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大学生になるまで本を全く読まなかった私が、「ほぼ毎日読書」するようになった理由

こんにちは。洗足公式note学生ライターとして活動することになりました、音楽・音響デザインコース3年の中込夏美(なかごみ なつみ)です。

大学では録音を専攻とし、バンドや楽器、歌などのレコーディング、ミックスについての勉強をしています。1年次は音楽環境創造コースに在籍し、PAを学んでいましたが、録音の楽しさを覚えたことをきっかけに転コースをし、現在のコースに在籍することになりました。

趣味は第一に音楽を聴くこと。その他にも読書をすること、映画を観ることがとても好きです。中でも本や映画は自身の価値観や音楽活動において、大きな影響を与えてくれる大切な存在です。

読書はほとんど毎日行っていて、多いときでは月に3・4冊読んでしまうこともあります。今ではこうして読書好きを語っていますが……、実は大学生になるまで、全く本を読んだことがありませんでした!

これから、なぜ私が大学生になって本を読むようになったのかをお伝えしていきたいと思います。


友人の言葉と、村上春樹との出会い

本を読むようになった理由は大きく分けてふたつあります。ひとつ目は「村上春樹との出会い」です。
 
高校入試以来、活字を読むことに対して抵抗感があり、自分から本を読もうと思ったことは一度もなかった私。性格的にもかなりのめんどくさがり屋で、長い文章を読む気にもならなかった……のが正直なところでした。

しかし、大学生になりさまざまな物事を経験を重ねるうちに、人間関係や将来について悩む機会が急激に増えていきました。特に、対人関係においては、自分でも分からない初めての感情に戸惑ってしまうことも多くて。

自分が本当に望んでいることは何なのか。なぜこんな気持ちになるのか。自分の言葉で言語化できない煩わしさを友人に相談したところ、モヤモヤしていた気持ちを一瞬で払拭するかのように、「心の声を言葉にすること」を私に教えてくれました

物事をさまざまな角度から捉えられるようになったのは「村上春樹の本を読み始めてからだった」と、その友人は言います。当時、村上春樹という名前は知っていたものの、どういった本を執筆しているかも分からない状態でしたが、友人の影響を受けて私も『ノルウェイの森』を読んでみることに。

ページを捲る手が止まらない。最初は半信半疑でしたが、読み進めていくうちにどんどん村上春樹の世界に引き込まれていきました。それが私にとっての大きな出逢いであり、心に残る初めての読書体験だったと言えます。

参考:Amazon

大切な人を失った喪失感や、過去に犯してしまった後悔。村上春樹作品には心に痛みや哀しみを抱えた人物が多く登場します。ですが、村上春樹の言葉には、その痛みにそっと絆創膏を貼ってくれるような、お守りのような力があると感じています。

特に『ノルウェイの森』の中で、愛する人が死んでしまった主人公の言葉が心に残りました。

死は生の対極にあるのではなく、我々の生のうちに潜んでいるのだ。
どのような真理をもってしても愛するものを亡くした哀しみを癒すことはできないのだ。どのような真理も、どのような誠実さも、どのような強さも、どのような優しさも、その哀しみを癒すことはできないのだ。我々はその哀しみを哀しみ抜いて、そこから何かを学びとることしかできないし、そしてその学びとった何かも、次にやってくる予期せぬ哀しみに対しては何の役にも立たないのだ

ノルウェイの森 下(講談社文庫)P.253より引用

私自身もそうです。何かが起きたとき、その哀しみを癒そうと足掻き、悩むことを繰り返してしまいます。しかし、どのようにしてもその哀しみは癒えることはないし、その経験から学んでいくことしかできないと気付かされたのです。

それまでの自分は哀しみを乗り越えようと必死でしたが、哀しみから無理に遠ざかることよりも、その哀しみを自分の中でじっくりと受け入れ、学んでいくことが何よりも大切だと思えるようになりました。
『ノルウェイの森』を読んでからというもの、村上春樹の言葉に諭され、
圧倒され、他の作品も読み漁るようになりました。村上春樹との出会いが、私の人生に大きな影響を与えてくれたのです。

苦しいときは「読書」に救われた

本を読むようになった理由のふたつ目は「苦しいときに助けてくれた存在だから」です。
 
先ほども言いましたが、大学生になってからというもの、辛い出来事が多く起こりました。人を信じることが怖くなったり、身近な人を失う悲しみだったり……。私の性格上、落ち込むことは少なかったのですが、「明日が来ることが苦痛」と感じてしまうほどに落ち込んでしまった時期がありました。

しかし、そんなときに村上春樹の作品と出会い、救われ、読書の楽しさを知っていくうちに、本と向き合う時間が心の安定に繋がっていることに気づいたのです。
文章から情景を思い浮かべたり、人物の顔を想像してみたり。自分のスピードで読み進める中で、さまざまな解釈をしてみたり……。読書には映画や音楽とはまた違った楽しみ方があり、その「自由さ」が心を解きほぐしてくれるんだと感じています。

読書は私にとって、どんなときでも寄り添ってくれる存在です。

裏表紙を読んでみて、あらすじが気になる。以前途中まで読んでいたから、また読んでみる。表紙のビジュアルが気になる。どんなきっかけでもいいです。ぜひ心に触れた本を手に取り、最後まで読みきってみてください。そこにはきっと、大きな出会いが待っているはずです。

洗足の図書館で借りてほしい名作3選

洗足の図書館にはさまざまな本やCD、DVD、楽譜が揃っています。在学生であれば実際に借りることができますので、今回は私が「おすすめ!」と思う本を3冊紹介してみたいと思います。

村上龍:限りなく透明に近いブルー

第75回芥川賞受賞。読み終わった後の衝撃と爽快感。五感を刺激されるような感覚に陥ります。異常な世界に入り込める作品。

吉本ばなな:キッチン

愛する人の死に向き合うこと。痛みを背負い、悲しみに向き合いながらも、日常を通じて生きていかなければならないことが描かれています。読み終わった後には、どこか心が温かくなる作品。

村上春樹:海辺のカフカ

猫と話す能力を持つ人物やその他の不思議な要素を取り入れながら、複数の物語が日本の異なる場所で同時進行するファンタジックな作品。人間の繊細な心模様を感じ取ることができます。

本、読んでみよう

今の時代は昔と比べて、便利になったものは増えましたが、生きやすい世の中ではないと感じます。さまざまなものの手間が省かれ、時代に順応しないものは廃れていく社会。物事の本質を考える間もなく、猛スピードで新しいものが増え続ける世界に違和感を感じます。

また私達は生まれてからインターネットが身近に存在し、スマホひとつで喜んだり、悲しくなったり……。そういったものに疲れ、苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。

そんなとき、そっと画面を閉じて小説の世界に入り込んでみると、そこにはきっと大きな出会いが待ち受けているはずです。人が紡いできた言葉には限りなく救いがある、と私は思っています。

学生のうちにさまざまな本に触れておくことは、今後の人生において絶対に何かの役に立つはず。この記事を読んで、少しでも本を読んでみたい!と思う方がひとりでも増えたら嬉しいです。

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Text by 中込 夏美(音楽・音響デザインコース3年)