【小説】超能力トーク(目話)
1人の青年がストレスで声が出なくなるが、そこにはまた別の世界があった。
第1章 超能力トーク(目話)不思議な世界
あーどうしよう、何もかも上手くいかない。
洋平は、自分の不甲斐なさと次から次と起こる不幸な出来事に嫌気がさしていた。
そのストレスの影響か、もう1年近くも口がきけなくなっていた。
家族とも話すらできない・・・・・・。
自分は本当にどうなってしまうのだろう?
不安と恐怖が洋平の胸を突き刺していた。
そんなある晩、不思議な夢を見た。
そこは沢山の人がいるが、誰も話しをしていない。
ただ皆、瞼(まぶた)をぱたぱたと動かしていた。いったいこれ
は・・・・・・?洋平は唖然とした。
周りの人を見ると、笑っている人もいれば、怒っている人もいる。
この人達は話もしないでどうやってその感情が湧くのだろうか?
すこしよく観察していると、皆瞼(まぶた)を自由自在に動かしている。
何をやっているのだろうか?洋平は不思議に思った。
ただただ瞼(まぶた)を動かす度に笑ったり、泣いたり、怒ったりている。
えー、この人達瞼(まぶた)で会話しているのーーー?
洋平は気が付いた。この人達は瞼(まぶた)で会話をしている。
嘘ーーー!
こんな世界があるとは・・・・・・。洋平は驚いた。それから洋平は自分も参加したくなった。
まず周囲にいる人の瞼(まぶた)の動きをよく観察してみよう。
右瞼2回、左瞼3回、左右同時1回。
いきなり笑い声が聞こえて来た。
えー、瞼(まぶた)の動作が同じになったときにはじめて声が聞こえた。
この人達は瞼(まぶた)で会話している。信じられない。そんな世界があるのだ。
その晩ずっと洋平は周囲の人の瞼(まぶた)の解析に没頭した。
第2話 超能力トーク(目話)現実と超能力の狭間
眩しいばかりの日差し。
洋平は朝日で目が覚めた。
昨晩はなんと不思議な夢を見たのだろう。
瞼(まぶた)で会話する世界など、初めての経験だった。
人は一生どのくらい瞬(まばた)きするのだろう・・・・・・?
洋平はふとそんな事を考えた。
85歳まで生きたとして、1分間に10回瞬きして、最低8時間は寝たとして10回×60分×16時間×365日×85年は、297,840,000回!
天文学的数字だ・・・。
それに昨晩のような瞼(まぶた)の会話が加わったらどうなるのだろう・・・・・・。
気が遠くなる。リビングに降りると両親と妹が朝食を食べていた。
洋平は相変わらず、家族とは口をきくこともなく、もくもくと朝食を食べる。
洋平はなんか自分が話さないのが当たり前のように思え、家族もそれを病気として容認していた。
洋平は昨夜の不思議な事をふと試してみようと思った。
何気なく妹を見てみると、なにやら俺の方を見て瞼(まぶた)をぱちぱちしている。
ばれないように裏を向き同じ動作をしてみると、
「なんだかお兄ちゃんなさけない。格好いいお兄ちゃんなのにストレスで口がきけなくなるなんて。なんとか治してあげられないものかな?」
という妹の言葉が聞こえてきた。
洋平は驚いた。「えーーー!」
クールでつっけんどんな妹が、結構いいやつだったんだ。
本当は俺の事を心配してくれている。
待て待て・・・・・・。瞼(まぶた)の会話は夢の中の話。
いやいや俺の思い過ごし。俺って超能力がある?
昔TVで人は何かを失うと別の能力が身につくというのを見たことがある。
それって?俺?まさかでしょ?
いやいやいや、普通でいい、普通でいい。
特別な才能などいらない。普通がいい。
洋平は自分の不思議な経験を感じながらも学校に行った。
第3話 超能力トーク(目話)心の葛藤
洋平は、いつものように学校に行った。
しかしいつものように誰とも口をきくことはなかった。
周囲の友達もそれが当たり前と思っていた。
いつものように社会の授業を受けているとき、ふとあの不思議な夢を思い出しまた試してみようという気がしてきた。
先生の瞼(まぶた)を観察ーーー。
右6回、左2回、両方3回、右7回、左5回。
「洋平君はいつになったら、まともに口きけるようになるのだろう?
