働く人を離職から守る「みとり介護サポート」
2023年6月2日大安吉日、リーガロイヤルホテル東京で法人設立会を開催しました。設立は昨年10月でしたが自粛のため、時期を待っての開催となりました。参加企業37名、看護師37名、計74名の方々にご臨席いただきました。
1.開催に至った経緯
2020年のコロナ感染症によって、私たちの生活は一変しました。今もまだ感染は続いていますし、大変な思いをされた方が大勢いらっしゃると思います。ですが一方で、この3年間に多くの人の健康意識を高めるという結果を導きました。
メンタルケア、ヘルスケアの認識が広まりつつありますが、5月で5類に引き下げられたことを機に、これからの時代に見合うヘルスケアの仕組をつくっていきたいと思い『ソーシャルヘルスケアINCLUSION』というテーマにしました。
「ソーシャルヘルスケア」という言葉は聞き慣れないと思いますが、私の意識にふっと降りて来た言葉です。政府はもはや期待できない。だけど介護を担う個人の状況は厳しくなる一方。ならば社会全体で次世代のヘルスケアをつくっていく必要があると思いました。
「INCLUSION」(インクルージョン)は包括・包含・包摂などを意味し、ビジネスにおいてはすべての従業員が尊重され、個々が能力を発揮して活躍できている状態を指します。
インテグレーションがすべてを包括する意味であるのに対し、インクルージョンは個々の異なる属性が受け入れられ、互いに尊重されているという違いがあります。この考え方は、ヘルスケア分野の発展に欠かせない概念だと思います。
今、社会では多分野の統合が始まり、多くの企業が新しい道を模索しています。また、私の周囲の看護師もさまざまな働き方が広がっています。そこで、これからのヘルスケア時代に向けて「看護師×企業」で新たな事業を創造していけるのではと考え、開催に至りました。
2.日本の近未来
日本は2020年に第一次ベビーブーマーが75歳を迎えました。そして2035年には第二次ベビーブーマーが65歳を迎え、約3600万人が高齢者になります。国民の1/3に当たります。ということは、日本はその後20年の間に3600万人が介護や看取りの状況になっていきます。
ですがそれだけ多くの人を病院や施設で看ることは不可能なため、自ずと自宅看取りや孤独に亡くなっていく人が増えます。ということは、3600万人以上の人々が看取りや介護に関わることになり、日本は経験したことのない多死社会の時代を迎えることになります。
この状態は日本だけでなく、多くの先進国の問題でもあります。アメリカ、中国、ドイツ、フランス、イギリスなどもいずれは日本のような状況を迎えることから、日本がこの難局をどのように乗り越えていくか、静かに見守っている状況です。
私たち看護師に何ができるだろう…?!と考えました。私一人でできることなんてたかが知れていますが、インターネットで多くの人がつながれば何かできるかもしれません。わかりませんが、近未来を予測して、すでに動き始めている企業を参考に、私なりのプランを提案しました。
3.働く人を守る理由
今の社会は長く続いている景気の低迷と、厳しい人間関係で、とても働きづらい状況です。そんなときに親の介護や看取りが覆いかぶさって来ると、こう考える人が多いのではと思います。(ああ、もう仕事やめよっかな…)と。ですがこの考え方は非常に危険です。個人的にも企業にとっても取り返しのつかない問題が起こります。
まず個人的な問題は、仕事をやめて親の少ない年金で質素な暮らしをして…という状態は、一時的にはいいかもしれません。ですがいつか必ず親は亡くなります。5年10年介護を続けたその先で待っているのは…
(あれ?わたしお金ない、仕事ない、やりたいこともない、友達もいない、パートナーも…)この状態は自分の存在意義を見失ってしまっている状態で、安易に自死に至ってしまう可能性が高いのです。
8050問題は、80代の親を50代の子供が介護して、結果的に共倒れになることを意味しています。7040問題は、70代の親を40代の子供が介護して、結果的に共倒れになることを意味しています。名前がついているくらい大きな介護問題になっています。
そこに追い打ちをかけるかのように、少子高齢化が進みます。若く健康で優秀な人材の多くは大企業に流れ、中小企業に残るのは病気や介護を抱えた中高年になっていきます。だからこそ今、企業は働く人を病気や介護で離職させない取り組みが必要です。
4.みとり介護サポート
中には、すでに取り組み始めている企業もあります。それは女性の従業員を多く抱える企業です。飲食店、販売店、スーパーなど。「うちは介護でやめられたら困るから」と従業員向けの介護情報サイトを作成しています。
