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社外取締役 石川 善樹氏インタビュー ~セプテーニグループが目指すべき統合報告書とは~【後編】


こんにちは。セプテーニグループnote編集部です。

セプテーニグループでは先日、統合報告書2019を発刊しました。そこで今回は、経営企画部次長で統合報告書制作プロジェクト責任者の呉さんから、12月に新しく社外取締役に就任した石川善樹さんに、統合報告書2019についての率直な感想や、石川さんからみたセプテーニグループの魅力についてインタビューしました。

前編では、石川さんの経歴と石川さんが考える「Well-beingな企業」についてお話いただきました。
後編では、いよいよセプテーニグループの統合報告書2019について聞いております。

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石川さんインタビュー-09588


【プロフィール】

■石川 善樹氏 (写真右)
東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念工学など。「人がよく生きるとは何か?」をテーマとして、企業や大学と学際的研究をおこなっている。2019年12月よりセプテーニグループの社外取締役に就任


■セプテーニ・ホールディングス 経営企画部 次長 呉 鼎 (写真左)
2010年セプテーニに新卒入社と同時に子会社に配属。2011年セプテーニ・ホールディングスに転籍。経営企画課で投資・アライアンス、中期経営計画策定等を担当。2017年からIR課も管掌、現在は経営企画部責任者として様々なステークホルダーと関わりながらグループの企業価値向上に向け奮闘する日々。

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「統合報告2019」版を読んでいただきまして、率直にどのように感じましたか。

昨年と比べると格段に進歩しましたよね。より「統合報告書」って感じがします。

僕はこういうものを読む時に、迂闊に読み始めないんですよ。
まず「統合報告書とはなにか?」ってことをじっくり考えます。そうして自分の中で基準を持たないと、読んでも受け身になってしまう。もっと言うと、2020年版を作る場合、自分ならどうするかまで考えます。

話を戻して、統合報告書とはなにかを考えた時に、自分の中で2つ基準を設けました。

まず1つが、「統合報告書は、全ての関係者がその会社について一言でわかる。一目で理解できるもの」だと思いました。つまり、「セプテーニグループという会社がなぜ価値があるか」ということを一言で表現し、1つの図に表されている。
逆を言うと、それができていなかったら、その統合報告書は失敗だと思います。
そういう意味では、2018年版はまだ言葉も図も洗練されていなかったけれど、2019年版はかなり成功していると思います。
この統合報告書の中での一番のポイントは「価値創造モデル」だと思うのですが、一見セプテーニグループっていろいろな事業をやっているように見えますが、「つまりはこういうことをやっているんだよ」、ということが一目でわかる。
プロジェクトメンバーがこの図を制作する過程で、セプテーニの価値を改めて考え、言葉を紡いだのをすごく感じました。

統合報告書_価値創造モデル


そして、もう1つの基準は、統合報告書は「事業」「企業」「産業」を視野に入れて書かれているべきだということです。

2018年版は、「〇〇部署ではこんなことやっています」というような「事業視点」だった。
それに比べ2019年版は、「企業視点」になり、企業としてなにを目指し、何に取り組むのかが書かれていた。
もう一つ重要なのは「産業視点」です。「私たちはこういう風に新しい産業を作ろうとしているんです。」あるいは、「既存産業の構造改革をしようとしているんです。」ということです。

産業視点を書くことで、「これだけ可能性の大きい市場なのだから、そこでシェアを獲得したら儲かるでしょ」ということを示すことができます。
統合報告書は将来を示すものなので、産業視点まで入っていると素晴らしいですよね。そういう観点からいうと、2019年版ではまだちょっと弱いかなと思います。「人と産業をエンパワーする」ってどういうことかということが具体的には書かれていない。

石川さんインタビュー-09387

なるほど。確かにそうですね!
他には何かありますか?

具体的な改善ポイントとして3つあると思っています。

1つ目は、デジタルマーケティング事業の部分ですが、なぜこの事業が今後儲かるかというと、日本の産業がまだ10%くらいしかDXできていないからです。「これが50%くらいになるとめちゃくちゃ儲かります」って言えると思います。日本産業が全体的にデジタルシフトする上で、カギとなるレバーが何で、セプテーニグループがそれを引きに狙って行き、産業イノベーションを起こすんだと、それくらいのビッグピクチャーを描いた方がいい。そうすると、事業と企業と産業が一気につながってきます。


2つ目は、メディアプラットフォーム事業の部分です。このセグメントは新領域の事業なので、普通に事業紹介してしまうと収益面について関心が集まってしまう。
でもそうではなくて、メディアプラットフォーム事業というのは、〇〇産業の構造を変えようとしているんです。または、新しい産業を作り出そうとしているんです。ということをもっと打ち出すべきだと思います。

あと、GANMA!のことでいうと、コンテンツプラットフォームという視点でいうと、同様のマンガサービスや音楽・映像サービスなどが比較対象になってくるけれど、そうではなくて「物語ビジネスを展開しているんだ」という視点で、「物語の力で世界を元気に」と考えると、また違ったピボットが起きるかもしれないと思っています。

3点目は、企業のことです。セプテーニグループの核はやっぱり人ですよね。本当に素晴らしい人が集まっている。
そして掲げているのが「アントレプレナーシップで世界を元気に」じゃないですか。そのわりにですね、連結財務・非財務ハイライトのグラフが一般的すぎる!(笑)
もっと“当社にはこんな素晴らしい人がいるんです”っていうことを表した独自の指標があってもいい!実際に社内ではそういう指標をもって人事施策を展開されているし、そういうものを出した方がセプテーニグループらしいなって思います。あるいは、社員のWell-being度を示す指標でもいいかもしれませんね。