もう少し一生懸命勉強してくれると助かるのだけど・・・。」
ああああああーーーどうしよう?
先生が考えている事が言葉として聞こえた!!!
友達はどうだろうか?左となりの直樹は?
左瞼7回、右瞼4回、両方2回、右10回、左6回。
「こいつ声でないふりして、いい加減にしろよ!皆お前の事どれだけ心配しているか!」
結構直樹もいいやつだったんだ。
ああああああーーーだめだ、だめだ、だめだ。
瞼(まぶた)の動きですべての人の心がわかっちゃう!どうしよう!!!
怖い!怖い!怖い!こんな世界いやだ!!!
益々自分がいやになってきた。
もうやめよう、こんなこといやだ。人間ではなくなってしまう。
表情や行動で心を察するから「思いやり」や「やさしさ」といった人間らしい気持ちが生まれる。
それがすべてわかってしまうと、人間らしさがなくなってしまう。
もうやめよう。たとえ自分が超能力を持っていようと、口がきけなくても人間らしく生きたい・・・。
洋平は自分のこの超能力を人に使うのをこの日からやめた。
第4話 超能力トーク(目話)動物との会話
洋平は人間らしく生きたいと心に決めた。
たとえ声が出なくても・・・・・・。
自分のこの特殊な能力が役に立つ世界はないだろうか?
そんな事を考えながら自宅の窓から外を見ていると、
ワンちゃんと飼い主がなにやらもめているようだった。
飼い主が無理やりリードを引っ張っているが、ワンちゃんが
いっこうに動こうとしない。どうしたのだろう?
外に出てみることにした。相変わらず飼い主とワンちゃんが
リードの綱引きをしていた。近づいて洋平はふとワンちゃんの目を見た。
右瞼9回、左瞼9回、両方18回・・・・。何度も何度も瞬きをしている。
「ご主人様!今日はお腹がいたくて歩けません。もうこれ以上歩けません。ヒーン、ヒーン、ヒーン。散歩は嬉しいけどこれ以上歩くと、倒れそうです。」というワンちゃんの声が聞こえてきた。
洋平は飼い主にいった。「飼い主さん、ワンちゃんお腹が痛いようですよ。だからもう歩けないって・・・。お医者さんに行った方がいいのでは?」
(えーーー!、久しぶりに声が出た。驚き!!!)
(ふむ、ふむ・・・・、いいことをすると声が出るんだ?)
「あなた、何者?獣医? まさかその若さで獣医のはずがないわね?」「えー、まー、動物が好きで気持ちが良くわかるんです。」
(また声が出た!)
「1度、動物病院に連れていかれてはいかがですか?」
「そうね、全然動かないからそうしようかしら。」
「ワンちゃん、重いでしょ?動物病院まで僕抱いて行ってあげますよ!近くにありましたよね?」
「そう、ありがとう!」
洋平は飼い主と一緒に動物病院に向かうのであった。
(声が出た?声が出た?そんな事をほのかに思いながら・・・)
洋平は誰かの役に立ちたいとずっと思うのであった。
第5話 超能力トーク(目話)動物たちの叫び
ようやくK動物病院についた。
なかに入るとそこら中から動物の鳴き声が聞こえてきた。
ここでまた洋平は悪いくせを出してしまった。
それは病室のベンチで飼い主にだっこされて、腕に包帯を巻かれているワンちゃんだった。
右瞼4回、左瞼9回、両方瞼35回。
(腕が腫れて痛いよー!ご主人様、医者に連れてきてくれるのはありがたいですが、芸ができないとき腕をぶつのはやめて下さい。お願いします。これ以上叩かれると歩けなくなってしまいます。)
えーーー!この飼い主 DV?
ひどい、ひどい、ひどい・・・・・。
あーーー!動物の言葉がみなわかってしまう。どうしようーーー!
(こいつ、ひどいことしやがって!)
「なにあなた私を睨んでいるの?何か?」
「いえ、動物は人間の持ち物ではありません。私物化するのは辞めた方がいいですよ!!!」
「あなたいきなり何をいうの?」
「いえ、すいません。ついワンちゃんの腕がいたそうで・・・。変な人・・・・・・?」
そして、先ほど道端で出会ったおばさんに1言告げてK動物病院を出た。
あーーー!どうしよう動物の言葉まですべてわかる。すべてわかってしまったら、心と体がもたない。
でも洋平の興味はさらに深まるのであった。
自宅への帰り道に熱帯魚を販売しているお店があった。
洋平はふとそこに寄ってみようと思った。
ガラガラ・・・。
引き戸をあけると沢山の熱帯魚が水槽で泳いでいた。
優雅だな・・・。
早速TRY!
