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「未認知の打破」に挑むRICEメディア。社会課題について楽しみながら知ってもらうための工夫とは?

“社会課題をユニークに知る”ことをコンセプトに動画を制作し発信している「RICEメディア」。

2021年12月にYouTubeチャンネルを開設してから、わずか1年でチャンネル登録者数20万人を超える新星メディアだ。

2022年7月には、使い捨てプラスチックを一切使わない生活に密着した「1カ月プラなし生活」の企画が注目を集め、特に若い世代からの関心や応援を集めた。そして今年も、「1カ月プラなし生活」が7月1日よりスタートし、早速話題を呼んでいる。

一般的に興味を持ちづらいと言われる社会課題を扱った動画が、なぜこれほどまでにヒットしているのか?その理由について、RICEメディアを運営するTomoshi Bito株式会社の廣瀬智之さんにお話を伺った。

廣瀬 智之(ひろせ ともゆき)
Tomoshi Bito株式会社 代表取締役社長

1995年生まれ。滋賀県出身。立命館大学卒。学生時代報道写真家を志し、東南アジアやアフリカ、大洋州の国々、約10カ国を取材。発信活動に取り組む中で、情報過多な現代において、社会的な発信が届きづらくなっている現状に課題意識を持ち、Tomoshi Bito株式会社を創業。社会課題に関心を持つインフルエンサーのプラットフォーム「RICE PEOPLE」、動画メディア「RICEメディア」を展開し、SNS発信によって社会課題の未認知を打破する事業に取り組んでいる。

社会課題と世の中の流行をかけ算する

——「1カ月プラなし生活」や「1カ月脱炭素生活」など、社会課題に関するテーマを扱ったユニークなショート動画が、若い世代を中心にさまざまな視聴者に届いているそうですね。なぜこのような動画を制作されているのでしょうか?

RICEメディアは、「社会課題の未認知の打破」をミッションに掲げ、ビジネスに取り組んでいます。社会課題への無関心は、実際に興味がないのではなく、社会課題を認知していない状態が引き起こしているという視点に立ち、社会課題について知らない人たちに、どのように情報を届けていくかを常に考えています。

RICEメディアは、トムこと廣瀬智之さん(右)と、
ジェリーこと藤田一樹さん(左)が立ち上げた

情報の届け方について考え抜いて気づいたのは、情報を「楽しい」「おもしろい」と感じられるカタチで届けることの大切さ。だから社会課題を話題として扱いながらも、ユーモアいっぱいの、思わず見たくなるショート動画を制作することにしました。

——どの動画も、ついつい見てしまうおもしろさがありますよね!RICEメディアが現在のように幅広い層に認知されるきっかけは、何だったのでしょうか?

長崎県対馬市の海岸に流れ着くプラスチックごみの問題について取材した 【衝撃映像】日本で最も海ゴミが漂着する島 という動画配信で、一気に再生数が伸びました。海岸一帯に海ごみがあふれている様子が、視聴者に大きなインパクトを与えたようでした。

この動画を出した翌月の2022年7月より、1カ月間使い捨てプラスチックを使わずに生活をする様子を動画としてお届けする「1カ月プラなし生活」の配信をスタートしましたが、この動画も多くの方に届いたようです。

プラスチックを起点とした環境問題は、社会課題の中でも生活者に比較的身近で、課題に対して何かしらの行動を起こしやすい話題だったようです。その身近さから、 Yahoo!ニュースのトレンドになったり、SNSで話題になったりして一気に認知が広がりました。

——「1カ月プラなし生活」は、本当におもしろいですよね。「プラスチック」というテーマが良かったのですね。

そもそも「プラスチック」をテーマに選んだきっかけは、オーストラリアのNPO団体Plastic Free Foundationが主催する「Plastic Free July (プラスチックフリージュライ)」という取り組みを知ったことです。「使い捨てのプラスチック製品を使わない生活」を呼びかけるこの企画を知り、「1カ月プラなし生活」のアイデアを思いつきました。

プラスチックのように生活に密接したテーマを選んだのには、動画を通して視聴者に「豊かな暮らしの背景や裏側を知ってもらいたい」という理由もありました。

現代の生活者は、スーパーで物を買い、買ったものを使ったり食べたりして、ゴミ箱に入れるまでの過程についてはよく知っていますよね。でも、「買ったものは誰が作っているのか?」「ゴミとして捨てた後どうなっていくのか?」ということについては、あまりよく知らないんですよね。

物を買う前後に起きている事象やプロセスに注目してもらえるように、毎回慎重に動画のテーマを選んでいます。

——社会課題という難しいテーマを、ユニークなカタチで届ける際に意識していることは何ですか?

