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採用における評価と選定:Week3 選定の方法

溜め込んでしまった…。

<まとめ>

・スクリーニングや面接、テストの手法は色々開発されており、組み合わせて使うのが良い。
・面接は、精度の良い採用手法と考えるより、お互いを理解する社会的なプロセスと捉えるのが良さそう。

<授業の内容>

【選定方法:スクリーニング】

・CV
・応募フォーム
 -コンピテンシーベースの応募フォームもある
  ・STARテクニック:下記について質問する
   -Situation:どんな状況にいるか?
   -Task:どんなタスクをやっているか?
   -Action:何をしたか?何故したか?
   -Result:Actionの結果は何だったか?
 -デザインで考慮すべきこと
  ・質問
   -初期判断に必要な仕事に関する質問のみ聞く
   -個人的な情報を得る質問や差別的な質問はしない
  ・内容
   -Job Levelが低いほど短く簡単にする
   -Job Analysisが役に立つ
 -経歴
  ・候補者のバックグラウンドについて評価可能
  ・持つ人と持たない人で不公平な差別に繋がる可能性がある
  ・項目としては、学歴など証明できるもの、経験した職種の数など時系列的なもの、実際の振る舞い、記憶、労働時間など事実に基づいたもの、特定のもの、反応、外部の出来事、がある。
・レファレンス
 -UK、アイルランド、ベルギーなどいくつかの国では広く使われている
 -予測妥当性が低い、ネガティブな評価が得られない、などの問題がある
 -意思決定プロセスではあまり使われず、オファーの前の最終チェックで使われる
 -UKでは裁判になることもある。

【選定方法:選定】

・構造化された面接
 -全ての候補者に同じ質問をし、回答を採点する
 -面接官のトレーニングを行う
・構造化されれない面接
 -柔軟に行われ、候補者は慎重に回答する
 -仕事や上司、組織について学ぶ機会でもある
 -面接官が候補者を知ることもできる
・構造化された面接における状況面接と行動面接
 -状況面接:未来指向の質問で仮説を答えてもらう
  ・仕事に関する知識や認知能力を見る
 -行動面接:過去実際に何をしたか質問する
  ・蓄積された仕事の経験や個性を見る
 -両方使うことが望ましい
・状況判断テスト
 -助教面接と似ているが、紙、音声、映像、などで提示され、能力、個性など多面的に測定を行う
 -認知能力テストに比べて性別や人種への影響が少ない
 -バルクで実施可能(オンラインも可)
 -組織によって正解が異なるため、練習の意味がない
 -ベストプラクティスの知識を測定することはできるが、将来のパフォーマンスを予測することは出来ない
 -回答の選択肢が有限であるため、候補者は自分の意見に合うものがなければ近いものを選ぶしかない。これが起こる場合有効性に影響がある。
 -専門家の間でもベストや正解についての見解の相違がある
・ワークサンプルテスト
 -やり方は複数ある
  ・実際にタスクを行う
  ・状況判断的意思決定を行う
  ・仕事に関連する情報を持っているかテストする
  ・グループディスカッションと意志決定をする
 -プロセスと結果の両方を観察し、採点する

【選定方法:検討、信頼性と有効性】

・集められた全ての情報を元に行い、採用における意思決定は複雑
・信頼性:異なる状況でどれだけ一貫した測定ができるか(弓でどれだけ同じところに矢が刺さるか)
 -信頼性を測定するには、エラーを定量化する
 -信頼性のタイプ
  ・同じテストを時間をおいて再度行い、同じ結果が出るか見る
  ・同じような内容、難易度で、同じ結果が出るか見る。練習の効果を防ぐことができる
  ・テストの問題を半分に分け、同じ結果が出るか見る
・妥当性:測定したいものを測定できている度合い(弓でどれだけ中心近くに矢が刺さるか)
 ー採用に限らず心理学では重要
 -妥当性のタイプ
  ・基準関連妥当性
  ・構築妥当性
  ・増分妥当性
  ・内容妥当性
  ・外観妥当性(正しそうに見えるか)
  ・信用妥当性(他社が使っている、など)

