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選択的夫婦別姓。「同姓支持多数」は不都合な真実か?多数決は民主主義か?

今日はダイヤモンドの下の記事を読みました。

この記事の筆者は選択的夫婦別姓のアンケートの取り方に偏りがあり、読み取り方にも特定のバイアスがかかっているという主張しています。一理ある点もありますが、そうでないかなと思うところもあったので、書いていきたいと思います。

1.マスコミの調査より、内閣府の調査が必ずしも優れているとは言えない。

今回の記事を読んで一番気になったところは、同姓支持が多いことが夫婦別姓に不都合って本当かいな、というところですが、アンケートの取り方についての筆者の意見に同意できない部分があったため、そこから書いていきたいと思います。

この作者は『無作為に携帯や固定電話にかけてきて一方的に質問をまくしたてる「電話世論調査」』を強く批判しており、対面式の「個別面接聴取」による情報に信頼をおける調査としています。

しかし、私はこれに対しては、一概に対面調査の方がいいとは言えないと思います。

アンケート調査は基本的には、『調査対象となる集団からランダムにサンプルを抽出する』無作為抽出が重要であると言われています。

電話を使った時点でその時間に電話に出られる人だけにサンプルが限られてしまいます。そして、回答者になるためのハードルが上がるほど、サンプルが一定の集団に限られて行ってしまい無作為な抽出が難しくなってしまいます。

著者が信頼を置いている内閣府の「家族の法制に関する世論調査」は、対面式の「個別面接聴取」が大きなハードルになっている一つの例です。仕事や学業がなく、昼間に時間を取ることができる高齢者層が回答の大半を占めており、70代以上の回答が総数の45%に上ります。詳しくは、下の記事に書いてあります。

電話を掛けられる側は迷惑だとしても無作為に電話をかける方法は、科学的に正しい面もあるように思えます。

今回、筆者の立場としてはアンケート結果を切り取って報道しているマスコミは間違っているという立場なので、筆者自身も出来上がったグラフだけではなく、元資料にあたり、数字を確認したほうがよかったかもしれないと思います。

2. 数が少ないと選択的夫婦別姓には不都合なのか?

記事の筆者によれば、選択的夫婦別姓を導入しても構わないという立場の人でも、実際に導入された場合、変える人はほとんどおらず、そのことは別姓推進にとってマイナスであるため、マスコミは報道しないのだということです。

しかし、別姓を主張する人にとって、自分に選択肢がありさえすれば、自分以外のすべての人が同姓であることは、たいしたことではありません。

もともと、選択的夫婦別姓は困る人が一人もおらず、利益を受ける人が少なくとも一人以上いる『パレート改善』であるといわれています。

コストはどうだ、税金がかかるだろうという意見もあるかと思うのですが、現状、旧姓併用による二重の姓の管理や、現状日本人同士の法律婚すべてに改姓があるため、すでに多くのコストがかかっています。

別姓が認められるようになれば二重に姓を管理する必要がなくなり、別姓を選べば事務手続きも減り、ランニングコスト自体は減りそうです。

また、今後不便でなくなることは考えられないので、夫婦別姓を求める動きを封じ込めようとすればするほど、国会で税金を使った議論を長く続けていくことになるので、早めに決着して認めた方が長い目で見ればお得かと思います。

さらにダメ押しとして、氏は人格権の一部であることが認められており、人権の問題であるため、コストや賛成人数にかかわらず、重要性の高い問題です。

選択的夫婦別姓は誰も困らず、今困っている人が助かり、巨額のコストがかかるわけでもなく、人権問題という重要度の高い問題です。求めている人数がたとえ一人でも解決されるべきと思いますが、実際、筆者が引用しているように、20%の婚姻年齢の男女が別姓を選択するとアンケートに回答しており、比率も十分に高く思えます。

3. ロールズだったらなんていうか

また、『これからの「正義」の話をしよう』の話です。アメリカの哲学者ロールズは、民主主義を考えるときに、人は「無知のベールをかぶるべきだ」と言いました。

無知のベールをかぶった人は自分がどのような人種のどのような社会的地位のどのような経歴を持ったどんな性格の人間なのかが全く分からなくなってしまいます。

その状態で社会制度や法について話し合いをすれば、ロールズは弱者やマイノリティに対して配慮のある社会制度が作られると考えました。

無知のベールを取ったときに、自分が貧しいスラム街の少年だったら、同性愛者だったら、重い病気にかかっていたらと考えるからです。

「人の気持ちになって考えよう」の面白い言いかえだと思います。

無知のベールをかぶったら、自分が結婚しても名前を変えたくない立場の人だったら困るなと思って、自分で選択できるように社会制度を考えないでしょうか。

民主主義は多数決ではなく、少数派にも優しい社会を作ることであるという考え方のほうがが私は好きです。

それに少数派という言い方をしてしまうと過半数に関係ある制度は案外少ないものだと思います。例えば2018年の調査で子育て世帯は全世帯の23%ほどです。また、要介護の人口だって厚労省の調査で658万人、人口の6%に満たない数字です、

しかし、子育て世代への支援だって介護だってどう考えても日本に必要だとわかると思います。全体の何パーセントが求めていようが必要なものは必要なのです。

自分と違う立場の人が存在するということを理解したうえで、尊重することができるような世の中になってほしいです。

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