フードロス品を活用したレストランの営業:nukumo共同創業者 山田聡人さん
「皆がお金に縛られず、やりたいことのできる社会を作りたい」という記事でご紹介させて頂いた山田聡人さんは、2019年にTrash Kitchenというフードロス品を活用した飲食店を大分県別府市にメンバー7人(山田さん+学生6人)のみで3ヵ月間限定の営業をされ、これが今までに前例のない取り組みとして多くのメディアに取り上げられ注目を集めました。今回は当時の立ち上げのきっかけから今後の展望までをインタビューさせて頂きました。
● きっかけ
山田さんはニュージーランドに住んでいる時からフードロスについて高い問題意識を持っていました。そして自分が十分にご飯を食べれないときに日本で恵方巻が賞味期限切れで捨てられていることに違和感を覚えたと言います。
そのような中、山田さんが代表を務める一般社団法人nukumoに勤務するインターン生と原宿の飲食店で食事をしているとき、飲みかけのタピオカドリンクが路上に捨てられているのを見て、この現状に対して自分たちに何かできないかとフードロスの話になったそうです。
このような、過去から現在まで続く強い問題意識が新しいアイデアに繋がるきっかけだったと語ります。(当時は「インスタ映え」という単語も流行するほど写真映りが大きなウェイトを占めていた時期で、飲みかけのタピオカドリンクや過剰生産の恵方巻が廃棄される映像がテレビやインターネット上で注目の的になっていました)。
● Trash Kitchen開店
元々フードロスに対して高い問題意識を持っていた山田さんはインターン生と共に自分に何が出来ないかと構想を練り、フードロス品を使ったレストランというアイデアを思いつきました。これがTrash Kitchenの始まりです。
通常レストランでは食材を市場で仕入れて料理として提供しますが、Trash kitchenでは全ての料理がフードロスになるはずだった食材で作られています。
まず開店場所に山田さんは出身大学のある大分県別府市を選びました。そして、シェアリングの考え方に基づき、夜間営業していないカフェの協力を仰いで店舗を使う許可を得て、足りない食器やグラスは近所の飲食店や知人からシェアしてもらい、食材は八百屋や肉屋の余った野菜やお肉を回してもらって使用しました。
このような多くの人からの支援を受けた結果、最終的に2019年10月16日の世界食料デーにTrash Kitchenをオープンしました。実際に構想を練ってから実店舗立ち上げまで要した時間はたったの3か月のみでした。
Trash Kitchenでは本来捨てられるはずだった食材を使っているにも関わらず、普通のレストランと遜色ない「これが本当に廃棄される予定だった食材なの?」と驚かれるような料理を提供していました。
● やってみてどうだったか?
3ヵ月限定でオープンしていたTrash Kitchenは、最終的に本来捨てられるはずだった203kgもの食材を食卓に蘇らせることに成功しました。また、経営面でも結果として最終黒字で終えることができたそうです。これは多くの食材や食器をシェアによって賄ったため初期費用が少なく抑えることができたためだったといいます。
そして、フードロスというキーワードを大分県の多くの人々に知ってもらうことができました。今までフードロス品を使って飲食店を行うという前例のない挑戦であったからこそ、多くの人にインパクトを与えることができたそうです。
しかし、実際に店舗を運営していく中で、これを社会的に大きな規模で継続していくことの難しさも痛感したそうです。
感じた課題としては、
その日にどの食材が届くのか分からないことで固定メニューが作れない
フードロス品が集まらないと料理を提供することができない
こと等、フードロス品を扱うというコンセプトだからこそ生まれた課題がありました。
● 最後に
今後、もし山田さんの方で再びフードロス品を使った飲食店を始める場合には、社会貢献やフードロスを前面に出さない手法で行いたいと語ります。
先ずは来店したお客さんに「おいしい」「楽しい」という感情を持ってもらい、それが実はフードロス品であることを知ってもらった方が面白いと考えているからです。外食をする方々はわざわざフードロス品を食べに来るのではなく、美味しい料理やお店の雰囲気を楽しみに来ているため、その需要を満たす前提がないと飲食店として成り立たないと考えたためです。その需要を需要を満たしながらフードロスという社会問題を解決するために「おいしい」、「楽しい」が先に来るべきだと話していました。
●編集後記
Trash Kitchenの中で私たちがとても面白い取り組みと感じたのは、レストランの中に冷蔵庫を設置することです。冷蔵庫の中にはフードロス品として貰い受けたものの、それでも使い切れない食材を保管しており、お客さんはその中に入っている食材を持って帰って自宅のご飯にしていたそうです。
このことから、Trash Kitchenと自宅の両方で食品ロス削減に繋げることができたことになります。食品ロスを集めてそこで再度食品ロスになってしまっては意味がないです。そのため、最後の最後まで食品ロスをゼロにしようとする試みには大きな意義があったと思います。
現在、コミュニティとしてシェアリングを実現するべくnukumo cityに注力されている山田さんですが、今後も食品ロスをテーマにした面白いアイデアを思いついて実行されるかもしれません。今後の大いなる活躍に期待です!
● Link
Twitter:山田あきと🥝
nukumo HP:https://nukumo.link/
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