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ひとりひとりのアントレプレナーシップで社会課題解決に貢献を ~グラミン日本 プロボノ活動インタビュー~

こんにちは。セプテーニグループnote編集部です。

セプテーニグループでは、「貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会の実現」を目指し活動している一般社団法人グラミン日本の取り組みに賛同し、2019年から賛助会員として人的協力等を行っています。

今回のインタビューでは、グラミン日本理事長の百野さんにグラミン日本の事業内容や日本における貧困課題について、そしてグラミン日本にプロボノとして参加している菅原さんと倉友さんに、どのような思いをもって活動に参加されたのかをお聞きしていきます。どうぞご覧ください!


百野 公裕さん:
グラミン日本 理事長。米国公認会計士。外資系コンサルティングファーム PwC、 プロティビティ(旧アーサーアンダーセン)で活躍し、マネージング・ディレクターとして勤務する傍ら、2017年8月よりグラミン日本準備機構の設立メンバー(プロボノ)として、グラミン日本の設立準備に参画。2018年9月に前職を退職し、グラミン日本理事/COOに就任。2019年10月より現職。

菅原さん:
2011年セプテーニグループ入社。アカウントマネジメント職として通信・金融・美容・健康食品・スマホアプリなど幅広い業種を担当。
また営業部門のマネジメントを通じて多数の活躍人材を輩出し、2020年より営業組織の評価設計・人材育成領域の責任者を務める。現在はクリエイティブ本部で同領域の責任者を務め、クリエイティブ人材育成環境を構築中。

倉友さん:
2015年 新卒でSepteni Japan株式会社に入社。入社から5年半は、広告運用コンサルタントとして、ディスプレイ広告、SNS広告、SEMなど様々な媒体の運用に従事。2019年より、部門横断組織にて、研修プログラムの企画・運営や運用業務の標準化施策のプロジェクトマネージャーを務める。現在は、事業企画本部 人材開発部の責任者として、新入社員や既存社員の職務別の教育、ナレッジマネジメントを行っている。

グラミン日本と貧困問題


― はじめに、グラミン日本について教えてください。

百野さん:
グラミン銀行はもともとバングラデシュでスタートしたマイクロファイナンス機関です。貧困撲滅を目的に、特に金融格差という観点で女性にフォーカスしています。通常の金融機関とは逆のアプローチをとっていて、グラミンから村やコミュニティに出向いて、信用力はないけれど意欲のある女性に対して支援をしています。

また、お金を融資するだけではなく、彼女たちへの金融教育とフォローアップをしています。貧困撲滅、そして信用力のない人に融資しているにも関わらず貸倒率が0.2%を切っている点が評価されて、グラミン銀行は2006年にノーベル平和賞を受賞しました。

世界40か国で事業を展開しており、日本は2018年9月に活動がスタートしました。グラミン日本は、通常の貸金業登録とは別に信用情報を照会しなくても融資できる特別なライセンスを持っているので、稼いだ実績がない方、多重債務やクレジットヒストリーがない方にも融資できるのが特徴です。

もう一つの大きな特徴は、ユヌス・ソーシャル・ビジネス7原則に沿って活動している点です。ビジネスの力で社会課題を解決することを世界で初めて提唱しました。原則の一丁目一番地に「ユヌス・ソーシャル・ビジネスの目的は、利益の最大化ではなく、貧困、教育、環境等の社会問題を解決すること。」を掲げ、様々な企業と協業して貧困問題の解決に努めています。

また先日の東京オリンピックでオリンピックローレルを受賞しましたが、ソーシャルビジネスをスポーツの分野で活かせるよう、パリ開催に向けて動いています。

オリンピックローレルを受賞したムハメド・ユヌス博士

― グラミン日本はどのように日本の貧困問題に向き合っているのでしょうか?

百野さん:
SDGsでも「貧困」が課題の1つ目として挙げられていますが、グラミン日本は「貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会」の実現を目指して、日本における貧困問題を解決するべく活動しています。

年収122万円以下で生活している人は2000万人いると言われていますが(※)、グラミン日本では「相対的貧困層」をなくすことを目標にしています。

(※)出典:厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査の概況」 熊本を除く

一般的に「貧困」という言葉からは、発展途上国で生活している一日に1.95ドル以下で生活している絶対的貧困層を思い浮かべますが、日本においては格差が問題となっています。日本では福祉策はいろいろありますが、支援が必要な方のうち18.5%の方にしか福祉サービスが届いていない現状がある(※)ので、グラミン日本では支援が届かない方に対してもセーフティネットをかけるべく動いています。

(※)出典:厚生労働省(2016)「平成28年全国ひとり親世帯等調査」、OECD(2019)”Society at a Glance 2019”

また、コロナ禍において非正規雇用の方々が解雇されているということもあり、相対的貧困層がさらに増えることが予想されます。

そのなかで女性に焦点を当ててみると、相対的貧困層の二人に一人は母子家庭が含まれています。貧困は次世代に連鎖する傾向があり、その連鎖を断ち切りたいという思いから、女性の中でも特にシングルマザー支援に注力しています。

▼シングルマザーの貧困についてはこちらもご覧ください!