あの赤の熱帯魚がいいや。
左右瞼同時1回 瞼同時2回 瞼同時3回・・・
目が回る・・・。
「餌足りねーよ!もっともっと食わしてくれー!」
き、き、聞こえたーーー!
なんて生意気な熱帯魚なんだ・・・。
どうしよう?瞬きするものはすべて言葉が聞こえてくる。
これってやっぱり「超能力?」
その時はっとアイデアが1つ思い浮かんだ。
そうだ、自分は動物と人間の通訳をやろう!そうすればさっきのようなDV受けているようなワンちゃんも救う事ができるかもしれない。これが自分の天職だ。
それから洋平は毎日いろいろな動物を観察する為に、放課後は近くの動物園に入り浸るようになった。
自宅に帰ると、妹が話しかけてきた。
おにいちゃん、最近明るいね?何かいいことあった?
「いや、別に。」
「えええー!お兄ちゃんが話した。1年ぶり。奇跡が起きた!」
動物園は瞬きの勉強するには、絶好の場所だった。
洋平は、来る日も来る日も動物園に通った。
気が付いた時には「目話日記」なるものが10冊もたまっていた。
それはまるで医者のカルテのように詳細に書かれていた。
例えばぞうの場合、鼻を上げながら右瞬き1回、左瞬き3回は「お腹すいた」という感じで。
ある日妹が洋平の部屋で、その目話日記なるものを見てしまった。
えええー!なに?これ?
動物の瞬きの回数とその意味が書いてある。
そして瞬き翻訳一覧表なるものを発見した。
目話日記? おにいちゃん頭おかしくなった?
じゃあ今私がいった言葉を瞬きで表現すると・・・
この一覧から拾えばいいのね、、
右8回、左2回、右7回、両方3回。よし、覚えた。
夕飯の時、お兄ちゃんに試してみよう。
夕飯時、妹がなにやら俺の顔を見ている。
ふむ?
いきなり妹が瞼を動かしだした。
右8回、左2回、右7回、両方3回。
聞こえた!!!
(目話日記? おにいちゃん頭おかしくなった?)
(どうしよう。妹に見られたらしい。そういわれても仕方ない。)
食事中、妹とは目があわせられなくなった。
そして食事が終わると、さっさと部屋に閉じこもってしまった。
(妹に、俺の秘密がばれてしまった。どうしよう・・・?)
洋平は妹だけには自分の気持ちを正直に伝え、理解してもらおうと思うのであった。
第6話 超能力トーク(目話)動物と人間との通訳
妹に目話の件がばれてからは、ある日正直に自分の思いを話した。
妹は兄の「動物と人間の架け橋」という考え方にとても感動した。
そしてこう言った。
「お兄ちゃん、とても素敵。確かに今まで話ができなくて
苦しんできたけど、言葉を失った事により新たな才能が備わった。それを生かそうと考える気持ちが私の兄としてとても誇らしく思う。私、心から応援する!」そう言って、妹はとても嬉しそうに部屋を出た。
こんなに人として嬉しい気持ちになれたのは何年ぶりだろうか?
洋平は妹の一言にとても感謝した。そして同時にこの日から洋平の新たな動物と人間の「通訳新書」作りが始まった。
好きな事なら打ち込めるというのはこういう事をいうのだろうか?洋平は時間を忘れて昼夜「通訳新書」つくりに打ち込んだ。気が付けば、家族とも友人とも普通に話ができるようになっていた。
そして通訳のみならず「心理学」も勉強しだした。当然に人間の心理学もあるが、動物にも心理学がある。犬がうれしい時はしっぽを左右に振るのは、自分の感情を体で表現している表れだ。
そんな猛勉強は時間を忘れさせてくれる。洋平は気が付くと高校を卒業してもう20歳になっていた。
成人式に出て、洋平は心に誓った。かならず「動物・人間通訳家」という職業を作る。と。
そしてある日、国の専門機関を訪問して上記の事を頼んだ。
「は~?貴方頭おかしいですか?精神病院にいった方がいいのでは?動物と人間の会話の通訳だって?少し頭を冷やして出直してきなさい。」・・・・・・。
洋平はがっかりとして肩を落として帰宅するのであった。
やっと自分らしい生き方ができると思ったのに、精神病患者扱い。
結局自分はだめなのだろうか?