「社会課題と世の中で流行っているものとをどうかけ合わせるか」ということは、いつも意識しています。たとえ私たちが伝えたいことをたくさん提供しても、多くの人に「見たい!」と思ってもらえなければ意味がありません。

世の中の流行の1つに、人気のYouTuberさんがよく出している、自分たちの体験をレポートする「〇〇やってみた!」という動画があります。このような体験を配信する動画は、若者の間でとても人気があります。実はこの「〇〇やってみた!」系の動画に、社会課題というテーマをかけ合わせたものが「1カ月プラなし生活」なんです。

私はとにかくおもしろい作品が大好きで、TikTokもNetflixもとにかくたくさん見ます。普段からさまざまな作品に親しんでいる私だからこそ、自分自身が「おもしろい!」と思えるものは、絶対皆さんにもおもしろいと思ってもらえるものになると信じて、日々動画の企画を考えています。

視聴者に届けるコツは、メッセージを押し付けないこと

——ヒットしているコンテンツを楽しみながら、日々研究されているのですね。

そうなんです!世の中には今、おもしろいものがあふれています。そのため、実は10分以上の動画ですら「長尺」と言って、見てもらいにくい傾向があるんです。

1つの動画に10分の時間を費やすよりも、その時間を使ってもっといろいろなおもしろいコンテンツに触れてみたい、という考えがあるみたいで。だから私たちは、ショート動画をたくさん制作するようになりました。

ショート動画って、検索しなくても次から次へと動画が画面上に表示されるのを知っていますか?これまでYouTubeなどの動画サイトでおもしろい動画を見つけるためには、検索する手間がかなりかかっていました。でも、ショート動画の場合は、スマートフォンの画面をスワイプするだけで、次々に動画が現れてくるんです。

視聴者は、画面上に次々と表示される動画の中から、おもしろいものだけを選んで見ればよくなった。動画を見る側からしたら、検索する手間がなくて、すごく楽ですよね。視聴者が偶然動画に出会ったときにおもしろいと思ってもらえるよう、動画の冒頭2〜3秒間に工夫を凝らしています。

——廣瀬さんが届けたいことを届けられるようになるために、どんなことを学んでこられたのでしょうか?

私が元々ジャーナリストを志望していたこともあり、取材記事をたくさん書いていた時期がありました。そういった経験から「どんな言葉を使ったらより視聴者に伝わりやすくなるのか?」を常に考えるようになりましたね。

ジャーナリストを志していた頃の廣瀬さん

2019年にこの会社を起業してからも、ビジネスの観点からマーケティングやキャッチコピーについて必死で学びました。タイトルにどのような言葉を使うと良いか、どんな画像が見る人を惹きつけるのか、などを考えるのにこれまで学んだことが生きていると感じています。

——実際に動画を見た視聴者の方から、何か感想は届いていますか?

中高生のような若い世代が、「トムって、頑張ってておもしろいな」とか「社会課題の動画って普段は見ないけど、RICEメディアの動画はおもしろくて見ちゃうんだよね」とSNSで呟いてくれているのを見つけたときは、「未認知の打破」に対して社会的なインパクトを出せたと分かり、うれしかったですね。

実は私たちが配信している動画には、いつも「小さなアクション」を促すような一言が込められています。でも大事なことは、そのアクションを押し付けないこと。

社会課題に対して「絶対にアクションを起こしてね」という伝え方ではなく、「よろしかったら、日頃の生活にこのアクションを取り入れてみてくださいね」というように、視聴者が知った上で行動に移すかどうかを決めてもらえるようにしています。

——RICEメディアの動画を見ると、自分でも実際に行動してみたいという気持ちが湧いてきます。

ありがとうございます。実は動画を見て、実際に行動を起こした人からも、たくさんコメントやメッセージをいただいています。

多く寄せられるのが、「動画で紹介されていたものを買ってみました!」というコメント。この声を聞いたときは、単に「未認知の打破」に貢献できただけでなく、視聴者の行動変容にまで関われたことに、可能性を感じました。

中でもすごく驚いたのは、とある高校生からの「RICEメディアの動画に登場した場所を実際に訪れた」という報告。びっくりしたと同時に、とてもうれしかったです。

世の中には「何かアクションを起こしたい」というエネルギーにあふれた方がたくさんいます。彼らが社会課題について知りさえすれば、どんどん自分で行動できるようになる。僕たちの発信に影響を受けて、気軽に小さなアクションを起こしてくれる人が増えてくれたらうれしいです。

取材・記事:岩田 龍明 | 写真:ご本人提供