貧困問題には、根本的な3つの原因があると考えています。

一つ目は「壁」です。困窮者の方々は孤立し孤独になっているので、情報を得られず自ら一歩を踏み出すことができない、助けを求めにくいケースが多いです。

二つ目に「支援が分断されている」ことが挙げられます。行政やソーシャルセクターごとに支援をしているものの、必ずしもゴールが一体化されていないという現状があり、当事者にとっては支援が分断されている状態になっています。

三つ目は、就労機会が限定されていること。コロナ禍では、子育て期間が長く離職期間が長い人や、仕事が頻繁に変わるジョブホッパーとして捉えられることがある非正規雇用で働く人は、就職が決まりづらい傾向にあります。

グラミン日本はそういった状況下で、マイクロファイナンスによる支援や雇用機会の創出によって、ウーマンエンパワーメントという形で経済的自立を支援しています。

グラミン日本×セプテーニグループ

― なぜセプテーニグループにプロボノを要請いただいたのでしょうか?

百野さん:
貧困層の方たちに情報が届いていないことを課題認識しており、SNSを活用して情報を届けていきたいと考えたからです。良いサービスをつくっても情報が届かなければ意味がない。デジタルマーケティングの力で当事者の方たちに情報を届けるため、セプテーニグループに協力を依頼し、菅原さんにプロジェクトマネージャーとして参加いただいています。

また、マイクロファイナンスのほかに、ランサーズ株式会社、一般社団法人日本シングルマザー支援協会と共にシングルマザー就労支援プログラムをスタートしました。コロナ禍での雇用安定を目指し、デジタルスキルを身に着けてもらい、雇用につなげるプログラムです。

倉友さんにはシングルマザーの方に寄り添ったトレーニングプログラムの企画やメンタリングを担当してもらいました。グラミン日本、シングルマザー支援協会、ランサーズそれぞれの視点を理解した上でプロジェクトマネジメントを遂行してくれました。

セプテーニグループの方々は、実行力が非常に強いと感じています。議論だけでは終わらせず、実行と成長の役割を担ってくれました。

― では、実際にプロボノとしてグラミン日本のプロジェクトに参加されたお二方にお話を伺いたいと思います。菅原さんと倉友さんはなぜプロボノに志願したのでしょうか?

菅原さん:
グラミンやユヌスさんのソーシャルビジネスに関心があり、当事者として関与したいと考えたことがきっかけです。当時は日本における貧困問題や相対的貧困について深く理解できていなかったこともあり、日本においてマイクロファイナンスがどのようにワークするのか、マーケティング視点で学びたいという思いもありました。

倉友さん:
社内のプロボノ説明会に参加し、社内のプロボノ参加者の体験談を聞いたことがきっかけで興味を持ちました。大学時代にボランティア活動をしていたこと、リモートワークになり社外の方との関わりを持ちづらくなったことから、社外の方と協力しながら何か新しいことにチャレンジしたいという気持ちが強くなったこともプロボノに参加した大きな理由です。

いざプロボノとしてグラミンの活動に参加してみたら、想像していたよりもコミットメントを求められ驚きました(笑)。私自身、何かの専門家というわけではなかったのですが、業務でプロジェクトマネージャーを務めていた経験や、新入社員向け研修を企画していた経験を活かして、プロボノとして貢献したいと考えました。

また、シングルマザー就労支援プログラムのキックオフで、当事者の方がどのような思いでプログラムに参加したのかを涙しながら語っている映像を見たことで、しっかりやりきりたいという気持ちが強くなりました。

― 実際にどのような取り組みをされていたのでしょうか?