そうがっかりしているときに妹が部屋に入ってきた。
「お兄ちゃん、だめだったんだ。大丈夫、新しいものはなんでも時間がかかるよ!根気をもって臨めば、きっといつかはわかってくれる時がくる。それまで頑張って!応援してる!」
洋平はこの時ほど、応援者がいる事のありがたさを痛感したことはなかった。
そんな時だった。TVで地元の山の熊が町中に出現した。と放送していた。洋平はチャンスと思った。そしてすぐに家を出た。
その近辺は厳重に警察に警備がされていた。遠くに熊の姿が見えて、警察が威嚇をしていた。何とかしないと、目話開始!遠くの熊の目を見た。
右瞼21回、左瞼11回、両瞼12回。ふむふむ、、。
聞こえたー!「小熊が町の方に降りていって、行方不明になり探しに降りてきた。人間に危害を加えるつもりはないので、撃たないでほしい。私がいなくなったら小熊は生きていけない。小熊を見つけたら山に返すと約束してくれたら、私もこのまま山に帰る。そして人間には危害を加えない。」洋平は親熊に対して「目話」を開始した。
「わかった。警察を説得するから、僕が君に向かって手を上げたら山に戻ってほしい!」と目話にて熊に合図した。親熊は目話で「わかった」と合図してきた。
その後この事を近くの警察に話した。「僕は動物と目で会話ができます。親熊は小熊を探しに来た。と言っている。もし撃たなければ、僕が手で合図したらこのまま山に帰る」と言っている。
「そして人間には危害は加えないといっている。僕を信じて撃たないでほしい。そして小熊を見つけたら山に返してほしい。」と話すと、「君頭おかしくないか?」と1人の警官が言うともう1人が「本当にそうか確かめてみよう!」1瞬だし、嘘ついている事がすぐわかるよ。そうだね。」
「じゃあすぐやってみなさい」そう警官から言われ、親熊に向かって手を上げて合図した。
すると不思議なことに親熊は森の中に消えていった。
このことは警察を始め、マスコミが放っておかなかった。
連日ニュースは「熊と話せる青年現る!」という報道で持ち切りだった。
そして洋平はマスコミに引っ張りだこだった。
ある日妹が、「お兄ちゃん、やっと夢がかないそうだね!」と目から涙をこぼしていた。
些細なことではあるが、洋平は少し道が開けてとても嬉しかった。
それから数日して国の専門機関を再度訪問して、「動物と人間の通訳業」の認可を申請した。
役所の人は連日のニュースを見ていて、洋平のことは知っており、以下のように言った。「君の言う事が証明された。先日は失礼な事を言って大変に申し訳なかった。人には実に色々な才能があるものだと。君と出会って初めてわかった。それがこの国のひいては世界中の人や動物のお役に立つのであれば、是非認定しましょう!そして世の為、人の為、動物他の為に活躍してほしい。」そう言われた。
洋平は目から涙が止まらなかった。これで動物と人の架け橋になれる。そしていままで報われなかった多くの動物を救う事ができる。
この日から動物・人間通訳業 第1号 青空 洋平の人生が始まった。
こんな事が決まると、親は小さな事務所を自分の為に借りてくれた。
第7話 超能力トーク(目話)動物と人間の通訳業の門出
そしてそれから2週間後。初めての依頼が入った。
それはサーカス団からの依頼だった。トラの猛獣使いが、最近トラがいう事を聞かなくなって困っているというものだった。
サーカス団に訪問して檻の中のトラの前まで行き、早速「目話」をしてみた。
右瞼5回、左瞼10回、両瞼13回。「君はどうしてご主人様の言う事を聞かないんだい?」
するとトラが瞼を動かしだした。右瞼3回、左瞼6回、両瞼18回。「最近ご主人様はショーの事ばかり考えている。以前は僕にとても優しかった。そして誰よりも僕を愛してくれた。そんなご主人様が僕はとても好きだった。でも今は違う。だから言う事を聞きたくない。」なるほど。
洋平はトラの猛獣使いに言った。「このトラ君は、ご主人に愛されたい」と言っています。「最近はショーの事ばかりで、僕の事を以前のように愛してくれないだから言う事も聞きたくない」と言っています。
