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小人を連れて旅に出よう③ウィーン

※今日の旅行記は開脚する人の視点です。私の中で彼はダンディズムに憧れる42歳男性で、私のことを主人と呼んでいます。


ウィーンといえば「音楽の都」やねんけど、うちの主人はどちらかと言えば音楽より食を重視しよる。現地のあいさつの一つや二つ覚えればいいものを、やれやれまったく、「スープはズッペか…」などと出発前にチェックするのは食べ物の名前ばかりである。まあ、なんてったって彼女にとってウィーンは「カフェ文化の都」なのだから無理もない。滞在中に行ったカフェのなかから五つをご紹介しよう。

言い伝えによれば、約340年前に戦いに敗れたトルコ軍が大量のコーヒー豆を置いて行ったことに、ウィーンのカフェ文化は端を発する。カフェは社交場というよりもむしろ「リビングの延長」であり、ウィーンのカフェで時間を過ごすことは、世界無形文化遺産に登録されている。

①Café Sperl

最初に行ったのはチェックインしたばかりのホテルから歩いて行ける1880年創業のCafé Sperl(カフェシュペール)だ。創業当時の内装をとどめたクラシカルで落ち着く空間は確かにリビングと呼ばれるにふさわしい。ビリヤード台が複数設置されていて、その一つにはたくさんの種類の新聞が置かれていた。

しかも、思わず「先輩!」と慕いたくなるようなダンディなおじさま達が給仕してくれた。うちの主人は出発前から目をつけていた「フリタッテンズッペ」を見つけ喜んで注文した。甘くないクレープを細く切ったものを具材にしたコンソメスープだ。

食後にウィーン発祥ウインナーコーヒーをいただき、ご機嫌なご主人であった。

滞在中に再訪した際には、夕方シフトから夜シフトに変わり、ダンディな先輩に代わってミニスカートのチャキチャキなねえちゃんたちが給仕してくれた。これもこれでいい。

このカフェはコーヒーのバリエーションが豊富である。マリアテレジアという名前のリキュール入りの濃いウィンナーコーヒーにはチョコスプレーが掛かっていて、なんというかホッとするおばあちゃん家って感じだ。

② Café im Kunsthistorischen Museum Wien

二つ目は長い名前のカフェだが、何のことはない、美術館の中のカフェという意味だ。ウィーンの美術館といえば美術史美術館である。バベルの塔で有名なブリューゲル(父)の作品が多数所蔵されている。主人が気に入ったのは、雪中の狩人であった。当時20代にしては渋めのチョイスである。

ここのカフェは世界一美しいカフェと言われている。リビング系カフェではない。ほれ、こんな感じだ。

光が差し込む天井も美しい。

しかし、会計が不明瞭であったことが一番の思い出のようだ。そのせいか、これくらいしか私の写真を撮ってくれず、美術館を出たあとにバキバキに折れてビールの空き缶まで置かれている石像の噴水としか撮ってくれなかった。

③Café Diglas

気を取り直して三つ目のカフェだ。
うちのご主人は気に入ったところには、たとえ短い滞在期間でも何度も行くタイプである。普段の生活のように旅をするのだ。先のカフェ同様に、2度行ったのが、シュテファン大聖堂近くのCafé Diglas(カフェディグラス)である。ここはご飯がとても美味しい。そして盛り付けが美しい。私の開脚が映える写真を撮ってくれた店である。

グラーシュである。刮目せよ。

店員がキビキビしているのに優しい店とジャガイモの付け合わせが美味い店は間違いがない、と主人はよく言う。ここはどちらにも当てはまる誉れ高き店だ。すっかり気をよくした主人は、ウィーンの地ビールOttakringerのRadlerを昼間から飲んでいた。

再訪した時にいただいたのが、仔牛のウィンナーシュニッツェルである。大きさの比較のために置かれたような私とうまそうなジャガイモにも注目しましょう。

お腹いっぱいと言いながら、やっぱり食べたいとあとから注文したのが、素朴な郷土菓子パラチンケンである。

パラチンケンに飛び込む私

ここのカフェで主人が一番気に入ったのは、ボールいっぱいに入った、スパイスの効いた人参とカボチャのポタージュスープであった。私をスープに入れないくらいの理性を主人が持ち合わせていたことに感謝したい。

④ Restaurant Emperor's Pavilion

四つ目はシェーンブルン宮殿内にある世界最古の動物園・シェーンブルン動物園のカフェだ。ほら、象がいる。パンダもいた。

カフェの建物はもとは皇帝一家が楽しむために作られた施設であり、やはり内装が美しい。

この日はとても暑かったので、さっぱりしたものを食べたく思ったご主人はチキンサラダを注文した。そのチキン、写真を一目見て分かる通り、口内の水分を全て持っていかれるものだった。野菜を貪り食う主人であった。

⑤Demel

最後は日本でもおなじみのDemelだ。ウィーンで本場のザッハトルテを食べたい。ベレー帽を買ったお店の素敵なマダムにどこのザッハトルテが美味しいか聞くと、やはりここが一番だと教えてくれた。ショーケースには目移りしそうな数々の美しいケーキが並ぶ。

やはり、ここのザッハトルテは本当に美味しかった。王室御用達だけある。ここのお菓子がすぐに運べるように王宮劇場と地下道で繋がっていだという話も頷ける。

もう一つ頼んだケーキもザッハトルテもあまりに美味しかったので、空港のデメルでも出国ギリギリまで食べてはりましたわ、ご主人。ここだけの話、飽き足らず、もう一つケーキ買って、日本まで持って帰ってはりましたわ。


ウィーンのカフェ、行ってみたくなったでしょう?
ケーキを楽しむカフェ、内装を楽しむカフェ、食事を楽しむカフェ、コーヒーを楽しむカフェ…

「カフェ文化の都」の名にふさわしいウィーン。ゆったりできる良い街です。

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