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みとりねこ

『みとりねこ』

有川ひろ (著)
発行:講談社

時間は有限、出会いは無限
稀代のストーリーテラーが綴る
7編、7匹の物語

表紙からも、タイトルからもお分かりの通り
猫をテーマにした短編集です。
私自身は猫どころか、動物を飼ったことも
ないのだけれど、SNSで可愛らしい
おねこさま動画や写真を見る以上に
有川さんの文字から、行間から
あふれて洪水のように押し寄せる愛情と
愛くるしさに、ノックアウトされたのでした。
なにこれ、けしからんな。

そして、その可愛らしさや癒しだけでなく
人間と時の流れが違うがゆえに
人間同士よりも早くに訪れる別れの時を
猫目線で、人間目線で紡がれる物語は
『悲しい』よりも『ありがとう』に
あふれているのでした。

猫や動物に限らず
いつかお別れの時がくるのは自然の摂理。
それも、突然くることだってあるわけです。
だからこそ、『今』を大切に。
冒頭に書いた帯のキャッチコピー
『時間は有限。出会いは無限。』
これに尽きるなと思ったのでした。

この小説は7編の物語を収めた短編集。
有川さんのおねこさま小説としても人気の高い
『旅猫レポート』の外伝が2篇。
沖縄を舞台に家族愛をテーマとした小説
『アンマーとぼくら』のスピンオフも1篇収録。
もちろん、こちらの小説を読んでなくても楽しめます。

そして、ここ最近有川さんの切ない感動ものばかり
読んでいましたが、コメディタッチのなかに
ほっこり温かい『シュレーディンガーの猫』
そうそう、このテンポよく笑わせてくれるやつ
読みたかった!待ってました!
漫画家さんと奥さんと家族のお話なんだけど
実在のお話かとおもっちゃった。
読了後に『ツクダケイスケ 漫画家』で
ググったのは私です(笑)

でも、『トムめ』は有川さんと
飼い猫トムちゃんのお話。
というか、LOVEが駄々洩れの自慢話。
どっしり余韻に浸る物語と物語の合間に
これをもってくるなんて憎いね!

リアルと小説のなかの世界があいまいで
別の小説と地続きになっていて
そこを行ったり来たりできる
有川ワールド。

猫好きも
有川ひろ好きも
泣ける小説が好きな人も
クスっと笑いたい人も
癒されたい人も
日常のなにげない優しさに触れたい人も
ぜひともお手に取っていただきたい1冊です。

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