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自転車にまつわる話(3) 弟子
私の自転車に関するたわいもない話を、
ただただ書いていくシリーズです。
【登場人物】
私 ・・・30歳頃、賃貸アパート在住
近所の少年 ・・・近所の戸建てに住む少年。
私との面識はない。
◆クロスバイクを洗車する
![](https://assets.st-note.com/img/1688911964307-4abHsExOu4.png?width=1200)
スポーツサイクルに馴染みのない人には
「えっ?マジ?」
という感じかも知れませんが
多くのサイクリストは
メンテナンスの一環として、
自転車の洗車をします。
ええ普通に。
愛車の見た目を綺麗に保つ
というような意味合いもありますが、
洗車しながら、
・各パーツにキズや不具合は無いか、とか、
・消耗品や各パーツに劣化は無いか、とか、
普段は気づかないような所に目が届く、
立派なメンテナンス機会なのでございます。
季節は忘れましたが、
その日はとても天気の良い休みの日でした。
クロスバイクを購入し、
一応、スポーツサイクルオーナーの端くれ
となった私は、
「たまには洗車するか」
と、
バケツに水をたっぷり汲み、
洗車時に必要なセットをカゴに入れて、
駐輪場的なところまで降りていきました。
![](https://assets.st-note.com/img/1688912757895-YHOiYaYH9m.png)
戸建ての方であれば、
自宅屋外の水道ホースから、
ジャブジャブと水を流せるのでしょうけれど、
当時の私は賃貸アパート暮らしであったため、
こうして、
バケツに汲んだ水と、スポンジ、
台所用中性洗剤を使って、
チマチマと洗車していたのでした。
◆近所に住む少年が帰宅
私の住んでいたアパートは住宅街にあり、
隣近所は、同じようなアパートであったり、
一軒家であったりが、混在している地域でした。
長年住み続けているわけでもない、
賃貸アパート住まいとあって、
さすがに、戸建てのご近所さんとは
まったく面識はありませんでした。
その日、私がスポンジを泡泡にして、
「フンフーーン♪」
と
クロスバイクを洗車していると、
斜め前の戸建てに住む小学生(低学年くらい)
と思われる少年が、
自転車に乗って帰宅しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1688912794794-xpL8dStWLN.png?width=1200)
「ただいまー!」
外にまで聞こえる元気な声でした。
「そうじゃそうじゃ。
チビッコはそのくらい元気でないとの。」
と、
好々爺よろしく、
微笑ましく思いながら洗車を続け、
洗い流す水が足りなくなったので、
一度、部屋までバケツに水を汲みに戻ったのでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1688912813762-dChhiyQw4M.png?width=1200)
◆師匠これで良いですか?
バケツに水を汲みつつ、
部屋に戻ったついでに、ほんの少しの間、
チョロチョロっと何かして、
また自転車のところにもどると、
そこには驚きのの光景が。
![](https://assets.st-note.com/img/1688912714820-tEIgzsnWXd.png?width=1200)
しかも、
バケツにスポンジ。
私と全く同じスタイルで洗車を開始していたのだった。
近所の兄ちゃ・・・
いやオッサンから
少年は学んだのだ。
愛車(自転車)は洗車してあげるものなのだと!
少年は学んだのだ。
バケツとスポンジがあれば、
愛車を洗車してあげられるということを!
その行動力というのは、
持って生まれた気質なのか。
なかなかどうして、やるじゃないか少年。
![](https://assets.st-note.com/img/1688913418237-8zSXiYSzHG.png)
師匠!
こういうことですね!?
こういうことですね!?
![](https://assets.st-note.com/img/1688912828137-bbDAlQ8QJm.png)
技は教わるもんじゃねぇ。
盗むもんだ。
四の五の言わず、手を動かさねぇか。
そ〜うだ。
そ〜の手つきだ。
見てみろ。
愛車もいい顔になってらぁ。
と、
私のしょーもない三文芝居は置いておくとして、
ボカァ、驚いちゃったね。
ついさっきですぜ?
少年が帰ってきたのは。
そんで、私が自転車を洗っているのを見て、
すぐに行動にうつしてみるところが、
純真無垢な少年らしく、実に可愛らしい。
そして、
自分の宝物を大切にしようとする
その心意気や良し。
非常に好感が持てる。
![](https://assets.st-note.com/img/1688912735433-AQ9L46cdqJ.png?width=1200)
私は、
洗車してるの偉いねぇ
とねぎらいつつ
洗剤は台所の洗剤で良いよ。
お母さんに言ってもらっておいで。
(若しくは、この洗剤使うかい?)
と、
よっぽど声をかけようと思ったが、
今のご時世。
近所の得体の知れないお兄さ、、、
オッサンと関わりをもつことを、
親御さんが心配するかも知れないな。。
と勘繰ってしまい、
直接声をかけることはやめておくことにした。
代わりに、
終わりかけていた洗車を、
少しだけやり直し、
少年に見えるように台所用洗剤の容器を置いて、
スポンジを泡泡にして見せたのだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1688912767998-apABsScbKa.png?width=1200)
少年はそれを見て
洗剤が必要だということに気づいたのか、
「お母さ〜ん!」
と声を出しながら、
家の中へと消えていった。
そうじゃ。
それでいいんじゃ。
ワシが教えることはもう何も無い。
サササササ
(-----翻訳-----)
お母さんが登場して、
「うちの息子に変なことを教えないで下さい」
なんて言われたら困るから
今のうちにバックれよう、、、
クロスバイクの泡泡(あわあわ)を流し終えると、
師匠はそそくさと、部屋に戻る(バックれる)のであった。
![](https://assets.st-note.com/img/1688913466740-FmhOMAChDa.png?width=1200)
◆終わりに
先日、
自転車マンガ「かもめ☆チャンス」を読み返していたら、
主人公の更科二郎が群馬CSCで、
渾身のアシストを決めた後、
自転車屋の娘、晶(あきら)ちゃんが、
そっけない態度の更科にこんな事を言っていた。
「最初に手取り足取りロードの乗り方
仕込んでやったの誰だと思ってる?
この業界、最初についた師匠には
一生逆らえない鉄則があるってのによォ」
ほほう。
そんな鉄の掟があったとは。
思い起こせばあの、
クロスバイク洗車の一件から、
かれこれもう10年以上経つ。
あの頃元気一杯だった少年も
今やもう成人し、
立派な青年になっていることだろう。
自転車を大切に思い、
見よう見まねで洗車を覚えた、
かつての少年は、
もしかすると今も自転車が好きで、
ゴリゴリのローディーに成長しているかも知れない。
仮に。
仮にもし、そんなことがあった場合、
大人になった祝意も表しまして、
かつての、あの少年に
こう伝えてやりたいと思うのでございます。
「さあ脚が終わるまでワシを鬼引きするんじゃ。
この業界、最初についた師匠には
一生逆らえない鉄則があるんじゃぞ。」
おしまい
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