ウェルビーイング:Session1 変化する労働 労働者の健康とウェルビーイングへの示唆
全モジュールの中で最も概念がよくわからないウェルビーイングが始まった。世の中的にも流行りつつある気がするので理解を深めたい。一応テキストもあるが、2010年のものでも古いらしく、テキストと論文を使いながら授業を進めるらしい。
<授業での学び>
<ウェルビーイングとは>
・ウェルビーイングには下記5つの要素があり、下記の要素と個人、組織の関係も研究の対象となる。(所感:レベル感が違うのでは?この手の研究者は重要性を示すために幅を広げる傾向にある気がする。)
-健康(肉体的、心理的)
-仕事
-価値観
-社会、集団
-成長
・WarrのVitamin Modelには、下記12の仕事の特徴が含まれ、これらが幸福に影響すると主張した。
-個人のコントロールの機会
-スキルの活用と獲得の機会
-外発的に設定された目標
-バラエティ
-明瞭な環境
-他社との接点
-報酬
-肉体的安全
-社会的価値
-上司によるサポート
-キャリアの展望
-公平性
<不健康のコスト>
・金銭的コストとしては下記のような調査結果がある。
-労働年齢にある人が不健康であることによるコストは1000億£
-病欠のコストは年間140億£
ー1人あたりの直接的な病気のコストは554£
ー仕事のストレスによるコストは36億£
・その他には以下のようなコストがある。
-生産性の低下
-代替手段を見つける時間
-潜在的なアウトプットのロス
-寿命
<最近の論点>
・労働環境の変化
・生産性、柔軟性、機敏性など、ビジネスで重要視されるものの移り変わり
・仕事の特徴の変化(ダウンサイジング、継続的変化、リストラ、情報過多、など)
・健康的効果(不安、鬱、など)
・ウェルビーイングに関するEUやUKでは法的枠組みが作られてきている。
<労働環境の変化>
・自営業者や契約労働者の増加
・Gig economy(主にインターネット経由で非正規雇用が企業から単発または短期の仕事を請け負う労働環境)
-53%は満足している。
-独立性、柔軟性がメリットとされている。
-低収入、福利公平の少なさ、急な依頼、選択の余地がないこと、などがデメリット。
・起きている時間の半分以上がメディアやコミュニケーションに使われている。
・国によって対応は異なる。
-フランス:法律の変更
-ドイツ:e-mailへのアクセス制限
・これらについては対立的な見方がある。
-Empowerment vs Enslavement
-柔軟性を高める技術 vs 電子的な鎖
(所感)ウェルビーイングについても決定的な定義はないようで、その言葉からしてもわかるように、概念として幅が広そうだが、主な論点はやはり肉体的精神的健康にありそう。経営的な視点では、不健康がコストに繋がる、エンゲージメントに影響がある、と理解するのが良さそう。つまり、ウェルビーイングは目的変数にはならず、コストはエンゲージメントの従属変数と捉えるのが良さそう。
<課題論文1>
CIPD (Chartered Institute of Personnel and Development)による健康とウェルビーイングに関するレポート。ウェルビーイングはエンゲージメントに影響するため、経営者は文化、リーダーシップ、People Managementを通して、ウェルビーイングを達成しなければならない。授業でも出てきた5つの要素はこのレポートが出典。
CIPD (2016): Growing the health and well-being agenda: from first steps to full potential. CIPD Policy Report
<課題論文2>
教科書の第一章。職業健康心理学は、単純には、「職業上の健康に貢献するための応用心理学」と定義でき、健康心理学、労働・組織心理学、社会・環境心理学、医学、経営学などから、社会心理的リスクの高まりを受け生まれた。職業健康心理学を代表する組織は、the European Academy of Occupational Health Psychologyとthe Society for Occupational Health Psychology。
“An introduction to Occupational Health Psychology” Chapter One (pages 1-30) by Leka and Houdmont.
<課題論文3>
ICTの発達により、人々は業務時間外でも仕事をするようになった。これに関する研究をレビューした論文。以下5つのテーマを発見した。
1.社会的規範の組織的コンテクスト(期待や基準)
2.仕事の特徴と業務プロセス
3.個性
4.非業務時間とウェルビーイング
5.エンパワーメント奴隷化のパラドックス
1~4はICTの活用による自主的な労働の概念的なモデルの要素にもなっている。1、2は自主的なICTを利用した仕事と相互に影響を及ぼし、自主的なICTを利用した仕事は4に影響を及ぼす。3は主に自主的なICTを利用した仕事に影響する。
Schlachter, S., McDowall, A., Cropley, M. and Inceoglu, I. (2017). Voluntary Work-Related Technology Use during Non-Work Time: A Narrative Synthesis of Empirical Research and Research Agenda. International Journal of Management Reviews. DOI: 10.1111/ijmr.12165.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?