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灰【長編小説#1】

雨が降り始めた。
ぽつぽつと、そしてやがて霧雨になり、どんよりとした空だけが残った。

「虹はかかるのか。」

そんなわけなかった。
雨の後は虹ではなく、晴れること待ち望む俺たちを嘲笑う雨雲だけが残る。

誰かが言った
「虹を見るためには雨に打たれないと」

雨は幸せの前触れではない、不幸の一環でしかないのだ。
そんなギャンブルにハマった廃人の言葉を色鮮やか表現し、希望を持たせるような響きを奏でようと、雨は所詮晴れのお告げを知らせるものでは無いのだ。

俺は曇天の下、こころも雲におおわれ、目的のない歩行を始めた。
「歩行ね、、、はは」
動作だけを示すそれは目的を表さず、ただ機械的なものでしかない。まさに今の俺だ。

、、、いつの日からか俺は無意識に自嘲していた。

「そんなんやってみなきゃわからんて!」
そんな明るい未来を想像して動き一つ一つが鞠が跳ねるような、あのころは何処に行ったのだろうか。

かつでが愛おしい、今が寂しい、そんなものではない。
俺は、歩むことに疲れた。
先の見えない闇にいつ飲み込まれるのか分からない恐怖に自ら奮い立て、裏切られに行く、死ぬだなんて、、、

そんなのはごめんだ。

「この世に救いはない。」
そう教えられた。
身をもって、今生きてる俺が現実の教本だ。

気付けば俺は繁華街に着いていた。

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