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故障中のランナーにエアロバイクは役立つか? その1

長野マラソンから4週間。いまだ右アキレス腱付着部のリハビリに励む高齢者ランナー山崎です。リハビリの進み具合はカタツムリのごとし。この4週間、ほぼ毎朝毎晩エアロバイクを漕いでいます。そこで今回は故障中のクロストレーニングとしての室内バイクの意味について考えてみます。

故障していてエアロバイクは漕げるか


サイクリングとランニングは有酸素運動の代表格です。両者とも下肢の筋肉を使いますが、一番大きな違いはサイクリングでは着地衝撃がないことでしょう。

カタツムリのように


ランニングによる故障にはいろいろありますが、僕が経験した脛骨内顆の疲労骨折(膝)やアキレス腱付着部炎(踵)では、故障後数日たてば歩行は困らなくなります。でも少し走ろうとすると痛くて数メートルも走れない。よくランニングでは体重の2~3倍の着地衝撃が加わると言われていますが、自分が故障してみると着地衝撃の大きさを実感します。

54歳の時に左膝の脛骨内顆の疲労骨折をした時、エアロバイクを購入しました。整形外科の同僚に2ヶ月、いや3ヶ月はランニングは無理、といわれて愕然。当時はサロマ湖100kをめざしていたので、心肺機能を少しでも維持しようと考えたわけです。膝の疲労骨折にもかかわらず、室内バイクだと1時間でも痛みなくこげました。

それに加えてマラソン練習にはサイクリングがいい、という本が出版(2011年)されてることを知りました。吉岡 利貢さんの「毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる! 月間たった80kmで2時間46分!超効率的トレーニング法」。

初版2011年

これを読むまで、ぼくはマラソンに関して運動生理学やトレーニング理論の観点から考えたことがありませんでした。なんとなく週末に走る4時間ランナーだったのです。故障中で走れないこともあり、線を引いて読んだ覚えがあります。最大酸素摂取量とかランニングエコノミー、などこの本からいろいろ学ばせてもらい、その後、ダニエルズやリディアードといった本を読むきっかけにもなりました。前足部着地、いわゆるフォアフット走法も12年前にはそれほど有名ではなく、いち早くその有効性を知りました。

エアロバイクでランが速くなるのか


ただ、エアロバイクだけ漕いで速くなれたかというと・・・
2ヶ月間エアロバイクをこぎ続け、ランニングに戻ったときは、明らかに遅くなっていました。結局故障が治ったあとはバイクは自然にやめてしまい、ランニングの練習を質量ともに増やしました。月間400kmオーバーです。

その甲斐あって2018年12月、60歳のときにサブスリーを達成できました。が、案の定オーバーユースがたたり61歳で再び走れなくなります。今と同じアキレス腱付着部炎で2019年の7~9月は再びエアロバイクだけ漕ぎました。10月に少し痛みを残すものの復帰しましたが、以前のようなスピードは出せません。2019年11月の復帰後最初の横浜マラソンは3:28:17と30分近く落ちました。

ランニングのクロストレーニングとしてはバイクや水泳、クロスカントリースキーなどが推奨されています。クロストレーニングは使わない筋肉を鍛えることで故障の予防になり、故障中は早期復帰に有用とのこと。しかしランを減らして、クロストレーニング主体でマラソンが速くなったという論文は僕が探した限り見つかりません。

Clinical Trial Eur J Appl Physiol Occup Physiol . 1995;70(4):367-72. doi: 10.1007/BF00865035.
Effects of specific versus cross-training on running performance

上の図は基本となるラン□(control)だけのグループと、8週間クロストレーニングとして水泳を加えたグループ(X Train)、水泳と同じ運動負荷のランを追加したグループ■(Run)の3群を比較した1995年のミルウォーキーの研究です。2マイルのタイムトライアル結果ですが、クロストレーニングはしない(control)よりした(X Train)ほうが速くなっています。が、ランを増やしたグループ(Run)が一番速くなっています(左端の黒棒)。

もちろんトレーニングには個人の相性があると思うので、クロストレーニングを増やすことで故障が減り、マラソンのペースアップにつながる人もいるかもしれません。僕の場合はランができない故障中しかバイクを漕いでいないので、エアロバイク漕ぎが長い目でみてスピードアップに役立つかどうかはわかりません。では現在の僕にとってエアロバイクの効用はなんなのか。
その2に続く。


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