【BolanderとSandbergによる研究】

・IT企業における採用の意思決定のミーティングに入り定性的な研究を行った。
・次の2つのアプローチがあると主張した。
 ー心理測定アプローチ:人は測定可能な安定した特性を持つと想定
 ー社会プロセスアプローチ:採用は候補者と蘇軾の心理的契約を結ぶ場と想定
・2つのアプローチの共通点
 ー個人を分析可能な対象とする
 ー個人と仕事、個人と組織の相互作用やフィットに注目する
 ー採用の意思決定を一連のステップとして概念化する
  ・実際どのように意思決定が行われるかはほとんどわかっていない
・SilvermanとJonesは、選定者は面接の早い段階で意思決定し、その後はその意思決定を確認し正当化するために面接を行うことを発見した。
・BolanderとSnadbergはこれに対し、選定者の意思決定を研究することは可能だと主張した。
 ーEthnomethodology:人々が理解するプロセスであり、理解とは個人的なプロセスというより間主観的なプロセスである。
・BolanderとSandbergによる発見:選考は理解の道具である
 ー選考者はミーティング毎に候補者のバージョンを構築する
 ー候補者についての情報を集めたり分析する方法より、使い方と関係付ける方法について語ることの方が意味がある
 ー選定のツールは理解のプロセスを促進する程度という観点で開発され評価されるべきである
 ー権力と政治のゲームについてさらなる研究が必要

<課題論文1>

授業でも取り上げられた論文。選定が実際にどのように行われているかについて、リアルタイムの民俗学的方法論的言説分析(非常に訳しにくいが元の英語はethnomethodological discourse analytical real-time study)、要は実際に採用に入り込んで分析を行った。選定の意思決定は、進行しながら熟慮され、候補者のバージョンを集める、事実としての候補者のバージョンを確立する、決定に到達する、選定を理解の道具として用いる、という4つのプロセスで行われることを発見した。また、選定の意思決定は、初期の合意と初期の非合意によって特徴づけられるということも発見した。

Bolander, P., & Sandberg, J. (2013). How Employee Selection Decisions are Made in Practice. Organization Studies, 34(3), 285–311.

<課題論文2>

産業心理学の学位を持っている人、CIPD(人事と人材開発の発展を目指すイギリスの機関)の資格を持っている人、HRMの学位を持っている人、一般の人が、それぞれ選考の方法についてどう認識しているか調査した論文。産業心理学の学位を持っている人は、有意に研究に基づく認識をしていたが、CIPDの資格を持っている人とHRMの学位を持っている人は一般の人と変わらなかった。

これは、研究がCIPDやHRMではなく、主に産業心理学(Occupational Psychology)や組織心理学(Organisational Psychology)の学者によって行われている、ということが主な要因だと思われる。そして、「もっとみんな研究でわかったことを活用してね」というのがメッセージだと思うが、以下の理由でやや無理があるように感じる。1つは、アカデミックに研究が行われた文脈と、実際に現場で採用をしようという文脈が異なるので、そのまま応用が効かないので。もう1つは、研究はある1つの視点からでしか行われないが、現実にはあらゆる視点からアプローチする必要があり、ここでまた応用の難しさが発生するので。

あと、なんとなくOPの研究者はオタッキーで浮世離れしている人がいる、というのも原因な気がする。CIPDやHRMの方が実務バリバリのイメージ。

Jackson, D. J. R., Dewberry, C., Gallagher, J., & Close, L. (2018). A comparative study of practitioner perceptions of selection methods in the United Kingdom. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 91(1), 33–56.

<課題論文3>

採用における研究についてまとめた論文。職務分析、候補者を引きつける方法、認知的能力、個性、面接、アセスメントセンター、バイオデータ、などについてレビュー。

Robertson, I. T., & Smith, M. (2001). Personnel selection. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 74(4), 441–472.

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