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長期投資家からみたセプテーニグループ【前編】

こんにちは。セプテーニグループnote編集部の宮崎です。

企業のさまざまな取り組みや、そこから生まれる社会への提供価値、また、強みや今後のビジョンなど、企業の価値を多面的に紹介する統合報告書。先日セプテーニグループでは、統合報告書の2020年版をオンラインで公開いたしました。

そこでこの度、経営企画部の部長で、統合報告書制作プロジェクト責任者の呉さんが、あすかコーポレイトアドバイザリー株式会社の代表取締役COO田中喜博さんに、長期目線で企業価値を評価する際のポイントや当社の統合報告書2020についての感想などをインタビューしました。今回のnoteではそのインタビュー記事をお届けします。ぜひご覧ください。

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あすか田中さんプロフィール

あすかコーポレイトアドバイザリー 代表取締役COO 田中 喜博氏

日本債券信用銀行で上場株運用に携わった後、ジャフコにて事業投資・企業価値向上を経験。ユアサエレクトロニクス、キッチンハウス、ヴィクトリア、ガソニックス等の社外取締役・社外監査役を経験。モルガンスタンレー証券会社で中小型企業調査に従事した後、あすかグループに参画。大阪外語大学アラビア語学科卒。ペンシルバニア大学ウオートン校経営学修士(MBA)。

呉くんプロフィール写真

インタビュアー:セプテーニ・ホールディングス 経営企画部 部長 呉 鼎

2010年セプテーニに新卒入社と同時に子会社に配属。2011年セプテーニ・ホールディングスに転籍。経営企画課で投資・アライアンス、中期経営計画策定等を担当。2017年からIR課も管掌、現在は経営企画部責任者として様々なステークホルダーと関わりながらグループの企業価値向上に向け奮闘中。


企業の応援隊として、企業のためになることをやっていきたい

─ 本日はお時間をいただきありがとうございます。当社にとっては3回目となる統合報告書を先日発行しました。1回目、2回目と、いろいろな関係者にフィードバックをいただき内容のブラッシュアップにつとめてきました。

今回は3回目ということもあり、より充実したコンテンツに仕上がったと思っています。一方で、統合報告書を制作する上で最大のターゲットと考えている投資家のみなさんに、この統合報告書が届いているのか、そして適切なコンテンツが用意できているのかなど、資本市場の方の声をぜひお伺いしたく、このような機会をいただきました。

ではさっそくですが、田中さんとは普段IRの現場で四半期ごとに対話をさせていただいていますが、このインタビューの読者は資本市場に馴染みのない人も多いと思うので、まずは御社について簡単にご紹介をお願いできますか?

当社は、上場株への投資を行う投資顧問、ファンドを運営している会社だと考えていただければよいかと思います。TOPIXや日経平均株価などと連動するような形でたくさんの会社に投資をする方もいますが、私たちは現在、15~20社に投資をしています。

日本の上場企業は3,800社くらいあるんですが、その中で十数社だけを選んで投資をさせてもらうという、厳選投資をしています。

なんでそういう投資の仕方をしているかというと、理由は2つありまして。1つ目が、いい会社を選んで、いい投資をしたいということなんです。

私たちは投資を職業として行っていますので、後ろに企業年金さん等、お金を預けてくださっている顧客がいます。日本の株って、良いときもあれば悪いときもあるんですけど、選びに選びぬいた本当に競争力がある会社に投資をすれば、それは長期的に見れば必ず、その方たちのためにもなるなと。

前編写真①あすかCAサイトキャプチャ

▲あすかコーポレイトアドバイザリーのコーポレートサイトでは、これらの考えが「哲学」として紹介されています。

2つ目は、投資をさせてもらっている会社に伸びていってほしい、それをサポートするような投資をしたいと思っている、というところですね。

金融投資行為として、切った張ったのような投資をやるというよりも、厳しいことを言うこともありますが、基本的には企業の応援隊として、企業のためになることをやっていきたい。そういう意味ではたくさん投資はできないんですよ。どうしても限られた数の企業に投資をさせてもらうことになる。セプテーニさんはその中の一つということです。

セプテーニグループに投資している理由

─ 十数社だったんですね。それは初めて知りました、ありがとうございます。その十数社の中に当社を含めていただいたことは光栄ですが、投資判断された理由はどのあたりなのでしょうか?

