見出し画像

マイクロファイナンスって何?

●マイクロファイナンスって何?

 マイクロファイナンスは直訳すると「小規模金融」という意味で、貧しい人々に小口の融資や貯蓄などのサービスを提供し、彼ら自身の事業運営に役立て、自立し、貧困から脱出することを目指す金融サービスを指します。近年注目されているマイクロファイナンスの契機となったのは2006年にノーベル平和賞を受賞した、バングラデシュのムハンマド・ユヌス氏が作った「グラミン銀行」です。このグラミン銀行では、貧しい人を対象に無担保で少額の融資を行います。その代わり条件として、借り手は5人1組になり、返済に対する連帯責任を負うことになります。最初に2人が融資を受けた上で、銀行側と約束事を交わしたり、アドバイスを受けたりしながら返済を完了させます。それが出来たら、他のメンバーにも融資がなされ、同じようにメンバーで助け合いながら返済していきます。

●貧困層であれば誰でも融資を受けられるの?

 グラミン銀行の場合では、借主を女性に絞っています。データ上の根拠はないものの、男性はお金が手に入るとお酒や賭け事に使ってしまうリスクが高いと考えられ、女性は生活を守るために同じコミュニティに属する人々と協力し合う可能性が高いという考えに基づいています。そのため、例えば女性5人集まり、共同で最新の農具を購入することでお互いの田畑へ共有することで、従来の生産性を大きく改善することが出来るのです。

画像2

●一般的な銀行融資ではダメなの?

 そもそも貧困層に分類される人々は、将来の備えや計画に対応するための、預金口座や保険サービスといった一般的な金融サービスへのアクセスが難しい現状があります。更に、自営業やファミリービジネスを営む世帯が多い為、毎月安定した収入を見込むことが難しいことも通常の融資を受けにくい背景となっています。

●なぜこのような仕組みが必要になったの?

 世界のスラムの中にはビジネスで成功を収めた人も住んでいます。例えばフィリピンのスラムで5人の娘を持つ母親がいたとして、その娘全員を日本にホステスとして出稼ぎに出して、毎月各人から10万円の仕送りがあったとすると合計50万円の収入になります。この金額はスラムの中ではお金持ちの分類に入り、「ゴッドマザー」と呼ばれることもあります。スラムに住む人々はこのようなゴッドマザーにお金の支援をお願いして、納得を得られればお金を貸してもらえることがあります。
実はゴッドマザーにしても、貧しい人たちを支援することで逆恨みされて泥棒や強盗に遭う危険性も下がり、スラムの中で堂々と暮らすことができます。
 しかし、この構造はゴッドマザーが巨大な権力を握ることに繋がりかねないです。彼女の意見に逆らえば、仕事をすることも、そこで暮らすこともできないという状態が生じることもあります。そのため、このようなゴッドマザーの出現を抑えるためにも正常な形で貧困者に対してお金を貸すことのできる仕組みが必要でした。

画像3

●マイクロファイナンスの現状

 グラミン銀行はバングラデシュで始まり、この仕組みのおかげで多くの人たちが生活を改善させることに成功しました。今では同様の手法がアフリカや南米にも広がりを見せています。
 グラミン銀行をつくったユヌスは資本主義経済に対して、以下のように語っています。「現在の資本主義社会では、『人間は利己的である』という考えが前提になっています。この考えは部分的には正しいのですが、部分的には間違っています。全ての人間は利己的であり、同時に利己的ではないのです。この利己的でない部分が現在、無視されて取り残されているのです。自身が受け取る利益を追求する以外の目的、すなわち『誰かを助けたい』『社会をよくしたい』という虫の気持ちだけでもビジネスは成立するのではないでしょうか」(石井光太著「本当の貧困の話をしよう」84項参照)。
 一見、資本主義経済との相性はあまり良くないマイクロファイナンスですが、今後は『誰かを助けたい』という想いをビジネスの世界に持ち込むことは十分可能と考えることができます。

●最後に

 世界中のどのスラムや貧しい国々の農村にもあまり収入の良いビジネスはありません。それでも、マイクロファイナンスで融資を受けた人たちが今まで以上に利益を上げ、生活上豊かになれば児童労働に従事している子どもたちも学校に行くことができて貧困の連鎖を断ち切ることができるかもしれません。更に、新しいビジネスを生み出せば大きく事態を変えられる契機になるかもしれません。まだまだ新しい仕組みではあるものの、今後の広がりに期待しかありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?