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「生きる」ということ

長い文章になるので、覚悟して呼んでほしい。

これは哲学とそんな大層なことを書いたものではない。
いや、ひとつの懺悔にふさわしいのかもしれない。


「付き合ってよ」
「うん、いいよ」

その二言返事だった。
その返事を聞いて俺は舞い上がるわけでも、泣き出すでもそんな激情に走るようなことはしなかった。
しかしそれは青々とした自然を白銀に染め、寂しく、凍える冬の時期に太陽を浴び、寒さを忘れ暖かさに包まれる、
そんなぽかぽかした気持ちだった。

俺は嬉しかった。

「ごめん!今日はバイトあるから待たせるけど、大丈夫そ?」
「だいじょうぶだよおおおおお!!!がんばれえええええええええ」
「いてくるわああああ」
「行ってほしくないけどいてらあああああ」

そんな母音が言葉の後ろに長々と続く会話。
それが日課だった。今も続いてる。
あまりに騒々しく、大半の人は付き合っていけるものではない。
しかし、それは俺の「本当」の姿で、誰にも見せない、恥ずかしいとさえ思う一面だった。

「こんな俺を受け入れてくれる女性なんかいるわけない」

前の交際で得た残酷な烙印だ。

「あなたって、変な人だよね。」
「え?」

その言葉が今でも忘れられない。
俺は女性が求めるような男にはなり得ないし、
あくまでも酒の場だけに求められる「道化師」でしかないのだ。
誰もその仮面の裏で自己嫌悪を陥って、未来を望めず、涙を流す本当の自分というものに気付かない。

いや知られて欲しくない。

そんな自分を見せ、自分のことを聞かれ離れていく。
たとえそれが友人でも俺は耐え難いのだ。

こんな自分を捨てたい。けどこれが俺なんだ。
こんな俺を誰も認めない。けど俺を認めて欲しい。
こんな弱い姿誰かに見られたら。でも抱え込むのはもっと辛い。

この葛藤が俺の中で終わることは無かった。
今の交際に至るまでは。

そんな弱く脆い自分をここまであの人は支えてくれるのだ。
そんな献身的な姿が健気な姿が愛おしいのだ。
「愛してる」
そんな言葉が似合う素晴らしい人なのだ。


しかし、「生きる」ということは様々な出会いがある。

その子はサークルで出会い仲良くなった人だ。
同じ洋楽を聴き、同じ服の趣向があり、同じ会話のペース、
そんなソウルメイトに近いような人がいた。

俺は心が揺らいでた。

彼女とはそこまでの趣向の一致はなく、ただ考え方が一緒で会話も全て楽しく話せる、そんな人。
しかし、その人は俺の好きなものが同じで、楽しいと感じれるものが似通っていた。
そして何より美人で、俺の容姿をよく褒めてくれる。
とても新鮮で嬉しかったのだ。
(もちろん自分の彼女は世界一で可愛いと自負してる)

しかし、そんな人と話し心が気持ちよくなろうと
いつも俺の心は霧が立ち込めていた。
気持ちよさはいつも後味が悪く、吐きそうになる。

ご飯が美味くない。髪型が決まっても何も嬉しくない。
音楽が刺さらない。気分が優れない。

原因は分かっていた。
俺は浮気をしているからだ。
デートはした事ないが、心が揺らぐ時点で俺は罰が下される人間に等しいのだ。
神に跪き、天を仰ぎ、声を枯らし咽び泣きながら懺悔をする。
俺はその罪が赦されるのなら喜んでする。

「大丈夫、あたしがいるから」
その言葉を裏切り、他の女性と肩並べて歩くなんて
俺にはできない。
一時の感情で人を傷つけるなんて誰からも嫌悪される俺に赦されるはずが無い。

その一線を超えたら俺は何になる、、、?
「ヒト」、、、なのだろうか?分からない。

俺はそんなことを繰り返して、夜一人ですすり泣く。

そして俺はその浮つく心を捨て、また彼女を愛せるようになった。
俺の心は彼女の元に無事帰れた。
執着、そんな安っぽいものでは無い。
俺は彼女の「愛」を知り、「誰かを愛する」そんなことを教わり、恋愛の素晴らしさを知った。
俺はそんな彼女が好きなんだ。大好きなんだ。
上手く言葉にはできない、ただ上に書いた気持ちは俺の素直な気持ちだ。
言葉に表せないくらい愛してる。

俺はいつも通りの日常を取り戻し、愛に溢れる日々を送っていた。



最後に、
「生きる」ということは多くの揺らぎに振り回され
その都度流されていく、そんな弱いものなのかもしれない。
しかし、そこで流されず信じれるものを見つけ出す。
それもまた「生きる」ということなのかもしれない。

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