セプテーニさんは、独自成長できる会社だなと。きちんとした長期の成長目線をもって、それに対して努力を続けていて、その中で持っている競争力が変わらなければ、長期的には株価って上がっていくと思うんです。そういう意味で、独自性をすごく持っているなと私は思いました。

あと同業でもすごく多様化している企業さんもあるんですが、セプテーニさんはある意味デジタルマーケティング事業とメディアプラットフォーム事業に特化しているので、世の中の何にかけるんだ、というのが明確に見えたというところはありますね。

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長期投資家は何を見て投資判断をするのか

─ 長期投資する企業を選ぶ、もしくは選んだ企業の実態を分析される際に、具体的にどういったものを見ていて、どういった視点で分析されているのかお伺いしていいですか?企業が発信しているIR開示物をはじめ、いろいろなレポートがあると思うんですが。

法定開示されている資料は当然全部読みますし、IR資料も読みます。IR資料は企業ごとの個性がすごく出ますね。あとは経営者の方がメディアで発言されている内容、定性情報みたいなものも重要視します。

足元の数字を確認することもすごく大切ですけど、もう少し長い視点で企業が何を目指していて、それに対してどういう結果がついてきているのか、ないしはついてきていないのかをチェックするのはとても大事なので、数字とあわせて定性情報を知りたいと考えています。あらゆるテキスト情報を読み込んで、開示情報との一致性を見ていたりします。

統合報告書については、正直、以前はそんなに見てなかったんですよ。なぜかというと、我々は日本を代表するような超大手企業に投資をするのではなく、まだまだ大きくなる余地をもっている規模の会社に投資させてもらうので、現実的に統合報告書を作っている会社がそんなに多くなかったというのがあるんですね。

それからごく初期の頃については、財務数値が好ましくない会社が、財務数値以外のところを見てほしいと、少し自己弁護的に使う例があって、読んでもあまり得るところがないのかなと思っていたのが正直な部分です。

ただここのところ各社が発行する統合報告書の質はすごく良くなってきてますし、長期投資をする上でもすごく役に立つ情報が入ってくるようになったと思ってますので、最近は読み始めています。

─ なるほど。当社グループ代表の佐藤はあまりメディアに出るタイプではないので、資本市場の方からすると決算説明会や投資家・アナリストインタビューなどの場でしか彼の発言を目にすることはないのかなと思っています。

一方で長期投資されている機関投資家さんは経営者のメッセージを重視するとは聞いていたので、そういう観点では統合報告書でいちばん重視しているのが佐藤のトップメッセージなんです。実は毎年いちばん力をかけています。今のお話をお伺いして、ここは今後もしっかり打ち出していきたいと感じました。

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お付き合いしてて思うんですけど、セプテーニさんって、すごい真面目ですよね(笑)。あえて言うと良い面と、その裏面もあって。良くないってことはないんですけど。すごく堅いというか堅実なところがあって、それは本当に特徴だと思います。好対照の企業さんもいますので面白いですよね。良い悪いじゃなくて、企業の色が出ています。

─ ありがとうございます。言い方はさまざまですが、似たようなことをよく言われますね。自分たちもそうなのかなと認識しています。それを企業価値に出せるといいなと。

統合報告書とは、そもそも別に存在していたものをあえてリンクさせていくもの

─ さて。最近は統合報告書を読んでいるとのことですが、そもそも統合報告書はどのようなものだと考えてらっしゃいますか?

統合報告書って、その名の通り、本来別にあったものを統合するという役割が非常に大きいと思うんですよね。

つくづく思うんですけど、人間ってお互いに完全にわかりあうのって難しいと思うんです。特に上場企業と投資家って、同じものを見て、同じ数字を見ていたとしても、全然違うことを思っていることがある。すごく悪意をもって見えてしまうこともあるでしょうし、いろんなことがあると思うんです。

実はマネジメント層と社員の方もそうなのではないかと思うんですけど、投資家と企業って基本的にはわかりあえていないって思ったほうがいいなと。わかりあえないっていう大前提で考えた時に、考えをきちんとまとめて定期的にアップデートしていくのは、すごくいいことじゃないかなと思うんです。

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それって私にとっては、従来であればインタビューや取材や記事情報を集めて自分の中で構築していたものなんですよね。統合報告書は、そうやって押さえるべき点、重要なところがまとめられた資料のような気がします。

そういう意味では財務と非財務の統合でもあると思いますし、ひょっとすると短期のバリューと長期のバリューという時間軸の統合でもあるかもしれません。それから企業哲学やビジネスモデルや存在意義などコアな内部に秘めているものを、外と統合するものであったりするとも思います。

そもそも別に存在していたものをあえてリンクさせていく。統合報告書はそんな存在のような気がして、とても興味深いですね。

─ なるほど。ちなみに田中さんからみて、当社が参考にすべき統合報告書ってありますか?

