思いを届ける、弱さをひらく-叶世美奈さんインタビュー【2019年5月期受講生課題記事】
※こちらは「ライティング基礎ワークショップ(2019年5月期)」の受講生が、課題として作成したインタビュー記事です。
障害者支援施設で働いている、叶世美奈(かなせ みな)さん。
KAIGO LEADERSの運営メンバーでもある彼女の活動の歴史、葛藤の記録、感情のかけらがnoteに綴られている。それを読んで私は、生きることや自分を表現することへの勇気をもらった気がした。
文章に「等身大で生きる」、という覚悟が現れているのだ。叶世さんにとっての「書くこと」に迫ったら、生き方の芯にも触れられるのではないか、そんなワクワクした気持ちで、お話を聞いた。
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—叶世さんが書いたnoteや記事を読ませていただきました。書くことや、発信することは昔からお好きだったんですか?
小学生の頃から日記のようなものは書いていました。誰に見せるでもなく、自分のことをひたすら書くことが大好きで。それを今もずっと続けています。でも、noteを始める前はFacebookもTwitterも使ったことがありませんでした。
—そうなんですね。noteは何がきっかけで始めたんですか?
2年前くらいに参加した「KAIGO MY PROJECT」がきっかけです。このプログラムでは、参加者ひとりひとりが介護の課題をどう解決するかを考えて、何かひとつアクションを起こします。施設見学や職場改善を行ったり、インタビューをしたり、アクションの仕方は人それぞれで。私は最初の一歩で「発信」みたいなことがしたくて、noteを始めました。
発信することでまずアプローチしたかった層は、障がい者福祉にマイナスなイメージを持っている、または全く興味が無い人たち。もうひとつは、一度福祉職に就いたけれど何かしらの理由で辞めてしまった人たちでした。
—叶世さんのnoteから、楽しみながら障がい者福祉の現場で働いている姿が伺えました。かなせさんが心から思い、考えていることが伝わってくるので、すごく胸に響いて。自分が思ったことを、ありのままに書くのは怖くないですか?
やっぱり書くことへの怖さはあるかもしれません。自分が発信した内容ことに対して「それって、きれいごとだよね。」と言われ、否定的な言葉を受けたことがあって。どうやったら伝わるんだろう、私のこの思いはズレていたり間違っていたりするのかな、と悩みましたね。これがきっかけでnoteを毎日投稿するのをやめてしまいました。
でも、私にネガティブな言葉を投げていた人たちの中で、今はすごく応援してくれる方もいるんです。私が書いたものに対して「良い文章でした」と感想を送ってくれたり、KAIGO LEADERSの活動をサポートしてくれたり。この方は介護の現場で働いていて、まさに私が言葉を届けたかった層の人。自分が発信する意味はあるのだと思えましたね。
—届けたかった人に、言葉が届くのはとても嬉しいですよね。例えば、どんなときに言葉が生まれ、書きたいと思うんですか?
好きなイベントに参加した後や、KAIGO LEADERSとして自分が運営に関わったイベントの前後が多いですね。もっと良い支援がしたい!というワクワクや、現場職でいられることの嬉しさを感じたときに文字にしたくなります。職場でもらったひとことを受けて深く考えたときに、「もっと頑張ろう」と思いながら書いたりもしますね。
あとは、すごく共感する記事を読んだとき。その感想を書きながら、「昔の私はこうだったなぁ」と思い出して、ちょっと辛いような哀しいような気持ちになることも多いです。
—noteでそういったマイナスな気持ちを公開しているところが、素敵だなと思いました。それは自然とできたんですか?
「弱さの開示」、この言葉を私が大好きなsoarというNPO法人が活動の中でよく用いているので、意識していますね。これは福祉の勉強をしているときから大好きな「べてるの家」というコミュニティの支援観にも繋がるんです。支援や仕事の前に、私たち自身の生活でも大切な考えだと思うので、自分も体現したいなぁと頑張っています。
—そんな叶世さんの紡ぐ世界感に、もっと触れたいです。これから書いていきたいトピックはありますか?
本当は、職場で毎日会っている利用者さんとの出来事を、もっとnoteに載せていきたいですね。個人情報の扱いなど、難しいところがたくさんあって書けていないのですが…。今、noteでは「発信すること」をあまり意識していないかもしれません。自分が感じたことをしっかり整理できるような場にしたいと思っています。
その一方で、KAIGO LEADERSの活動報告はとにかく伝わるように書くことを心掛けて、もっと書いていきたいですね。
叶世さんにインタビューする前、私は自分の輪郭が上手く描けずにもがいていた。
初対面の彼女に対して私は、
「最近、自己紹介が上手くできなくて困っています。」
と弱音を吐いた。
「それは、いいことが聞けました!」
そう言って叶世さんがやわらかく笑ってくれたことが、今でもじんわり心をあたたかくする。
話す人を優しく包む叶世さんの言葉。
読んだ人の背中を押す、強くて、弱くて、やわらかい言葉。
ぜひあなたにも、触れてほしい。
*叶世美奈さん note/ twitter
https://soar-world.com/2018/05/09/minakanase/
(インタビュー・文/鹿島 早織)
(写真/virginia lackinger on Unsplash)
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