するとトラの猛獣使いは目にあふれんばかりの涙があふれた。そして「ジョン!ごめん」と言って檻の中に入っていった。このトラの名前はジョンというらしい。ジョンはジャングルではぐれて、怪我をしているところを人に見付けられて保護された。そして懸命に介護したのがこのサーカス団の猛獣使いだった。
その頃は目に入れてもいたくないほどこのジョンをかわいがった。しかし最近はショービジネスに入れ込んで、お金儲けの事ばかりを考えていた。そして猛獣使いはジョンの頭をなでながら「ジョンごめん」と何度も言っていた。ジョンは久しぶりに猛獣使いの顔をぺろぺろとなめていた。
そして洋平に向かって左瞼を6回パタパタと。「ありがとう!」と声が聞こえた。
洋平の最初の仕事は無事終わった。初めて自分が人さまや動物のお役にたてた事で洋平は感無量の思いで、帰宅の途につくのであった。
第8話 超能力トーク(目話)人間・動物通訳業がつないだ保健所のワンちゃんの新しい道
ある日洋平のもとに、また依頼が入った。
その依頼主は保健所の職員だった。そこは捨てられた動物が毎日のように殺処分される。
なんとかそれを洋平の動物通訳業で救えないかというものだった。
洋平は声を大にして「是非やらせて下さい!」言った。
(絶対にこんなことはなくさなければならない。どんな動物も生きる権利がある。動物の才能を開拓して人間に適合すれば、必ず救える。よし頑張ろう!)
まずは洋平は保健所の動物のそれぞれの才能を見出すために、毎日のように保健所に通い、目話をした。
ネコちゃん、ワンちゃん、実に色々の個性がある。これは人間と同じだ。
ある日、あるワンちゃんと会話した。
ワンちゃんA このワンちゃんは、目話をすると、以下の自分の才能を主張した。「僕は洗濯物をたためるよ!」
え!まじか!犬が洗濯物たためる?本当ならすごい!
じゃやってみよう!。
保健所の管理人さんにTシャツを用意してこの檻にいれるようにお願いした。
するとこのワンちゃんが口でそのTシャツをたたんだ。「えええ!嘘だろう!!!」
動物もそれぞれ才能があるんだ、、、。「よし、これをなんとか人間に主張してあげよう」
ある日、保健所に老夫婦は寂しいからとワンちゃんが欲しいと、家で飼うワンちゃんを探しにきた。その日に洋平は保健所に呼ばれていた。
(よしお前が助かる日がきたぞ、今日は人間の老夫婦が来る。そこでお前が洗濯物を口でたためるのを見せるんだ。そうすれば必ずお前を引き取ってくれるはずだ。頑張れよ!)と檻の前で目話をした。
すると彼は「頑張る!」と目話で返してきた。
午後1時、老夫婦が来た。洋平は早速檻の中にTシャツを入れた。
すると檻の中のワンちゃんを口でTシャツをたたみだした。
老夫婦は言葉が出ないくらい驚いた。
「このワンちゃん、洗濯物をたたむことできるの?信じられない。私も主人も手が不自由で、洗濯物をたたむのがとてもつらかったのです。是非このワンちゃんを引き取ります。ありがとう!」
ワンちゃんから洋平に目話。右6回、左11回、両目16回。
「ありがとう、これで僕は人のお役にたてる。本当に本当にありがとう!」
洋平は自分の仕事が、世の中の役に立つことを痛感して、ただただ嬉しかった。
家に帰ると妹が待っていた。
お兄ちゃん、新聞でお兄ちゃんの事で持ちきりだよ。ほら、「殺処分の救世主現る、動物と会話する青年。」
ほら、私お兄ちゃんの妹で本当に良かった。誇りに思うよ。
洋平は部屋に入ると嬉しくて涙が止まらなかった。こんな自分でも世の中のお役にたてるということがとても嬉しかった。
さらなる夢を見て、寝入る洋平だった。
第9話 超能力トーク(目話)鳩の恩返し
洋平はいつものように家でTVを見ていた。
すると途轍もないニュースが飛び込んできた。
洋平が住む地元の山の崖に車が落ちそうになっているというニュースだった。
慌てて洋平は外に出て、地元のその問題の崖まで走った。
現場にたどりつくと、洋平は目が点になった。