いろいろな企業さんの報告書を読みながら考えたんですが、正直ないんですよね。統合報告書のアワードを受賞される企業の報告書は当然素晴らしいですし、読んでいてとても面白いんですが、セプテーニさんのような成長企業にとっては、そこが正解ではないような気がするんです。

でも考え方として参考にされると良いのは、芯の通った報告書ですね。アワードを受賞している企業が作っている良い報告書って、一本筋が通ってるんですよ。

▲一般社団法人WICIジャパン主催の「統合報告優良企業賞」や、日本経済新聞社主催の「日経アニュアルリポートアウォード」などが、統合報告書のアワードです。

コアバリューやコアな部分、自分たちのありたい姿や実現したい姿みたいなものに対して、時間軸であったり、実業という切り口であったり、すごく有機的に組み合わせて話しているなと。一本ずしんと芯が通っていて、それを軸にどういう会社なのか、長期には何を目指していて、そのために短期的には何をやっていて、それが今はどういう状況なのか、うまくいってるのかうまくいっていないのか、ここからどうしていくのか、みたいな内容が全て結びついているんです。

すごく腹落ちしますし、読み手としても外部の人間としても、その思いを共有できる感じがするんですよね。もちろんそういう会社さんってリソースも予算も豊富にあるからそのレベル感で作れる、ということなのかもしれませんけど。

統合報告書から見えるセプテーニグループの特徴

─ 社内の統合報告書のプロジェクトチームの中でも、そういった企業さんの報告書についてはよく話題にあがります。

一方で、おっしゃっていただいた通り、いま我々がそこを目指すべきかというと、ちょっと違うと思っているんですよね。テクニカルな面で考えても、独自性を出すという意味でも。ベタープラクティスとして参考にしつつ、自分たちなりのものを作っていこうと思っています。

そうですね。ただ真似するのは全然違うと思いますね。

今年の統合報告書、セプテーニさんの特徴で面白いなと思うところがいくつかあるんですけど、やっぱり人をすごく重視している会社なんだなと思いましたね。人が語っているコンテンツも多いですし、人材について語られている内容も多い。傍から見るとテック方面に傾倒しているようにも見えるんですが、泥臭いっていうか、人間臭さみたいなところが垣間見れるというか。

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統合報告書2020では、グループ各社のリーダーへのインタビューや、役員と社外取締役の人材に関する対談を掲載しています。

─ すごくしっくりきますね。セプテーニグループはインターネット産業に軸足を置いてどんどん新しいことをやっていきたいと思っていますが、設立してから30年の間、根幹となる部分はずっと大事にしてきた会社なんです。今でも泥臭さみたいなところはけっこうありますし、むしろ良いところなのかなと思いながらやってますね。

オフィスも綺麗でスマートな方も多いんですけど、そういうのってこういう統合報告書があるからわかるところかもしれないですよね。

それから特徴の話に戻りますけど、セプテーニさんの統合報告書、今年から取締役のマトリックスを載せてましたよね。すごく面白いと思いました。読み手としてわかりたい「こういう会社なんだ」っていうのを、企業としてもわかってほしいと思っていることが伝わります。

あれは綺麗なスライドをたくさん掲載するよりも、すごく雄弁で、経営がどちらを向いているのか、何を見ているのかがすごくわかる気がします。ああいうコンテンツをたくさん読みたいですね。

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▲当社経営チームのパーソナリティマトリクス

─ 企画した甲斐がありました、ありがとうございます。

コーポレートガバナンス・コードの改訂もあって、いろいろな企業さんが役員のスキルマトリックスを招集通知等に掲載するケースは今後増えていくと思うんですよね。そう考えた時に、自分たちらしい形にできないかという議論が社内でありまして。近年力を入れているAI人事に即した形でアウトプットすることになりました。

セプテーニグループではAI型の人事システムをはじめとした人材マネジメントにおいて株式会社ヒューマンロジック研究所が提供する「FFS理論」を採用しています。テストを受けるとわかる個性などを収集・分析し、採用や配置・育成に活かして、人的資産の生産性を高め業績を高めるという取り組みを従業員向けに行っているんですが、今回同じテストを新任の方含め取締役会メンバーにも受験してもらったんです。その結果があのマトリックスなんですよ。自分たちなりの独自色を打ち出せてよかったなと思います。

定性情報をもとに人間が考えたんじゃないんですね。面白いですね。

そこまでやるのであれば、例えば取締役が一年間を振り返って、自分はどんなことをやって、課題はこうだと思っているというレビューを行い、一年後にまた同じような内容を行う、なんてことができたら、すごくおもしろいガバナンスになる気がしますね。

取締役会でどういう議論がなされているか、取締役が何を考えてやっているのかって、みなさんすごく興味があると思うんです。インサイダー情報ではなく、企業として向かっている方向、長期の方向を感じる上ではすごく貴重だと思うんですね。

私たちのような投資家は、よく社外取締役の方にインタビューをするんですが、それが統合報告書でわかるのって、一般投資家の方、個人投資家の方にとってもすごくフェアな感じがしますね。

─ たとえば取締役会のアジェンダを統合報告書に載せるような企業さんもいらっしゃいますよね。おっしゃられたように、どんなことを議論してどんなことを長期的に考えているのか、というところは可能な限りコンテンツとして作っていきたいなと思いました。

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後編に続く

(後編では、統合報告書2020についての感想やアドバイスなど、長期投資家の目線からのお話をお届けします。どうぞお楽しみに!)

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