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2019年「第5回展示会ー戦争ト玩具展」は手作り作品や触って遊べる当時の品の複製品も展示、ポスターも3種類!


子どもの落書きの雰囲気で、憧れの兵器と、生き物たちが…

 第5回展示会は、2019年7月30日から8月16日まで、前の年と同じギャラリー82で開催しました。
 戦前の子どもたちにとって、軍隊は身近であり、時にあこがれの存在でもありました。軍人の身内がいたり、日本軍の活躍が伝えられたり。そんな意識を見越してか、軍隊や戦争を題材にしたおもちゃもたくさんありました。この時は、日清戦争から太平洋戦争までの間に作られた玩具や絵本、紙芝居、雑誌の付録などを中心に、当時の長野県内の子どもによる作文や絵画も展示しました。

軍艦の絵や戦闘場面、こいのぼりと戦闘機などが描かれています

 玩具は、子どもたちの関心や大人たちの思惑を映す、その時代の鏡のようなもの。子どもたちを取り巻いていた戦争の時代の雰囲気を感じていただきたいという思いでした。主催は信州戦争資料センターと公益財団法人八十二文化財団で、Twitterのフォロワーさんの増加もあって宣伝を広く伝えられ、長野県内はもちろん、北海道から関東、大阪、広島まで、全国から500人以上の方にご来場いただきました。写真は人のいない時間帯のものです。

まず目につく場所に、少年倶楽部の付録「戦艦三笠」を展示

 男の子たちに向けては、戦争ごっこに使う鉄かぶとや装甲車、軍艦など、女の子向けにも、女性の社会的な立ち位置を教え、慰問や看護、貯蓄といった道で戦争に協力する方法を伝える玩具がありました。戦局の悪化につれ、子どもたちを戦争遂行に誘導するような意図が見える物も登場します。当時の社会が戦争と隣り合わせで、軍隊に身近な人が関わり、将来は徴兵される現実もあっただけに、子どもの日常に戦争があるのは当たり前だったでしょう。

ノベルティーグッズも戦時色。「貯金遊び」が泣かせます

 戦争のない時代なら娯楽の道具にすぎない玩具も、そんな環境下では戦意高揚を担い、子どもたちを戦場に導く役割を果たしたのかもしれません。玩具が娯楽の道具にとどまれる、そんな環境を保っていきたいものです。
 展示品は90点で、代表が手作りした複製品が4点含まれています。そのうちの1点が三笠の復刻模型で、ここから製作が始まりました。現在の様子を撮影するため横須賀にも足を運びました。

5月の連休を潰して完成させた三笠

 また、手に取って実際に遊べる日の丸プロペラ回しや、ノベルティーグッズを複製した軍帽も用意しました。

かぶって記念撮影など、手に取って体感していただく初めての試み

 3つの展示台のうち、一つはまだ日中戦争に入るころまでとみられるころの玩具、一つ挟んで、日中戦争の長期化以降とみられるものを並べてみましたが、次第に色彩がなくなり、材料も紙や土となっていく様子が戦争の影を感じさせます。

ブリキの戦車、木製の装甲車は大物です。アルミ製鉄兜も
戦時下でも防空のゲームや小さくなった戦車、翼賛一家の人形芝居などがありました

 恒例の国策紙芝居でも、子ども向けのものを展示しました。兵隊ごっこや、おもちゃを金属回収に出したり貯蓄に励むといった内容で、言葉で教えるより浸透させるものがあったのでしょう。また、双六もさまざまな種類がありましたが、戦争が進むにつれ、リアルな絵となり、内容も現実に副うようなものになっていくのが印象的でした。

国策紙芝居「ヘイタイゴッコ」
主婦之友の付録支那事変皇軍大勝双六。1939年正月のもの

 特にこの双六は日中戦争中のもので、上がりは日本人の男の子と満州国と中国の女の子を組み合わせ、日本の指導的立場を暗に示しています。
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 一方、会期の最中に、ドキュメンタリー映画「原田要 平和への祈り 元ゼロ戦パイロットの100年」に協力展示を行い、日中戦争から太平洋戦争にかけての空襲や防空に関連する品、軍人精神注入棒、映画に登場する資料などをロビーに展示し、信州戦争資料センター提供の戦時下の国策紙芝居上演も行いました。

金属供出を呼びかける1941年の国策紙芝居上演。劇団員さんは声が通りますね!
海軍航空隊の飛行兵のマフラーも展示しました。

 複数の展示をかけ持つのは大変ですが、それだけ認知も広がってきてくれたことと頑張りました。さて、次はどうしようか、と思っていたころ、新型コロナウイルスの流行となり、2020年、2021年と展示会は見送ることとなりました。

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