菅原さん:
デジタルマーケティング、特にSNS施策やウェブサイト構築と、他企業とのアライアンスを責任者として担っていました。生活に困窮している方がやっとの思いでたどり着いたウェブサイトが悪質なサイトだった、ということがないように、当事者の方が情報を探したときに、グラミン日本の就労起業サポートや金融教育に真っ先にアクセスいただけるようにコミュニケーション設計などを行っていました。

▼グラミン日本公式noteも菅原さんのチームが中心となり立ち上げています。

百野さん:
私が持つ構想を菅原さんに伝えると、具体的なタスクに落とし込みスケジュールを引いて、実行までこぎつけてくれる。菅原さんの実行力には本当に助けられました。

菅原さん:
普段業務で行っているSNSマーケティングとは違う課題が出てくることもあって、なかなか最初からスムーズにはいかなかったかもしれません。しかし他の企業プロボノの方など、いろいろな支援者の方の力をお借りしたり、セプテーニグループで培ったノウハウを活用したりしながら進めてきました。

─ 普段の業務とは違う点があったとのことですが、そんな中でプロマネとしてプロジェクトを前進させるために何か気をつけたことはありますか?

菅原さん:
デジタルマーケティングも他企業とのアライアンスでも、コミュニケーションにはかなり気をつけました。プロジェクトでは、グラミン日本や他の企業プロボノ、受益者の方々など、本当に様々なステークホルダーと関わります。プロジェクトがスムーズに進行するように、そして受益者の方にメッセージがしっかり届くように、それぞれにあったコミュニケーションを取ることを意識していました。

特に受益者であるシングルマザーのみなさんとのコミュニケーションは、寄り添うようなメッセージになるよう気を配りました。社内のメンバーとのコミュニケーションとも、普段の業務で携わっているダイレクトレスポンスやブランディングのクリエイティブで使うメッセージとも全然違いましたね。

百野さん:
菅原さんに統括してもらったプロジェクトは学生のボランティアスタッフも多かったんですが、彼らを気遣いながらしっかりと巻き込んでくれたことは非常に素晴らしいと感じています。

なぜ継続的に学生ボランティアが参加してくれているのかを考えてみましたが、ひとえに菅原さんのフィードバックの早さと、温かいコミュニケーションのおかげなんだと思います。言葉遣いひとつとっても、学生の目線や立場に立って考えているのだろうと感じています。私は使わないような、アゲアゲな言葉をたくさん使っていましたね(笑)

菅原さん:
アゲアゲという意識はなかったのですが(笑)、会社のコミュニケーションとは変えて、プライベートに近い形で、学生がコミュニケーションをとりやすいようにしていました。それからアクションに対して、なるべくすぐにレスポンスをして、感謝とともにポジティブにフィードバックするように心がけていました。

─ ありがとうございます。倉友さんはどのような取り組みをされたのですか?

倉友さん:
主に二つの役割を担いました。ひとつはシングルマザー向けの就労プログラムの立ち上げです。シングルマザーの方が限られた時間でスキルを習得し、ライターとして自身で生活できるようにするという目的にむけて、そのゴールに対して必要なスキルや知識を洗い出してカリキュラムを組みました。その後それぞれのカリキュラムに対して必要なものをチームで準備し、私はその進行・調整を担当しました。二つ目の役割は講師として、実際に作ったカリキュラムに沿って授業を行いました。

─ さきほど想像以上にコミットを求められてびっくりしたというお話がありましたが、他になにか壁を感じたことはありますか?

倉友さん:
はじめて会った方たちと、チームとしてひとつのプロジェクトを進行、しかもオンラインだったので、とにかくチーミングやファシリテーションが難しかったです。スキル、モチベーションの違い、時間やリソースの制約があるなかで、前提条件が異なると議論が進まなかったり、お互いのことを良く知らないと仕事を振れずお見合いになってしまったり。

私自身、途中からプロジェクトに加入したので、周りの方は私が何をできるのか知らないし、私も周りの方がどんなスキルをもっているのかわからない。お互いの信頼関係をつくり、うまく役割分担をするところからのスタートで、試行錯誤しながら取り組みました。

とにかくコミュニケーションの量をとることが大切だと感じたので、私自身が分からないことをすぐにまわりの方に確認したり、プロジェクトメンバーの方が不安そうな点は一緒に考えさせていただいたり、お互いの信頼貯金を増やしていくことを意識していました。

百野さん:
いまお話しいただいたように、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションも非常に丁寧でしたが、倉友さんはシングルマザーの方々とのコミュニケーションも的確で素晴らしかったですね。授業のコンテンツや言葉遣い、間の作り方が非常に良かったと感じています。企業で働いていると、企業で使っている用語や前提条件で話してしまいがちなんです。でも倉友さんはシングルマザーの方の視点に立って進行してくださいました。これはとても重要だけど、なかなかできないポイントです。

プロボノで得られた経験

― お二人とも非常に主体的にプロボノ活動をされている印象を受けました。使命感に加えて、何か得るものがあったから活動にコミットできたのかなと推測したのですが、プロボノ活動を通じてどのようなことが得られたんでしょうか?