まぁいくつか改善点を述べましたが、全体的に2019年の統合報告書は素晴らしいです!2018年からの1年で何があったんだって思うくらい(笑)

具体的なご指摘ありがとうございます!
最後にお話いただいた「Well-being」の指標ですが、その計測方法はすでにあったりするのですか。

「Well-being」な人(=セルフリーダーシップができる人)かどうかは、この質問をしたらわかるんです。

「いま自分が大事にしているものを手放した時、それでもあなたは何がしたいですか」

回答フォーマットは、「私は〇〇をして、〇〇を実現したい」です。

重要なのは、たとえば自分が大事にしている「仕事」を外すこと。そうでないと、「会社でやっていること=自分のやりたいこと」と勘違いしてしまうので。あと家族とも結びつけてはダメです。例えば「家族を幸せにしたい」とかはダメ。
家族がいようがいまいが、「あなたは何がしたいですか」ってことを問うています。

例えば僕だったら「Well-being研究を推進する。それによって世界平和にちょっとでも貢献できたら」って考えています。これは大学にいようがいまいがやろうと決めていました。
「Well-being」は、「Feeling Good」でも「Feeling Happy」でもなく「自分の本質」なので、それを導き出すのがこの質問なんです。

ちなみに「Well-being」の反対は「Well-doing」で、何かしら目的があって役割を果たすことを言います。
「Well-being」と「Well-doing」のバランスをしっかりとることが、いい人生なんじゃないのっていうのが僕の仮説です。


とても腹落ちしました。考えてみるととても難しい質問ですね。でもおもしろいです。
あとお伺いしたいのが、現在「非財務情報」として出しているものは、今後「財務情報」に移っていく(影響してくる)ということを投資家はじめステークホルダーの方に理解していただきたいのですが、「非財務情報」の打ち出し方でアドバイスがあれば教えてください。

うーん、、結局「非財務情報」は理屈でしかないんですよね。でも正しさでは人は動かない。「正しいことはわかるけれど、結果どうなるんですか」ってなります。非財務情報から財務情報に将来的に移っていくことをどんなにもっともらしく説明しても、人の心は動かないんです。

ではどうすべきか。僕は「つよく、やさしく、おもしろく。」だと思うんですよね。


なるほど。当社のロゴのコンセプトの3要素ですね。

はい。投資家・アナリストの人たちを「つよく、やさしく、おもしろく。」リードしてあげるということです。

「つよく」は、結果。(儲かっているのか)
「やさしく」は、わかりやすさ。(なぜ儲かっているのか)
「おもしろく」は、将来性。(これからさらに儲かります)

この3要素は、リーダーシップのあり方を言語化してると思うんですよ。セプテーニグループにはこういう人多いじゃないですか。

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当社を応援してくれているアナリストの中に、「セプテーニはもっとはじけたほうがいい」とアドバイスくださった方がいました。理屈っぽく説明するのではなく、それこそ“おもしろさ”を入れろと。そうすると、結果(数字)だけを見ている人は一旦離れるかもしれないけど、応援したくなる人は絶対ついてくると。
「つよく、やさしく、おもしろく。」リードするというのは、そういうことかなと今お話を聞いて思いました。

理解してもらおうと思うと説明や数字が多くなる。リードしようとするなら、「つよく、やさしく、おもしろく。」の方がいい。それが「ひねらんかい」ってことだと思います。


先程おっしゃったとおり「つよく、やさしく、おもしろく。」は、セプテーニグループの人や企業文化を表した言葉ですが、石川さんから見て、「これセプテーニグループっぽい」と感じるのはどんな時ですか。

出てくる人の外見がみんなチャラい(笑)

一同笑

あと、セプテーニグループはお祭り文化があり、それがすごくいいと思います。
「祭り」の語源は「壊れた“間(ま)”を“釣り(つり)上げて”もとにもどすって意味もあるらしいんですよ。それをやることによって、人々の日常がまた生まれるっていう。
だから、そうしたイベントの設計・運営が上手いのは、企業が持続的成長を図るうえでとても重要だなと思います。

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最後に統合報告書の2020年版をつくるにあたって、期待していることはありますか。

「やさしさ」は十分満ち溢れているので、「つよく おもしろく」するってことじゃないですかね。
極端ですが、火に入れても燃えない統合報告書って、つよくて、おもしろいですよね(笑)

そして、「つよく、やさしく、おもしろく。」をコンセプトに作った統合報告書はどこに向かうのかというと、「読んだ後ちょっと元気になる」だと僕は思います。ミッションで「世界を元気に」って言ってるし!
これができたら面白いものになるんじゃないですかね。


なるほど。読後感を最初に設定してつくるのもいいかもしれませんね。

この際マンガで作ってはどうでしょうか。
それで統合報告書の二次創作が生まれてコミケで売られたりしたらおもしろいですね(笑)

そこまでいけたらパイオニアですね。
石川さん的には何があると読後ちょっと元気になりますか。

袋とじかな。佐藤さんの(笑)

一同笑

ありがとうございました。

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※本インタビューは、セプテーニグループが在宅勤務に移行する前に行ったものです。

#石川善樹 #セプテーニ・ホールディングス #統合報告書 #Well_being

#アントレプレナーシップ #セルフリーダーシップ