第8回展示会で気配りしたところと、準備段階で感じたこと
今年も無事展示会を開くことができました。あまりの仕事上の事態に(準備予定の休暇が6日吹き飛ぶ)、はっきり言って心が折れかかりましたが、馬力を挙げて仕事し、有無を言わさず直前の1日休暇取得が功を奏し、間に合いました。人には限界もございますので。
今回、展示した戦前資料は222点。過去最多に上っています。それだけに、じっくり見ていくと2時間はかかってしまうのが難点といえば難点。QRコードでこちらの過去記事と展示品をリンクするこころみも、自分が直接説明できない分、少しは補助してくれています。
今回、戦争、女性、子供、ビール、をつないだ展示となっています。それらを一つの根源に持っていくと、やっぱり教育勅語に行きつくなと実感しました。教育勅語は、大日本帝国の教育の柱です。その中身は、先祖がやってきたように天皇の治世を助けよ、というもの。よく言われる徳目とやらは、「皇運を扶翼」するために心掛けておくように上げたもの。結局形の上では天皇を頂点とした「忠義孝行」が大日本帝国の柱なんですね。それで「忠孝双六」などを展示してみたわけです。
そして子どものころから軍隊に親しみ、忠孝を叩き込まれた子どもたちが、青年の一歩手前で軍事教練を叩き込まれるのですね。たとえば、青年学校は4年間800時間のうち、400時間が教練なんですよ。教練の指導書には、例えば45センチ幅で歩く練習の必要性が示される。体格に合わせて歩くと、分列行進ができないから、きちんと45センチ幅で歩けるよう、線を引くなどして訓練したのですね。
よく、素人を召集なんかしないという「赤紙」にまつわる嘘が出回りますが、決して素人なんかではなかったし、それは「兵役の義務」を遂行するための教育だったのですね。その無理を通すのが忠孝の精神、絶対の上下関係です。これが軍隊にもあっていたのですね。
そんな流れをパネルだけでなく、展示品でも感じてもらえるようにしました。
こういう感じで教育されていくと、自然に受け入れていくのですね。この絶対上下関係的なものは、今でも脈々と受け継がれているでしょう。ちなみに、奉公袋の裏返してあるほうは、長野県湖南村、現在の諏訪地方にあたる方のものです。
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女性の方では、積極的に戦争に協力することで、自立を図ろうとする側面を見せられればと考えました。女流画家奉公隊など、その典型例かと思います。長谷川町子さんも、そういう思いで協力したのか、生活のためかは分かりませんが、大日本婦人会の会誌に漫画を掲載しております。今回、文章で取り上げることはできませんでしたが、婦人参政権を求めて積極的に活動していた市川房江さんらも、そういう戦後を見据えた思いで戦争協力の道を歩んでいるのです。
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ところで、今回いろいろ調べていて苦労したのが、企業関係です。ビール、ワインといったものの歴史を調べるのに、企業のホームページはある程度役立つのですが、中には、というか、多くは戦時中のことをすっぽり落としています。自分としては、ちゃんとした情報を持っている企業自身が、協力であれ強制であれ、その時代を記録することと発信していくことは、特にネットで多くのことを調べる時代には必要なことだと思います。企業のページではなく、よく研究されている個人の方の発信のほうが参考になることもしばしばです。
レコード会社のレーベル変更とか、英米語駆逐のあおりを大きく受けているわけです。もちろん、国策に迎合した側面もあるでしょう。ビール会社やワイン会社なんかは国策で振り回されているのですから、そういう側面からの発信をしっかりしていただくと、正しい歴史記録の一助になると思うのです。歴史は社会の皆で作っていくものですから。
そういう点でも、歴史は学校だけで学ぶものではなく、日常の中から学べればなお良いと思います。自分が「note」を書き始めたのも、回り道をできるだけ少なくできればいいなと思ったからです。おかげさまで、一週間に出すノートの記事は7本ですが、一週間に読まれる記事は100本を超えます。調べたい時に、そこにある。そんな存在となっていきたいし、企業もそんな思いで、自身も歴史を背負ってきたという考えで、きちんと示して行ってほしいものだと思うのです。
展示会は、18日、日曜日までです。きょうは、親子連れが「ちょっとむずかしかった」「私もちょっとむずかしかった」と話されているのを耳にし、自分も小難しい理屈を並べていないか、もっと分かりやすく発信したい、と感じた次第です。
戦争を全く知らない世代、戦時体制を体験したことのない世代に、戦争の時代を知らない自分がどうやればうまく伝え残していけるか。精進あるのみ、です。それが未来に過ちを犯さない方法の一つであることを確信していますから。
ここまで記事を読んでいただき、感謝します。責任を持って、正しい情報の提供を続けていきます。あなた様からサポートをしていただけますと、さらにこの発信を充実し、出版なども継続できます。よろしくお願いいたします。