菅原さん:
コミュニケーションやクリエイティブ表現に、これまで以上に気を回せるようになったことはひとつの収穫でした。また自身のキャリアチェンジをした際に、コンサルティングファーム出身の百野さんに戦略立案についてレクチャーいただいたんです。社内で企画提案する際に非常に参考になり、セプテーニグループに対してもそんな形で還元することができたと思います。

それから自分自身、ゲームチェンジのポテンシャルを秘めた事業にとても興味があるんです。グラミンが実践しているソーシャルビジネスはいずれ資本主義と対をなす経済システムになるのではと考えるようになり、非常にワクワクしながら取り組めているのがコミットのポイントかもしれません。この観点でみると、足元の業務に還元できることはもちろんたくさんありますが、それだけでなく、長期的には社会の大きな変化への適応にも通じるし、自分自身の価値向上につながってくると感じています。

百野さんと、評価経済やDAO構想など世の中のこれからの在り方についてセッションすることも非常に楽しく有意義な時間で、今後も継続的に活動したいと思っています。

─ ありがとうございます。倉友さんはいかがですか?

倉友さん:
第三者からのフィードバックを通じて自分の得意なことが分かったこと、逆にまだまだ課題がある点に気づくことができたこと、でしょうか。百野さんにフィードバックいただいた通り、プログラムの中身や進行についてご評価いただき自信にもつながりましたが、実際のプロジェクトのファシリテーションについては後手に回ることが多かったので、意識してブラッシュアップしていきたいと思っています。社内のコミュニティではできると感じていることも、どんな場所でも通用するように昇華できるようスキルを磨きたいと感じました。

もうひとつは、直に受益者の方と接することができた点です。私の業務は社内向けが主なので、いろいろな方の人生の転機に接することってあまりないんですよね。その中でこうやって手触り感のある体験ができたことは、自らの視点の多様性につながったと感じています。これから様々な方と関わる中で活かしていきたいです。

― ありがとうございます。では最後にグラミン日本としての今後の展望を教えてください。また2022年もセプテーニグループからプロボノを募集する予定なのですが、グラミン日本として今後セプテーニグループに期待したいことはどのようなことでしょうか?

百野さん:
グラミン日本を設立して3年が経ち基盤ができてきたので、これを発展的に全国に展開していきたいと考えています。日本はコロナ禍で貧困が広がり非常に厳しい状況なので、困窮されている方々にしっかりリーチしてサービスを提供し、自立につなげる流れを作っていきたいですね。

その中でセプテーニグループのみなさんには引き続き、シングルマザー支援のような現場に近いところ、そしてデジタルマーケティングの面でサポートをお願いしたいと思っています。

セプテーニグループは若い方が多いですよね。最近の若い方は社会課題にすごく敏感な方が多いんです。グラミン日本を通じて社会課題を肌で感じてほしいと思います。そしてそういった方々の力を借りて、セプテーニ以外の会社にも取り組みを広げていきたいですね。

セプテーニのカルチャーは、やや保守的な面もあるものの(笑)、実行する能力がとても強く、非常に頼りにしています。

─ ちなみにプロボノのような活動は瞬間的にパフォーマンスを出すのは比較的容易だと思う一方で、成果を出し続ける難易度は非常に高いと感じます。プロボノにチャレンジしたいと考える方に向けて、このあたりのアドバイスをいただけると嬉しいです。

百野さん:
自分ができることとできないことを知ることが大切です。苦手なことを苦手だと周囲にしっかり伝え、相手をリスペクトしながら役割分担して進める。当たり前のことですが、なかなかできないんですよね。

「貧困」という大きな課題に対してのチャレンジだからこそ、自分だけでできることは限られます。自分ができないことを周囲に開示して、そこをカバーしてくれる人と協力しながら進めていく。そんな考え方でぜひ参画いただきたいですね。お待ちしてます。

─ みなさま、ありがとうございました!


**編集後記**

セプテーニグループのミッションは「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」です。プロボノ活動をされているお二人が、グループで培った知識やスキルを活かして日本の貧困問題の解決に貢献するべく、まさに「アントレプレナーシップ」を発揮しながら活動してくださっていることがインタビューを通じて伝わってきました。これからセプテーニグループのプロボノメンバーたちが、どのように活躍し、世の中をエンパワーしていくのかとても楽しみです!

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