乗用車が今にもがけから落ちそうになっている。後部車輪ががけから半分出て宙に浮いている。
そして少しずつがけから下にずれている。中には人がいる。
洋平はあせった。そこはもう多くの人だかりだった。すこしでも車に負荷をかけると崖下に落ちてしまうかもしれない。なんとかしなくては、、、、、
すると洋平の真上の空に1羽の鳩が 飛んでいた。洋平はしきりに目話をした。
右瞼12回、左瞼7回、両瞼28回 、「鳩さん頼む、なんかロープのようなものを持ってきてほしい。今、目の前の車が崖けから落ちそうなんだ。頼む!」
鳩、右瞼9回、左瞼1回、両瞼38回。「わかった!なんとか探してくる。そして鳩は飛びながら車の中をそっと覗いた。「えええ!5年前に羽を痛めて道路に落ちている僕を拾って羽の怪我を直してくれ、自然の中に返してくれたご主人様だ。なんとかしなくては。」鳩は、鳩にしかわからない特殊な鳴き声を懸命にした。すると20羽の鳩が建築現場からロープをくわえて飛んできた。
そしてそこいら中に飛んでいる鳩はその場所に集まって来た。
1羽の鳩が特殊な鳴き声で必死に叫んでいた。
「仲間よ!頼む!5年前に僕を救ってくれたご主人様が危機に瀕してる。頼む集まってくれ!沢山の仲間を呼んでくれ。」
その鳩の叫びは届いた。その現場の空は、10万羽はいようか。空は鳩一面で真っ白だった。
その光景は圧巻だった。20羽の鳩はその口で建築現場から持ち出したロープを持ち、崖から落ちそうな車の後方部にかけた。そしてその後が圧巻だった。
10万羽の鳩が飛びながら、お互いの足をつかんだ。そして1羽の鳩の合図で始まった。
その鳴き声は「SKY HIGH!SKY HIGH!SKY HIGH!」と言っているように聞こえた。
このニュースを聞きつけた地元のTV局、また海外メディアがこの現場に集まっていた。
このニュースは世界中に同時生中継で放映された。
10万羽の日本の鳩ががけから落ちそうな車をロープを使って持ち上げようとしている。
それを指揮しているのは、1羽の鳩と人間・動物通訳家の青空洋平だった。
洋平はしきりに瞼を動かした。右1000回、左2000回、両瞼4000回。10万羽の鳩に届くように目も回りそうなほどの瞬きだった。
洋平は倒れる寸前だった。
1羽の鳩は洋平の瞼の会話を元に10万羽の鳩に特殊な鳴き声を送った。
すると崖から落ちそうな車が徐々に上がりだした。
世界中はこの素晴らしい光景に固唾をのんだ。
そしてTVの前で全世界の人が「頑張れ!頑張れ!頑張れ!もう少し、もう少し、もう少し!」
10万羽の鳩は徐々に車を持ち上げだした。
「ギ―、ギ―、ギ―」「もう少し!もう少し!もう少し!」
30分くらいたったろうか、車は無事崖の上に上がった。
この瞬間、全世界のTVの前の応援した人達から歓声と拍手が上がった。
車の中から1人の男が出てきて、車の近くで特殊な声を出し続けていた1羽の鳩を抱きしめ、目から涙を流した。
「ポッポ、お前が救ってくれたんだね。ありがとう!」
この1羽の鳩は、この落ちそな車の運転手に5年前に道路で傷ついているのを助けられ、自然に返された。今回空を飛んでいて、洋平と目話したあと、5年前に助けられた主人が危機に瀕しているのに気が付き、10万羽の鳩を集めてきた。
ポッポが洋平に瞼で会話をしてきた。以下をご主人様に伝えて下さいと。右瞼3回、左瞼3回、両瞼6回。
「ふむ、ふむ」
「ご主人様に助かって良かったと伝えて下さい!」と
洋平は、鳩に目話をした。右瞼4回、左瞼7回、両瞼12回。
「わかった。そう伝える」と。
鳩のポッポ君がご主人様に「助かってよかったです。」と言っています。
主人は鳩をぎゅっと抱えて目からは大粒の涙が止まらなかった。
このニュースは「鳩の恩返し」として全世界に放映された。
洋平はこの時、初めて自分の存在を感じて、この世に自分が生まれてきたことに心から感謝した。
「ありがとう!」
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