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リーダーシップとパフォーマンスマネジメント:Week4 関係性としてのリーダーシップ

今回はしばしば耳にするLeader Member Exchangeがテーマ。決定的とまでは言えないが、いくつかのヒントは得られた。

<学び、実務への示唆>

・リーダーシップはリーダー、フォロワー、関係性の3つの視点からのアプローチが有効。
・マトリクス組織などで2名のリーダーを持つ場合、2名のリーダーとのLMXの質が一致しないと職務満足は下がり、一致するほど高くなる。
・LMXにばらつきがあると、パフォーマンスにネガティブな影響が出る(メンバーと平等に良い関係を築くのが良い。
・リーダーの協調性と外向性が高いほど、LMXが高まる。
・リーダーとメンバーが似ているほどLMXが高まる。

<授業の内容>

【Leader Member Exchange (LMX) Theoryとは】

・リーダーシップに関係性からアプローチした理論。
・リーダーとメンバーの2つからなる関係性に着目する。
・他のリーダーシップ理論がリーダーの振る舞いは全てのフォロワーに大して一貫していると考えるのに大して、LMSはリーダーは部下ごとに異なる関係を構築すると考える。
・LMXはリーダーとメンバーのリソース(情報、影響、タスク、裁量、サポートなど)を交換することで構築される。
・LMXの質は低いものから高いものまであり、信頼やインタラクション、サポート、報酬、などに表れる。
・Social Exchange Theoryを土台として築かれた。

【LMXを作るプロセスと測定方法】

・Dieneschらが開発したLMXが築かれるプロセスは以下。

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・Bauerらが開発したLMXの構築プロセスは以下。

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・LMXを測定する方法としては、Graenらによって開発されたLMX-7、Lidenらによって開発されたLMX-MDMがある。(所感:これらは簡単にできそうなので実際に実務で使ってみたい)

【リーダーとフォロワーの特徴とLMX】

・リーダーとフォロワーが似ている方が、LMXは高まりやすい。
・リーダーとフォロワーの価値観が近いほど、LMXは高まる。
・フォロワーがBig Five Traintsにおける協調性、外向性、誠実性が高いほど、LMXが高まり、開放性と神経症的傾向は関係がない。
・リーダーの協調性と外向性が高いほど、LMXが高まる。

【LMXに影響する要因】

・LMXは低くても高くてもストレスは高まる。
・タスクの自立性が高い場合、LMXとパフォーマンスは相関するが、タスクの自律性が低い場合はLMXが高くなってもパフォーマンスは変わらない。
・タスクの自立性が高い場合、LMXと職務満足は相関するが、タスクの自律性が低い場合はLMXが高くなっても職務満足は変わらない。
・フォロワーがLMXを重要だと感じる場合、LMXと責任感が相関するが、LMXを重要と考えない場合は、LMXが高くなっても責任感は高まらない。
・フォロワーがLMXを重要だと感じる場合、LMXと心理的エンパワーメントが相関するが、LMXを重要と考えない場合は、LMXが高くなっても心理的エンパワーメントは高まらない。
・LMXと組織市民行動、正義の認識、職務満足、退職意図の低さ、リーダーへの信頼は、東洋的文脈よりも西洋的文脈の方が強い。
・LMXとタスクパフォーマンス、組織コミット、変革リーダーシップの関係は、国の文化からは影響を受けない。

【最近のトピック】

・リーダーとフォロワーがLMXに求めるものは異なり、リーダーはタスクに注目し、フォロワーは社会性に注目する。
・マトリクス組織などで2名のリーダーを持つ場合、2名のリーダーとのLMXの質が一致しないと職務満足は下がり、一致するほど高くなる。
・相対的LMX(グループ内の平均LMXとの差分)とチームメンバーに認識されたLMXの違いは、コミットメントや職務満足にネガティブな影響がある。
・グループ内でLMXに違いがあることは、コミットメントやパフォーマンスに正の相関がある。

<課題論文1>

授業でも取り上げられていたレビュー論文。GraenはDansereauと共にLMXの生みの親でもあり、構築のモデルや測定方法を編み出した人。学びになったのは、リーダーシップを解明するには、リーダー、フォロワー、関係性の3つの視点からのアプローチが有効だということ。もう1つの学びは下記のリーダーシップの作られ方。経験的にわかるので真新しさはないが、アカデミックな研究としてここまでまとめたものは1995年時点ではなかった模様。

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また、LMX理論の構築過程をまとめたことにもこの論文は貢献しているようだが、実務家目線では面白くない。

Graen, G. B., & Uhl-Bien, M. (1995). Relationship-based approach to leadership: Development of leader-member exchange (LMX) theory of leadership over 25 years: Applying a multi-level multi-domain perspective. The Leadership Quarterly, 6(2), 219-247.

<課題論文2>

LMX研究をメタ分析し、定義が不明瞭であること、測定方法の質が低いことなどの課題を批判した今年の論文。組織心理学の研究は他分野でも往々にしてこのパターンに陥っていることが多そう。この論文では言及されていないが、原因は科学の限界にあり、哲学的アプローチが必要だと思う。

Gottfredson, R. K., Wright, S. L., & Heaphy, E. D. (2020). A critique of the Leader-Member Exchange construct: Back to square one. The Leadership Quarterly, 101385.

<課題論文3>

授業でも紹介されていたメタ分析論文。LMXに違い(リーダーとメンバーの関係性にばらつき)があると、グループのパフォーマンスが下がるなど、調和や一体感に悪影響があることを発見。

Yu, A., Matta, F. K., & Cornfield, B. (2018). Is leader–member exchange differentiation beneficial or detrimental for group effectiveness? A meta-analytic investigation and theoretical integration. Academy of Management Journal, 61(3), 1158-1188.

<課題論文4>

これも授業で取り上げられていたLMXについてメタ分析した論文。リーダーの行動と認識、フォロワーの特性、対人関係の特性、文脈変数がLMXの先行要因の有意なグループである一方で、リーダーの変数がLMXの質の変動を最もよく説明していることが示された。また、モデレータ分析の結果、特定の LMX スケール、参加者の国、および調査された職場環境は、メタアナリシスにおける関係に意味のある影響を与えなかったことが明らかになった。とAbstructには書いてあったが、ほとんどの項目が有意だったので、本当に正しくメタ分析できているのか疑問。また、モデレータ分析で国などについて言及している箇所が見当たらず、よくわからなかった。

Dulebohn, J. H., Bommer, W. H., Liden, R. C., Brouer, R. L., & Ferris, G. R. (2012). A meta-analysis of antecedents and consequences of leader-member exchange: Integrating the past with an eye toward the future. Journal of Management, 38(6), 1715-1759.


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