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生産性デトックス

「指が千切れたときは、千切れた肉片を清潔なガーゼに包んで氷で冷やしながら病院に行くと縫合できるらしい。しかし切断部位からゾンビのウイルスが入った場合はどうしたらいいか。」

「地球上には絶対的に虫の方が多いので、転生したら虫の可能性が高い。ただ土の中の期間が長いセミは嫌だ。ところで俺らはセミで言うとまだ土の中か。何歳から羽化するのか。」

世の中、「生産性」「効率的」「丁寧に」という言葉で溢れている。社会人として仕事をする上では「丁寧かつ効率的に生産していく事」が求められている。
それが元来性に合っている人は良いが、生まれ持った性格が「ガサツで怠惰で不器用」な人は大変だ。
私もそこまで三拍子揃っているとは思わない(思いたくない)が、怠惰で不器用な事は間違いない。そうなると、社会に適合するには多少なりとも背伸びをしなければならない。

だけどその背伸びの大きさや時間を他人軸に委ねて「すみません、もう少し背伸びし方がいいですよね!もっと頑張ります」とやってるといつか心の筋肉が限界を迎えるので、ある程度背伸びしながら自分軸でたまには休んだ方がいい。これに気づくのに社会に出て5年かかった。

「どうやら社会では、例え接客業ではなくても勤務中は無気力でいたらダメらしい。最近気づいた」と興奮気味に教えてくれた友達がいた。

そういう、「自分の考え」と「社会の当たり前」とののズレを、いちいち言語化して噛み砕いていく人とは話が弾む。私も同じタイプだから共感するし、時に私が感じていたズレを見事に言語化していて感心もするからだろう。

そんな友人を含め、気の置けない仲の会合で出た冒頭の会話である。

一夜明けて考えてみても、見事なまでに生産性が無い。この世にゾンビはいないし、我々はセミではないのだ。

でも、常々丁寧な背伸びを強いられている人は、定期的にそういう会話で意味もなく爆笑してみてほしい。脳が地に足をつけて、これまで溜まった生産性をデトックスしているのが分かる。
私も気づかなかったが、日頃のストレス解消には効果てき面らしく、偉いもんで翌日には「ちょっと真面目な話もしてもいいかな」ぐらいの心構えになれる。


都会で背伸びをし過ぎて、田舎に逃げ帰ってきた。
こんな事を言ってるから結婚も恋愛も出来ずに、そのうえ田舎は刺激がないだの、帰ってくるのが早かっただのと言う思考になるのかもしれない。

けど、こんな事を恥ずかしげもなく話ができる友人がいるなら、それがこの田舎にいるメリットなら、帰ってきたのも間違いじゃなかったのかもしれない。

人生いろんな事があるけれど、背伸びしてたまに休んで、その繰り返しで乗り越えていければいいと思う。そんな安心剤を得た、生産性のある会だった。

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