセミナーなども実施しています。
大久保さん:
プラットフォーマーが行うこういう大きな仕様変更って、一般的に脅威として捉えがちなんじゃないかと思うんです。変更を待って後手の対応になってしまったりすることもあるかもしれない。
でも僕は機会として捉えたいんですよね。こういう変化があるから新しいことにチャレンジできると思うんです。今までの仕組みとかルールがあったからそれに従ってたけど、新しいことをみんなで作り出すチャンスだと。今回の大きな変化を機会として捉え、これまで以上に三方良しの仕組みを作りたいと考えています。
本間さん:
デジタル広告業界の健全な発展について、僕は3つの立場から貢献したいと思っています。1つ目はメディアワークについて。媒体さんとの向き合いを担当しているので、媒体さんという重要なパートナーと、僕たちが主体となって業界の健全化にむけた議論をしていきたいなと思っています。
▲メディアさんとはメニュー開発をご一緒することも。
本間さん:
2つ目が業界団体での活動です。今年は業界にとって、JICDAQ(※4)設立という象徴的な変化がある年。JIAAでの委員会活動等、デジタル広告業界の健全性に関するスタンダード作りに触れる機会をいただいているので、その経験を活かし、しっかり業界に浸透するよう、主体的にアクションとっていきたいです。
※4JICDAQ:一般社団法人デジタル広告品質認証機構。デジタル広告の品質を第三者認証する機構。
最後の1つは、このCSR委員会のメンバーとして、デジタル広告業界の健全な発展に関する取り組みを社内で推進する立場です。業界の立場、メディアワークの立場を踏まえた上で、セプテーニグループの中でしっかり発信、啓蒙していきたいですね。外の情報をセプテーニに浸透しやすいように翻訳して、文化と言えるくらいまで浸透できるよう、活動していきたいと思います。
甲斐さん:
セプテーニがこれからもステークホルダーのみなさんに選ばれるパートナーとなるべく、デジタル広告業界の健全な発展に向けて活動を続けていきたいです。この活動は、ある意味セプテーニという会社がマーケットの中でどれだけファンを作れるかのチャレンジなのかもしれないと思っているんですよ。
いまは委員会のメンバーとして全社を巻き込んでいく立場ですが、理想はデジタルマーケティングに関わる全員が、僕たちと同じくらいの課題意識と推進意欲を持てることかなと思いますので、もっともっと当たり前に、デジタル広告業界の健全な発展への取り組みを実行できる会社になれるように、一翼を担っていきたいと思います。
岡田さん:
当たり前の話ですけど、デジタルマーケティングはメディア環境全体、広告環境全体の中でより大きな存在になってきていて、注目度が以前より上がってきています。だからこそ適正にやっていくことを一層求められているんだとも思います。
▲電通さん発表の「2020年 日本の広告費」。インターネット広告費はマスコミ四媒体広告費にほど近い2.2兆円、広告費全体の36%を占める市場になったと発表がありました。
岡田さん:
リーディングカンパニーとして、電通さんと一緒に業界を牽引していく立場を求められているので、ルールを守るだけではなくて、新たなルールを作っていく、今無いものをしっかり整備していくことが重要だと捉えています。セプテーニって最新の動向に対してアンテナを高く張って、いちはやく導入するのが得意な会社だと思うので、そのあたりの強みを活かしていきたいですよね。
あと個人的には、包括的なマーケティングをクライアントに提供する上で、もっとスピード感をもってチャレンジすべき領域があると思っているので、グループ執行役員として提言、サポートしていきたいと思います。
─ みなさま、本日はありがとうございました!
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* 編集後記 *
言うは易く行うは難し。デジタル広告業界の健全な発展への取り組みは、まさにそんな活動ではないでしょうか。
インタビュー内でもコメントがあった通り、今年はプラットフォーマーの仕様変更やJICDAQの設立など、デジタル広告業界の健全な発展に関する大きな動きが複数予定されています。
この流れを追い風に、社外のパートナーのみなさんとも協力しながら、さまざまなステークホルダーにとって三方良しの仕組みを創り、この業界をより魅力的で豊かなものにしていきたい。そして、そのための活動を一歩ずつ推進していきたいと、あらためて感じました。
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