そして当法人に執筆依頼があり、共に活動している看護師の仲間で記事の執筆作業をしています。そこで、当法人ではその先を考えたプランを設立会で提案しました。
今の時代、お料理するときに料理本を買う人は少なくなっています。ほとんどのメニューがインターネットで検索できるためです。介護や看取りも同じように、困ったらすぐに検索できるくらいの状態にすることが理想です。
しかしながら介護はお料理のように手順通りにいくものではありません。よって事前学習する機会や、介護や看取りの経験豊富な看護師が電話で相談にのる仕組を用意します。それでも手に負えない場合は、保険外で看護師がご自宅に訪問します。
こうした仕組を企業と共につくり、働く人を介護離職から守る取り組みを行っていきたいと考えています。私たち看護師だけで出来ればいいのですが、それではあまりにも力不足です。とはいえ政府がこれ以上の予算を投じるのは不可能でしょう。よって従業員を大切に思う企業さんと共に取り組みたいと思っています。
5.元内閣官房よりコメント
当法人の顧問に、元内閣官房で健康医療戦略室を設立した藤本康二さんがいらっしゃいます。経済産業省と厚生労働省で長年従事され、現在は東京医科歯科大学で特任教授をされています。乾杯のご挨拶で心強いコメントをくださいました。
それは、ヘルスケアは医者じゃなく看護師さんだということ。また、これからは保険外の事業を確立していくべきであるということ。企業と看護師が力を合わせて離職予防に取り組むことは、いずれ社会的に意義のある事業になるだろうとお言葉をいただきました。
6.参加企業
参加企業は27社37名でした。病院ではできないことや、私たち看護師には不可能なことを事業にしてくださっている企業が少なくありません。
たとえば、入院したらその日のうちに"入院セット"を届けてくれる事業、入院したらタブレットを配布して、病院にいながら医療情報を検索して学習できる取り組みなど。
他に、企業に看護師を派遣して健康経営を促進する事業、糖尿病予備軍の方々の生活に寄り添いながら生活指導をする企業、病院の清掃を楽に有効にする専門家、空気をきれいにするエネルギー事業の企業、そして医療機器の製作を行う会社など。他に、ヘルスケアに関連しなくても、従業員のヘルスケアに興味のある社長もご臨席いただきました。
7.開催してみて
実はこの日は、大型台風の影響により日本中が家路を急ぐ…という
日でした。私自身もどうなることか心配していましたが、開始前から会場内で名刺交換が激しく行われていて驚きました。そして欠席ゼロ、遅刻ゼロ、飛び入り参加もあり、30分延長までになってしまいました。また、二次会は半数以上の人が参加…というとても有難い会になりました。
企業の事業紹介と看護師の事業紹介がリレー方式で続きました。ですがヘルスケアがコンセプトの会なので、合間に看護師のヨガ瞑想、看護師の演歌歌手による唄、最後は全員でダンスで締めくくるなど、ここかしこに全脳活性化のプログラムを入れました。70代80代のお偉い方々もニコニコしながら(たぶん仕方なく…と思いますが。笑)お付き合いいただきました。
SNS上では数えきれないコメントをいただきました。楽しかったです、いろんな事業を知れてよかった、企業の人がこんな想いを持ってるなんて知らなかった、看護師さんたちの熱い気持ちが伝わってきた、などなど。メッセージを書き残してくれた方々もいらっしゃいました。
現状はまだ人を紹介するなどご縁づくりをしている状態で、なかなか新たな事業誕生まではいきませんが、当法人にはお仕事の依頼をいただいています。おそらく多くのメディアの前でみとり介護のお話ができるかと思います。
8.さいごに
コロナ感染症で日本がこれほど大変な状況になったのは、私たち医療者の責任でもあります。もっと以前から予防や免疫力についての指導がなされていれば、状況は変わっただろうと思います。自分たちの至らないところを省みず、大変さを強調している医療者の記事を見ると情けなくなり、申し訳ない気持ちです。
とはいえ、私たち人類に時代の変化を食い止めることができるはずもなく、これから地球は激動の時代を迎えるでしょう。日本は地震大国、水害大国、超高齢化国として、その先頭を行くと言っても過言ではないかもしれません。3年後どうなっているかわかりませんが、どんな状況であれ、私たちは健康でしあわせな未来を見据えて進みたい所存です。
||★| 親のみとり意見交換会のお知らせ |★||
親のみとり経験者と、みとりをしている人、これからそうなるかもと思う人、そこに看護師が加わって、みんなで意見交換をする会です。
一人きりだと怖いけど、みんなの意見を聞きながら手を取り合って進めば、きっと越えられると思っています。ご参加お待ちしています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?